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1 / 知らないうちに典型的な死に方で僕は力を得ていた。

ただ僕は普通に登校していただけである。ただそれにも関わらず、僕は青の横断歩道を渡っているところにトラックに轢かれた。

今思えば、どうしてこのトラックが毎回人を轢きに来るのだろうか。

僕としては運転手は過労で意識を失ったのだと勝手に自己解釈していたが、そんなことは実際もうどうでもいい。

僕にとっては別にあの世界のことで起きたことなど殆ど忘れているぐらいだし。置いてきてしまった妹も、今頃は僕のことなど忘れているに違いない。

大体僕はあのつまらない現実に飽き飽きしてきたのだ。少しぐらい羽目を外してしまってもいいはずだろう。

そう思っていたのは良かったのだが、僕が死後に目を覚ましたときは驚いていた。

目の前に女神が立っていた。どうしようもなく美しい見た目で、そして僕自身もどこかもう戻れない気はしていたし。

というより、前の記憶なんて全て忘れたところで僕は困らないのだから。

学校帰りの途中で僕は死んだ。

どうして死んだのかは分かっている。突然トラックに惹かれるというとてつもなくつまらない理由だった。そんな理由で死んでしまう何て僕としては少し残念過ぎるので、あまりその時のことは話したくはない。トラックの運転手には相応の罰を与えられることを望むしかなかった。

今、僕は女神の前に居る。その女神はアルテミスという、とても偉い神さまらしい。

どれぐらい偉いかはともかく、そんな神さまに言われた内容はこうだった。

「アタリ君はとりあえず、私が指定した世界で旅をすること。それでとりあえず悪い人を倒したり、困っている人を助けるといいでしょう。」

「そんなんでいいんですか?」

「適当そうに見えるけれど、私が出来ることは貴方を導くだけだから。私と契約して、そして大きな力を得た貴方はもう元の世界には戻れない。」

そういうことらしいが、僕としてはトラックに惹かれるという運命を変えて欲しかった。

「貴方が異世界ですることはそう難しいことではないでしょう。何せ、この私、女神アルテミスの力があってこその魔力なのですから。貴方が異世界で迷うことはないでしょう。そう、よほどバカでない限り私の言ったことの役目は果たせるはずです。分かりましたか?」

わかったけれど、あまり感じのいい言動ではないので楽天的にはなれない。

「あの、どうして僕なんでしょうか。別にほかの誰かでもいいと思いますけど。」

「どうしてかしらね。」

「そこは言ってくれないんですね。」

「別にいいでしょう?この私に選ばれたことにもう少し感謝してくれてもいいんじゃないかしら。」

「いやいや。」

何だろう、会話すればするほど感謝ができなくなるぞ。

「とにかく、私の言ったことが守れない場合は天罰を起こします。」

「どのような天罰?」

「それは言わない方が面白いでしょう?」

確かにそうなのかも知れないが、かなり不安が出てくる。

「そんなに異世界が面白いのならいけれど。」

「私と契約した貴方は無敵のはずだろうし。別にいいと思うけれど。何が気にくわないのかしら。」

「いいえ。とりあえず向こうで俺TUEEEしていけばいいんですよね。分かりました。神さまがそこまで言うのなら張り切ってやって来ますよ。向こうで偉そうにしている魔王をやっつければいいんでしょう?」

