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怪盗助手と正体 sideツイス→???

怪盗ルミドシュの助手、ツイス君視点のお話です。ツイス君はこの『モブ令嬢』の第二主人公的な立場です。


この話の最後にはツイス君も正体が分かるので、それを踏まえてどうぞお読みください。ただ、別に踏まえていなくても構いません。

 皆さん、はじめまして。ツイスです。一応ルミドシュの助手をやってます。え?知ってる?そんなことを言われても、一応自己紹介した方がいいかと思いまして。


 ……って、僕誰に向かって言ってるんだ?


「ツイス?いきなりボーッとしてどうしたの?」

「あ、いえ、何でもないです」


 僕は今、森小屋地下室にてルミドシュと次回盗む際の経路の、確認や目当てのお宝の確認をしています。


 怪盗ルミドシュ。その名をこの大陸で知らない人はいない。……ツイス(ぼく)の名を知っている人はその10分の1いればいい方ですが。


 え?それもどうでもいいから、偽名じゃなくて僕の本名教えろ?あ〜……多分あと少しで分かると思うので我慢してください。その間、僕がどの人か当てて見てください。本名が分かる前までに多分、僕の名前が出てくるので。


「そういえばルミドシュ」

「うん?何?」


 ふとルミドシュを見ると、ルミドシュはテーブルの上の地図から目を放さずに返事をする。ルミドシュはこういう経路を覚えたり現在位置の把握がとことん苦手だ。いつも頑張って本番まで何度も復習して頭に叩き込むのだが、何故か本番になって忘れてしまう。まあ要は、ルミドシュは根っからの方向音痴なのだ。だから結局、毎回僕がルミドシュをナビゲートすることになる。こんなに忘れてしまうのなら元から覚えようとする人は少ないだろうが、ルミドシュはそれでも頑張って覚えようと努力しているから凄い。


 何故そんな奴が怪盗をやっているのか、とか聞くな。僕達もそう思っているから。あの時の僕達は、ただ単純に若かったんだ……。いや、今も十分に若いよ?僕達まだ10代だし。けどさ、なんていうか、ノリがさ?ヤバかったんだよ…………ヤバかったんだよ……!!


 でもそれはそれとして。


「この前、どうしてあんなに遅れたんですか?」


 いくらなんでも、予定より3時間遅れたのに謝罪もなしって、そりゃないですよ。一応、何かあったのかと心配したこっちの身にもなってほしい。()()であってほとんど心配はほとんどしていなかったけどさ。


「……さて、なんのことかな?」


 言葉や声だけ聞くと普段通りですけど、動きが挙動不審になってますよ。全然取り繕えていません。動きがブリキのオモチャです。


「さては忘れて寝てましたね?」


 ――ギクリッ


「……仕方ないでしょう。あと一ヶ月後、ギル様が国民達にお披露目されるんだよ?ついに一ヶ月きったなあと思うと、ついにギル様をこの目で拝めるのかと思うと……」


 拝む……そうだった。この人、ギル推しなんだった……。


「幸せすぎて夢なんじゃないかと思ってしまって……寝たら目が覚めるんじゃないかと」

「覚めるわけないでしょ。馬鹿ですか」


 思わず反射的にツッコんでしまったが、今のはヤバかった……。だってあのルミドシュが!!なんか凄い乙女な顔してたんだよ!?だいたいギルの話するときはこんな顔するけれども。うっかりときめいてしまったじゃないですか!!


「馬鹿……馬鹿って、言われた……」

「ああ!!もう、何しゅんとしてくれちゃってんですか!!調子狂うなぁ、もう!!」


 何故ここでしゅんとする!?僕の言葉に反論もせず、強気じゃなくて横暴じゃなくて、おまけに尊大じゃないルミドシュって、ただの超絶美少女ですからね!?多少平均より背が高いけど。

 とりあえず、これをどうにかしなければ……。やっぱ男のことで調子狂ってるんだから、ここは他の男を出すべき!?


