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お花畑

作者: seekux

最近インフルになりました。

 ここはとあるお花畑。色とりどりの花が咲き誇るが、そんな美しいお花畑に誰も足を踏み入れません。誰もかれも、見ぬ振りをし、通りすぎていくのです。

 そんなある日。その場を通りかかったあなたはお花畑を見た。何度もまわりをまわったり、背伸びしたりして、周りを気にせずにずっと見ていた。そしてとうとう入って来たと思ったら早々に、あなたは花を摘み始めた。

「やめてよ!!!!!」

 私は考えるより早く叫んでいた。

「…なんで」

 あなたは不思議そうな顔をした。なんでなんて聞かれたってそれは決まっている。

「それは私のお花だから、ここは私のお花畑だから!!!」

 そう。ここは私のお花畑。誰も足を踏み入れてはいけない。ここにある花を摘んではいけない。

「あなたはそれでいいの?誰もが見て見ぬ振りをして、みんな通りすぎていくの」

「それでいい!!!!!それでいいから……壊さないでよ…」

 私は泣き崩れた。確かに誰も足を踏み入れてはくれなかった。あなた以外誰もいなかった。でも、私はそれでよかった。ここは私のお花畑。だから、せめてこの場だけは、私の物にさせてよ…。

「私にもちょうだい。あなたのお花。私のもあげるから」

 あなたは駆け寄って私を抱き締めた。そしてあなたはこう言った。

「あなたをもっと知りたい」

 その瞬間、私のお花畑はあなたの色に染まった。距離感という名の柵は消えて、空からは光が射し込んだ。優しい雨が、霧のように降り注ぎ、私の花を潤し、その上に虹を架けた。

 本当はさみしかった。でもそれと同時に悟られたくなかった。だから逃げ込んだ。私の中にある、このお花畑に。引きこもって、誰も寄せ付けないようにして、ずっと一人でいた。でもあなただけは私のお花畑に足を踏み入れてくれた。あなたのお花畑に私を招待してくれた。冷えきった心はあなたで満たされて暖まる。そして私もあなたを抱き締めた。壊れないように優しく、離れないように、ずっと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 温かいお話でした。 [一言] お花畑は心の壁のようなものでしょうか。 自身の内にある素敵なものを他者に伝えたいけれど誤解が怖いような……。それでも伝えたい相手が最後には現れたのだと感じまし…
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