「言ってくれるわね。じゃぁ、すぐに向こうへ出発しなさい。」

「って、どうやって。」

「無論こうするに決まっているでしょう?」

女神は手元にある謎のボタンを押した。そして、僕が立っている床が突然開いた。穴になった足場から逃げることはできず、僕はそのまま落下してしまう。

「うわぁああああ!!?」

無限とも思える奈落に抗えずそのまま落下していく。

そのまま妙に光り輝く魔法の力に包まれ、僕はまた気絶してしまった。




大空、その綺麗な空気の中を一匹のドラゴンが飛行していた。更にもう一人、ドラゴンの背中には少女が乗っていた。

「今日の配達はこれぐらいで終わりかな。とりあえず戻るのはいいけど。」

騎士の格好をした少女は、そのまま町の方へドラゴンを飛行させる。

彼女が飛んでいるその先、突然何か大きな光が生まれたのを発見する。

「何!?」

その突然の状況に彼女とドラゴンは慌てていた。大きな光の周囲を飛行し、目の前の不思議な光景を確かめる。

「何が起きているの?」

大きな魔法陣が現れると、次にその中から人が落ちて来たのが見えた。

そして大きな光が収まる。そんな光景は今まで一度も見たことはない。

「さっきの、一体。ていうか、いま人が落ちたよね?」

助けないとダメだろうか。今見かけたのは自分しか居ないし、落ちた人は飛ぶ気配もない。

「仕方ない、いくよキュルちゃん!」

ドラゴンを加速させ、その落ちた人の方向へ向かっていった。

まだ間に合う、落下する前に何とか彼女は彼を掴んで抱きとめた。

「ギリギリセーフ。この人、気絶してるのかな。」

起きる気配が無いので、とりあえず連れて帰るしかないのだろうか。

「うーん、大丈夫かな。」

何事もなければいいが、とりあえず急いで家に戻ろうとした。




かなり酷い目に遭った気がする。僕はむしろ夢であってほしいと思っていたが、実際には違う。

「ここは、どこだ?」

どこかの部屋の中だ。ベッドの中に寝ていたが、しかし一体何故このような場所に。

体調は良好。何も痛いところはないが、ベッドから出て外を見るとやはり別の世界という感じだった。

「まさか、本当に異世界に来ちゃうなんて。あの神さまも相当困ったやつだな。」

別に恨まれるようなことはしていないのに、もう少し親切してくれてもいいのではないか。

そう思っていると、ドアが開いて誰かがやってきた。

「あ、起きていたんですね。」

騎士の格好をした女の子は、手料理を持っていた。

「えっと。私はストラです。貴方は、どこから来たんですか?名前は?」

「僕は左遠当理。どこから来たかは言えない。」

「貴方は何者なんですか?突然空から降って来たのは私がちゃんと見ているんです。」

「そうなのか。」

彼女に助けられたのか。空から降ってくるのは普通なら女の子の方がいい気がする。

「怪我とかはないようですけど。何か重大な事件に巻き込まれていたりしませんか?」

「いや。そんなことはないよ。」

むしろもう既にその事件が終わった後で、神さまにおつかいを頼まれたような話だし。

自分にとってもあまり真剣になる必要はないと感じていた。

「もし何か必要なことがあったら言ってください。このストラが何とかしてみせます。」

「それは頼もしいけれど。君は一体、どういう人なんだ?」

「私はギルド協会でギルドの任務を請け負っているんです。その任務の帰りに貴方を見つけて、ここまで連れて来たんですよ。ここは私の家なので、心配することはありません。」