「そ、そうだ!!ほら、ゼイルス・ローゼルガ公爵子息なんてどうです!?この前、ギルの次に好きだって言ってたじゃないですか!それにチノセオ・ヒェンバー辺境伯子息は?キキル・ヨゼック侯爵子息にフェオルグ・ロレンクロット王弟公爵は?」


 あー、なぜこんなにも男を売り出さなければなんない!?いや、機嫌取りのためだけど!!僕も男だけら何か虚しい……。って違う。ルミドシュには男じゃなくて女の子だったー!!


「ローゼルガ公爵子息は、確かにゲームの中ではギル様の次に好きだったけど、現実では無理。俺様は受けつけない。ヒェンバー辺境伯子息は我が強すぎる。見るに耐えられない。ヨゼック侯爵子息はヒョロすぎる。見てて不安になってくるってどれほどと思わない?ロレンクロット王弟公爵は年上だもん。私、3つ以上上の人は論外。

 それより女の子ちょうだいよ。あと、ギル様に敬称つけろ」

「あ、はい」


 どうやらルミドシュも、いつもの調子に戻ったようだ。よかった……。もしあのままだと、僕どう接すればいいんだよ。


 それにしても、なんかさっきのルミドシュの言葉、グサッときた。そうか、ルミドシュからみると頼りないのか……良かったような、良くなかったような……。男として少しむなしい。


「というか、ルミドシュって男に興味ないんですか?」

「え?それは恋愛対象としてってこと?……ないなぁ。だって女の子の方が可愛いし、魅力的だし?」

「でも、乙女ゲームやってたんですよね?」

「まあね。だけど、それはそれでこれはこれ。ここは現実だしね。ギル様のことも、恋愛対象かって言われるとそれは違って、二次元の推しに入れ揚げてる感じね。いや、今は乙女ゲーム世界(ここ)が現実だから、三次元のアイドルって感じかな?」


 そんなものなんですかねぇ……?


 ルミドシュと違って、僕はもう覚えることは覚えたので〈異次元〉から、貴重な十枠中一枠を占めている魅惑のお菓子(スナック菓子)・ポテトチップス略してポテチを大皿ごと取り出して別の小さめの皿に少し入れ替え、また大皿を〈異次元〉へと戻した。

 僕がこの世界でルミドシュと出会って最初にやったこと。それがスライサーを作ることだった。だってスライサーさえあれば、ポテチもにんじんチップスも玉ねぎチップスも、それにかぼちゃチップスも、凄く簡単でヘルシーなものばかりだけど作れるようになるからね。


 あー、ポテチってどうしてこう手が止まらなくなるんだろうね。これにコーラがあれば良かったんだけど、さすがにコーラの作り方までは分からなかった。わざわざ炭酸飲料を作るための魔道具まで作ったのに……。


 コーラの代わりにオレンジジュースの炭酸飲料を、これまた〈異次元〉から取り出してコップに注ぐ。炭酸飲料は種類も豊富だから、全て『炭酸飲料』で一枠にまとめている。本当はこういうのはゴチャゴチャしてしまうからやりたくないんだけどなぁ。


「じゃあルミドシュの乙女ゲームでのタイプって、どんな奴ですか?」


 ふと気になったから聞いてみる。女の子が好きでも、一応乙女ゲームやってて推しがいたんだから、多少のタイプくらいはあるでしょう。


「タイプ……?うーん、考えたことなかった。ちょっと待ってね。今整理するから」


 ウンウン唸り始めたルミドシュを見て、僕は少し早まったかもしれないと、思わず少し焦ってしまった。

 まだルートすら覚えていないようなのに、こんなことに頭を使って大丈夫なんですかね、この人。いくら僕でも、このせいでルミドシュが本番までに全て覚えられなかったら、強い罪悪感に襲われそうです。ルミドシュはこれだけのことで今まで必死に覚えたものを忘れてしまうくらいに、位置関係のことが苦手ですから……。


「あ、細マッチョ?少なくともガリガリだったり、フニフニポニョポニョはない。頼りないし。あとは一途な人かな。私、結構我が儘だから、それを許容してくれそうな人をゲームでも求めているのかも」

「なるほど。確かにルミドシュって我が儘ですよね、見た目通り。その上意固地で意地っ張りで、強気で尊大で。見た目通り。あ。あと恥ずかしがり屋のポンコツ」

「うーん、間違ってないのがムカつく」


 にしても細マッチョの一途って……。やっぱり女の子はそういう男の方が好きなのか?だから僕モテないの?いや、でも、これでも一応筋トレや剣術等、毎日欠かしたことないから細マッチョと言われる部類に入っているはず……!!


