怪盗ルミドシュ参上
主人公の一人称ですが、ルビがふってあるものはそのままで、ルビがふっていないものは“わたし”で読んでください。
ややこしくてすみませんm(_ _)m
ちなみに、一人称に“わたくし”のときは令嬢モード、“わたし”のときは通常(?)モード、傍点がふってあるときは前世のこととなっています。
またまたややこしくてすみません(_ _;)
そんなややこしい話ですが、それでよかったらよろしくどうぞ。
暗闇に包まれたある日の夜、月影に二人の影が舞う。
この影、実は怪盗とその助手の影。
今夜も華麗に大陸中を飛び回っている。
「ツイス、今夜はどこだっけ」
「えーと、ロレンティアック王国のシュレーダー伯爵家ですね」
「いや、今どこか分からないから何も言えないんだけど。で、今どこ?」
「はぁ、そんなこともわからないんですか。やっぱり僕がいないとルミドシュは駄目なんですから」
「ん〜?何か言ったかなあ?」
「いえっ、何でもありません!!ここはもうロレンティアック王国に入っています!!」
「ん、そう」
……はずである。多分。きっと。おそらく。
怪盗ルミドシュは、女の身でありながら大陸を股にかけた大怪盗。数多の宝石や魔道具を持ち去っては一ヶ月以内に返却するという変わり者で、その女性向け特有の甘い声と誰もが夢見るセリフ、そして本人の女好きが合わさり落とした女は数知れず。年齢問わず、性別問わずの全てのオトメの憧れである。
白いタキシードに似たものを着たルミドシュの瞳は、星を嵌め込んだような闇に映える金、風で舞う一つに纏めた長い艶やかな髪は月光に光る銀、そしてまさに仮面舞踏会で使うような仮面という目立つ色合いをしながらも、なぜ今まで誰も捕まえることができないのか。それは簡単。捕まえる前に、この世の全ての者たちが魅了されてしまうのだ、この髪と瞳、魔法を使った幻影などの怪盗ルミドシュの一挙一動に。
さて。そのルミドシュの後ろや隣に必ずいるこの少年とも青年ともとれる、なんとも言えない特有の美しさを持った狐面の男。面に耳は無く、口部分も無い。なぜか、この大陸にはない上に歴代勇者の伝えたというパーカーとかいう物を着て、フードという服付き帽子を被っており、そのフードには狐耳という奇抜な格好をしたこいつは、ルミドシュの助手である。
この助手もルミドシュに負けず劣らずの美貌を持つが、人気はルミドシュには到底叶わない。なぜならルミドシュの姿を見る際に必ず、このツイスがルミドシュに遊ばれているのを見ているから残念な奴と認識されているのである。今はフードに隠れて見えないが、闇夜に溶け込むポニーテールの艶やかな黒い髪、仮面の目から除く宝石のような紅い瞳、175センチという長身から伸びた手足はスラリとしておりスタイルも良く、どれを取っても人々を魅了するはずなのに不運なやつである。
「あ、もしかしてあそこが今夜の?」
「はい、そうですよ」
「今夜はどんな宝石が待っているのかな?ワクワクするね〜」
「可愛い女の子いたらいいですね。クソッ、どうせ僕には見向きもしてくれないに決まってる!!僕も女の子にモテたい!!」
「……願望駄々漏れだよ…」
「もういいんですよ!!み〜んなルミドシュしか目に入らないんだから」
「はいはい、静かにね。……それじゃあ行くよ」
「分かりました」
「皆さん、ご機嫌いかがかな?それでは、宝石頂戴いたします」