「うーん。それは。」

一方的に助けられてしまった感じだが、せめてあの神さまは楽な転移方法はなかったんだろうか。

あの落とし穴といい、少し過激すぎる。

「住むところに困っているのなら、泊まってくれても構いませんよ。」

「別にいいよ。僕はそもそも、そこまでしてもらう必要がないから。」

「いいえ。なんだかそうしなきゃいけないという謎の使命感があって。」

「なんだそれ。」

「いいですから。とりあえず、お腹はすいていませんか?ご飯を作って来たんです。」

とりあえず、今は目の前にある軽食を食べるしかなかった。


自分がどうして空から降って来たのかを彼女に説明できる根気もないので、今は適当にくつろぐしかない。

ミントベルクという国の中に、今僕はいるらしい。適当にストラから聞いた情報によると、大きい街へ行くには少し時間がかかるらしい。

「ストラは一人で住んでいるのか?」

「はい。」

「家族は?」

「私はソロで仕事していますから。私の出身はミントブルクではないんです。もっと遠くの国から来て、今は任務を受注して働いているんです。」

「そうか。」

「ディープランにはもっと大きなお店がありますから、そこに行って何か必要なものを買うのもいいですね。」

「僕もそのギルドみたいな職で働けたりしないのか?」

「えっと。試験を受けないといけないので。今はすぐには入れません。」

「そうか。とりあえずのんびりやっていくしかないか。」

「でも、お手伝いというやり方なら、私が多少援助できると思いますけど。」

「援助って。」

そこまでストラにしてもらう必要性はないと思うけれど。僕は彼女にどう見られているんだろうか。

何か変なことが起きたわけでもなさそうだけれど、気絶している間のことなんてわからないし。

「アタリさんは何か複雑な事情があるみたいですし。このご時世、そういった人の弱みにつけこむ人も多いですから。」

「それは怖いけど。」

僕の場合、神さまに出会ったなんてすぐには言えないだろうし。

「もしかしてアタリさんは、ものすごく偉い人だったりします?物凄く遠い国の王子様とか。」

「さすがにそういう人間じゃないけれど。」

その王様より偉い人?には出会ったことはあるかな。

「そうだな。ごく普通の人間だったけど、ある理由で遠いところまで来てしまったというぐらいしか。」

「でも、あんな光から出て来たんですよね。」

「光?」

「私が帰る途中で、アタリさんは物凄く大きな光から落ちて来たんです。私が貴方を拾ってここまで運んできたんですけど。」

「うーん。」

もう少し丁寧に転移させてもらえなかったんだろうか、これでは少し格好悪い気はする。

「あんな高い場所からあのまま落ちていたら、流石に死んでいたかもしれません。」

「あははは。まさか。」

本当に死にそうな高さで落ちていたのだとしたら、あの女神と後でちゃんと話しをしよう。

「地面に直撃して、体の半分まで埋まっていたかもしれません。これは一大事です。」

「えっと。まぁ、助けてくれたのは感謝するけど。」

「もしかしたらアタリさんは物凄く不運で不吉な存在によって導かれているかもしれません。そう私の乙女のインスピレーションが告げています。」

「なにそれ?なにかの魔法?」

「魔法というよりは、魔法なんですけど。」

意味がよくわからないが、彼女にとって僕は割とヤバイタイプの人間に見えるようだ。

「あの光や魔法陣はとても大きな力によって出て来たものです。あんな物の光の中から出てきたアタリさんは、何かあったと思う方が正しいんですから。」

「そりゃぁそうだけど。」

「でも、アタリさんはなにも言えないんですね。」

「まぁ、こっちもあまり確証性というか。真実をまだよく知らないから。」

特に、何故あの女神が僕を選んだのか。

「アタリさんはまだいい人そうですけど。」

まだってどういう意味だ?