「もし私が結婚するなら、それに加えて優しかったりイケメンだったりといろいろ付け足されるけどね。

 だから貴族様だと、ギル様はもちろん、シャロルツイスター侯爵だったり、レイヴン・ロズフォート公爵子息だったり、クリストル・ロレンスルト公爵子息だったりケネリア・ロレンティカ第二王子に会ってみたいかな。

 ……どうしたの、そんなに汗かいて」

「あ、汗!?さ、さあ?暑いんじゃないんですかね、この部屋!!」

「……そう?」

「はい、そうです!!そうに決まってます!!

 それより、その会いたい人達って、絶対恋愛的な意味じゃないですよね!?皆、ギル…様に関係ある人達ですし」

「あ、バレた?ま、バレるよね。というか何を当たり前なことを言っているんだい?ツイス君」


 あ、あぶな!?危うく冷や汗で風邪ひくかと思った……。


 ちなみにギルと関係があるっていうのは、ツイスター侯爵とロレンスルト公爵子息がギルと血縁関係、ロズフォート公爵子息はギルの従者だから。第二王子は言うまでもない。


「そ、そうですよね。アハハ。

 ところで、僕、明日早く起きなきゃいけないの思い出したので帰ります!!それじゃ、また明後日に!!」


 これ以上いると、ボロが出そうなので逃げるが勝ち!!と、僕は急いで〈転移〉する。〈転移〉した先は、かなり広い部屋。置かれているベッドやローテーブルやソファなどの家具は、それぞれがシンプルだが高級品とすぐ分かるほどの繊細な彫刻や気品、重みが感じられる。何度見ても惚れ直してしまう僕の寝室だ。


 明後日は、オーツェルグ魔王国へ盗みに行く前日なので、その下準備の為にルミドシュと会う。怪盗業とは、盗む以外にもやることはいっぱいあるのだ。だから盗む前日は、必ず二人で集まって下準備の最終確認をするようにして、絶対に捕まることのないように気をつけている。

 捕まるのヤダ。コワイ。下手したら首とぶもん、物理で。それだけのものを盗んでいる自覚はあるよ?一ヶ月以内に返してるけどさ。ただ、面白いから、眺めたいから等の趣味で盗んでいるから、よけいに質が悪いと僕とルミドシュは思ってる。


 ―――コンコンコン


 普通だってらノックの鳴らない時間帯の今だが、この時間に僕の部屋に来るのは一人だけだ。それ以外は、余程の事態を除いて不審者扱いだ。


 僕は急いで仮面や服を着替え、魔法で変えていた髪と目の色を元に戻して返事をする。


「入れ」


 開けたままでいたバルコニーに繋がるガラスの扉から、風が吹き込んで顕わになった艶めく深緑の髪が棚引き、差し込んできた月光が濃く深い青を煌めかせる。


「お帰りなさいませ。温かい紅茶をお持ちしました」

「ああ、ありがとう。いつも助かるよ」


 執事服を着た20代半ばの男が、僕に紅茶を差し出してくる。僕付きの執事・ロウェンだ。幼いころから世話をしてもらっていて、何故か僕が気配を殺して夜中に出掛けて帰ってきても今のように気付く。

 でも、暖かくなってきたといってもまだ夜は肌寒いこの頃は、こんな気遣いは助かる。僕が抜け出していることは、誰にも言わずに見て見ぬ振りをしてくれるしね。


「もったいないお言葉でございます、シターギル殿下」



 改めまして。僕はシターギル・ロレンティカ。このロレンティアック王国第一王子で、王太子をしている。ルミドシュが言うには乙女ゲームのメイン攻略対象らしい、ルミドシュの推しです。そしてツイスの正体、かな?

というわけで、ツイス君の正体は皆さんご存じ、フィーアちゃんの推し・ギル様でした(≧▽≦)


それでは、次話もよろしくお願いします_(._.)_

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