「もし何か不都合なことが起きたらと思うと、私としては心配なんです。」

「そこまでかな。僕が弱そうだとか。」

「私が一目見て、貴方はその。」

「ん?どうしたんだ?」

「いいえ。なんでもないです。これから先はとりあえず私が貴方の面倒を見ます。」

「猫か何かか僕は。そこまでされる覚えはないぞ。」

「そうですか。一人でも大丈夫ならいいんですけど。」

いや、それはあまり良くはないのだが。

「えっと。とりあえず色々知らないことだらけだから。ストラが協力してくれるのは感謝できるけど。」

「それならいいです。」

とりあえず、ストラが全面的に協力してくれることになってしまった。

ある意味都合はいいが、その理由は単純に僕が不審だからだろうけど。


そのストラの家で食事をした後、僕は外に出てみた。非常に見晴らしのいい景色だが、地理感はないためこれ以上移動できるわけでもない。

とりあえず近くにある納屋に行くと、そこにはストラのドラゴンがいた。キュルという名前のドラゴンは納屋の中で寝ている。

ふと、何か物音が聞こえた。外に出るが別に誰もいない。

「にゃっ」

その声は頭上から聞こえた。突然誰かが納屋の屋根から飛び降りて来て、僕に抱きつく。

「うわっ!?」

「ん?なんだ。ストラじゃないにゃ?」

「な、なんだ君は!?」

猫耳の生えた女の子が僕の背中に抱きついたまま離れない。

「お前は誰にゃ。」

「アタリ。とりあえず、離れてくれないか?」

「お前は不審だにゃ。こんなところでストラの居場所をうろついているなんて。実は怪しいことを考えているにゃ。」

「怪しいって。僕は別にそんなことは考えていない。」

「男の体は正直だからにゃ。今こうしてお前はエロいことを考えているぐらい鼻でわかるにゃ。」

いや、それは君が背中に押し付けているおっぱいが意外とでかいからであって。別にそれは僕のせいじゃないというかお前のせいだ。

「いいから離れてくれ。お前は知らない相手にこんなことをするやつなのか?」

「失礼なことを言うにゃ。あまりへんな事を言うと舐めるぞ。」

「なんだそれ。別に怖くないんじゃないか。」

「試してみるか人間。」

え?と物凄く嫌な予感がした。ぺろり、とその猫娘は僕の首筋を舐める。しかし、その感覚は明らかにぺろりとは言えない凶悪な感触だった。

「痛い痛い痛い痛い痛い!!お前の舌はヤスリか!?」

「こんなに優しくしてあげてるのに。お前は女の子かにゃ。」

「ライオン並みの舌なんじゃないかそれ!?いいから止めてくれ!」

「そんなことを言われると傷つくにゃ。乙女の心の傷に塩を塗るだなんて、人間はどうしたらそんな最低な生き物になれるにゃ。」

「いや、ほとんど獣みたいなやつに暴力を振るわれているとしか思えないんだけど。」

「耳を噛まれたくなければストラになにをする気か薄情せい。」

「ひぃ!?」

あまり嬉しくなかった。

「あれー?なにしてるんですか?」

ようやくストラが来てくれたようだ。

「ストラこいつを倒してくれ!」

「何を言っているにゃ。そんなことをしたらお前ごと死ぬぞ。」

「何言ってるんだ?」

誰が敵なのか味方なのかわからなくなって来た。

「ミーシャちゃん。また今日も遊んでるの?」

「遊んでにゃいな。こうして不審な男性を捕まえててごめにしようとしている最中にゃ。」

「女の子がそんなことしちゃダメでしょ。ミーシャちゃんだって仕事あるんじゃなかったの?」

「はぁ。面倒くさいにゃ。大体あんな魔物を倒せなんて、人使いが荒いにゃ。」

「面倒臭がってサボるなんていけません。いいからアトラから離れてください。」

「ストラはこいつをどうする気にゃ。」

「その人は私が守るべき人なんです。」

そういって剣を抜いた。

そして、その剣に魔力の光が渦巻く。

「さぁ、彼から離れないと酷い目にあいますよ。」

「ところで、昨日冷蔵庫にあったプリンはもう少し別の店のものにしたほうがいいにゃ。」

「なっ!あれを食べたの貴方なんですか!?返してください今すぐ!」

「もうすでに消化したにゃ。」

「くっ、私がとっておいたデザートをよくも!許しません!成敗します!」

「いや、ちょっとまてストラ!?」

僕の制止が聞こえなかった彼女は、自分の魔法を正面にいる相手に対し叩き込んだ。

しかし、それよりも前にミーシャは瞬間移動ともいえる速さで逃げた。

僕にだけその魔力は当たってしまい、粉塵が巻き上げられる。

「あぁ!?」

「甘いにゃ。それでよくドラグナーとして生きていけるにゃ。」

「よくもアタリを!」

「いや、やったのはお前にゃ。」

とりあえずストラはアタリに駆け寄る。

「大丈夫ですか?!」

「いや、平気かな。物凄くびっくりしたけど。」

「無傷ですね。よかった、さすがはアタリです。」

「えっと。」

悪意無しで人に誤射する女の子をどうしたらいいんだろうか。だんだん訳がわからなくなってきた。

「毎回人に迷惑をかけて、ミーシャは少し反省してください。」

「そのアタリという奴が気に入ったのかにゃ。割と趣味が悪いんじゃないかにゃ。」

「いいかげんにしないと本気で撃ちますよ!」

「そんな事をしたらこの家ごと吹き飛ぶにゃ。ストラには私の代わりに討伐に行ってもらおうかと思っていたけれど。」

「また私を盾にする気ですね。大体貴方は。」

「ふふふ。俺が持っているこれを忘れたかにゃ。」

ミーシャがポケットから取り出したネックレス。わりと高そうなものだが、一体なんだろうか。

「それは、返してください!」

「これは私が質屋で買ったものだから。正当な取引で手に入れたものにゃ。とりあえず、このネックレスを買った分の仕事をしない限り、取り返せるとは思わないことにゃ。」

「卑怯な真似を。」

どうやらあれはもともとはストラの持ち物らしい。

「それは私の大切な物なんです。返してくれないと困るんです!」

「その大切な物を無くしてしまったやつのセリフじゃないにゃ。まだこのネックレスの値段の半分も貰っていないし。すぐに返すわけにもいかないにゃ。」

「私がもっと戦えば、それを返してくれるんですね。」

「任務代行をしてくれるのなら感謝するにゃ。ちなみに、私が現在請け負っている任務はレネア森の遺跡に居る魔物の駆除だから。」

「分かりました。」

「えっと、いきなり行くのか?」

僕としては一緒に行った方がいいんだろうか。

「アタリさんにまで、ご迷惑をかけるわけにはいけませんから。」

「いや、ついでに色々な場所に行きたいけど。」

「そうだにゃ。もしストラが負けそうになった時の盾ぐらいにはなるかにゃ。」

そういう風に見られてしまったのだろうか。僕は別に事故にあったようなものだけれど。



ミーシャが言っていたレネア森へ行くにはそう時間がかからなかった。気温が穏やかで、よく回復用の薬草が採取できる場所らしい。

「まだ時間がかかりそうだな。」

「この場所はわりと入り組んでいるので、特定の道以外には出ないでください。もしかしたら変な生き物がいるかもしれませんし。」

「変って?」

「うーん。なんというか。名状しがたい生き物がいるので。」

なんだろう、逆に見たい気はするが。

「ストラは怖がりだにゃ。そもそもスライムすら追いかけられることがあったのだから。」

「え?スライム?」

「あ、あれはあのスライムがいけないから悪いんです。ミーシャだって、以前ゴブリンの罠にはまったじゃないですか。」

「あのような罠をかけること自体私に対する冒涜だにゃ。」

「あんな罠にはまるの、動物でも難しいんだけど。」

そうとう原始的な罠にはまったんだろうか。

「ミーシャはいつからストラと知り合いになったんだ?」

「三年くらい前でしょうか。あの時は突然森の中で会って、私に攻撃してきたんですけど。」

「あの時は熱い出会いだったにゃ。」

「私が崖から転んで魔物の巣に落ちて、それで私を魔物と勘違いしたんです。それで和解したあとは良かったんですけど、それから先に彼女が質屋で私の大切なものを手に入れていたのが分かって。」

「突然自分の大切なものが無くなっていたことに気づかないのもどうかと思うけどにゃ。」

「まさか質屋に流れていたなんて。」

しかし、その質屋でミーシャが買っている時点では彼女も綺麗なものが好きなんだろうか。

「このネックレス、魔除けの加護がついているからダニ避けに便利なんだにゃ。」

「そんなどうでもいい理由で返さなかったのか?」

「どうでもいいとは何にゃ。私がダニや毛玉を穿いているところを見たいのかにゃ。」

そんなところまで猫と一緒じゃんくてもいいだろうに。

しかし、毛玉って一体なんの毛玉なんだろうか。

「割と高価だったのかそれ?」

「ふむ。でも魔除けとしては最適にゃ。」

魔除けっていうより虫除けって言った方が正しいような気はする。

「ストラは、誰かに貰ったものなのか?」

「はい。大切なものなんですけれど。でもミーシャが言うほど高価なものだとは思っていなかったので。油断していました。」

「高価といっても、ちゃんと私の任務を代行したりしていけば十分払える額にゃ。」

十分に払えるとしても、すぐにストラは取り返したい気持ちだった。

「任務先の魔物ってどういう奴なんだ?」

「んにゃ?そんなことも知らないでどうやって生きていたんだにゃ?」

「えっと。」

「アタリさんはとても遠い場所から来た人なんです。」

「どんな理由でお世話になったのか謎だにゃ。とりあえず、どこから話せばいいんだにゃ?」

「魔物という単語からかな。」

流石にどうかとは思うが。今は仕方がない。

「魔物は二種類あるにゃ。普通にそこら辺に生息している、魔法を使える人間以外の生命と。もう一つはデモンズビースト化することで形態変化した魔物のことにゃ。私たちがこれから先向かっているのは、そのデモンズビースト化している魔物を倒すこと。それができればギルド協会から報酬を貰えるにゃ。」

「デモンズって、なんだ?」

「魔力が変異して、凶暴な存在になることにゃ。魔力というのは常に安全なものではないから。時によっては厄介な破壊活動をするにゃ。遺跡や精霊の近くにいる魔物はとくに、討伐対象となるレベルに形態変化してしまうけど。そんなことを知らなのはどうしてにゃ?」

「長く幽閉生活していたみたいなものかな。」

適当な言い訳をしておいたが、これから先はもう少し慎重になったほうがいいんだろうか。



目的の場所。そこに到着した時には、崩れた石の壁の上に例の魔物がいた。

普通の魔物と違い、黒色になって暗いオーラを放っているのがわかる。

四足の魔物は眠っているようだが、今が攻撃のチャンスだろうか。

「アタリとミーシャはここで待機していてください。私がすぐに向かって倒します。」

「いいのか?手伝わなくて。」

「武器も無いのにどうやって手伝うにゃ。」

ミーシャの言う通りだが、こうして見ているだけでいいのか不安にはなる。

「大丈夫です。私はこう見えても強いんですから。」

剣を抜いたストラは前進する。魔物に気づかれる前に、彼女は一気に魔物の方へ走り出した。

その助走の勢いで彼女はかなり高いジャンプをする。魔物は彼女に気づいたが、抵抗する前に彼女は斬りかかった。

「だぁあああ!」

一撃ヒットするが、それだけでは倒せない。

敵意を感じた魔物はすぐに立ち上がり、咆哮を上げてストラに攻撃する。

ストラに対する突撃が複数回行われるが、ストラはそれを回避していた。

そして魔物の隙を狙って攻撃した後、後退して魔物の尻尾攻撃を回避する。

ぐるりと回転した後には石の壁が尻尾で破壊されている。見た目以上に強そうだが、彼女は大丈夫だろうか。

魔物は咆哮をまた一度上げる。そして、周囲に魔力の渦が発生した。

その魔物は大きな口を開けると、その正面に雷の玉が形成される。その雷撃は周囲を焼け焦がしながらストラへ一直線に襲いかかる。

「ストラ!」

ストラは回避運動しないことに僕は驚いていたが、彼女は持っていた剣でその攻撃を防ぎきった。

その剣は帯電したままになり、ストラは両手でその剣の柄を強く握る。

「はぁ!」

大きく横に振りかぶる。その動きと同時に帯電されていた雷撃が目の前の魔物に対し直撃する。

その魔物は大きくダメージを受けたようで、さらにストラは全身して魔物の体を切り裂く。

魔物は抵抗し攻撃するが、その攻撃はストラが飛び上がったことで外れる。

頭部を踏み台にし、彼女はとても高い場所まで上がった。

剣に魔力が形成され、その一撃がその魔物にたいし炸裂し爆発する。

大きな土ほこりが立ったが、彼女はとりあえず魔物に勝ったようだ。

その魔物は消え失せており、そのかわりとして彼女の手に赤い宝石のようなものがあった。

「勝ったのか?」

「そうみたいだにゃ。」

とりあえず何とかなった、と僕は安堵しそうになった時だ。奥にまだもう一匹魔物がいるのが分かった。

「ストラ!」

「え?」

物陰から突然現れたもう一匹の魔物、僕は走ってストラの前まで来た。どうしたらいいのか分からないが、直感で出てきた魔法陣の壁によりその魔物の攻撃は弾かれる。

「まだ居たんですか!?」

その奇襲を防いだ後、僕は直感に従って手をかざした。

「ブレス・アクセリオン」

その一言の詠唱により、一閃の光が生まれ目の前の魔物を消しとばした。

それだけなら良かったが、自分が放った魔法が必要以上に強かったのか遺跡や木々を丸ごと消しとばしてしまった。

燃え上がる炎がいかにもやってしまった感じになったが。一応これでなんとかなったはずだ。

「一撃で倒しちゃいました。さすがアタリさんです!。」

「これ、大丈夫かな。」

建物ごと破壊してしまったが、怒られたりしないだろうか。

「今の魔法で消えたみたいだけど。今の明らかに普通じゃないにゃ。何者なの貴方は。」

ミーシャはさらに不審な人を見る目になった。

「えっと。なんだ、とりあえず仕事は終わったんだから帰ろうよ。」

「別にいいけれど。これどうするのかにゃ。」

見事に消しとばされた遺跡群は修復は難しいだろう。

「そうですね。魔物がすでに破壊していったことにしましょう。」

「それで言い訳できるとおもってるのがすごいにゃ。とりあえず帰るけど、後でゆっくりアタリと話しをしたいにゃ。」

そう言われたが、僕としては今のは不可抗力だと言いたい。

教えられなくとも使うことが出来た強力な魔法のことなど、女神のところまで戻らない限り分からないだろうし。

むしろこんな事になるくらいなら最初から言ってくれればいいのだが。

女神の方は僕を異世界に送った後はもう二度と現れないのだろうか。

というよりは、自分の力をコントロールしないと恐らくかなり酷い事にもなりそうだ。

手持ちで火気厳禁、衝撃があっただけで大爆発を引き起こす爆弾を持っている感じになっていた。

「もしかしたら、アタリさんと一緒にいればミーシャが受注した任務を全部代行できるかもしれません。」

「それ、ミーシャが一方的に楽していないか?」

「大丈夫ですよ。私たちの頑張りと、アタリさんに秘められた魔法の力は高く評価してくれるはずです。このまま私と協力して敵を倒していけばかなりの報酬が貰えるはずですよ。」

謎のポジティブを発揮しているけれど、僕にとってはまだ始まったばかりなので油断はできない。


●登場人物

[左遠当理」

主人公。女神と契約した人間。


[ストラ・バッフェル]

ヒロイン。ギルド協会の騎士。


[ミーシャ・フレディ]

獣人。ストラに任務代行をさせている。


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