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注意!ちっちゃい子を痛め付ける描写あり!
シリーはいつも一人で背負おうとする。私のロゼという名前も元々はあの子のものだ。
私の存在は彼女のために、私の命は彼女を生かすために。こんな事を言ったらきっとシリーは怒る。ビンタ一発くらい受けるかもしれないけれど、彼女のビンタは痛いではすまない。きっとぶっ飛ぶ。うん、墓場まで持っていこう。
門をシリーに任せて私はあの女を追う。念のため門の周囲を見て回り、人影がないことを確認してから追おう。
どうせなら村人を一人残らず消してから、と思うがシリーはそれを許さないだろう。村を出ようと言ってくれたのは彼女だが、それは私を案じてのことだ。優しい彼女は人の痛みに敏感で思いやりがあるけれど、私にはその感情がない。
シリーさえいれば、それでいい。
物陰に隠れながら女の足音のする方向へ向かう。
バタバタと走ってくれているおかげで追いやすい。
それにしても
「遅いな。追い付いちゃったよ」
既に何人か男を引き連れている女は一番奥に住む村長をお越しに行くのだろう。今のうちに何人かやるか、いや、むしろあの女を人質にとって…
色々と考えるがシリーの悲しい顔は見たくないからやめておこう。
もう少ししたら村長が起きて村に放送を流す。そうしたらシリーの身が危ない。
「戻ろう」
途中、持っていた棒が汚れていたので手頃なものに変えてから行きよりも倍のスピードで戻る。
少し先にシリーが見える。門もある程度空いているが、彼女の力ならもう少し空いていても良さそうだ。
ヒュン
視界を何かが横切った。それは一直線にシリーの体に当たり落ちる。よく見ると彼女の足元には大小様々な石が落ちている。
ヒュン
また石がシリー目掛けて飛んでいった。石が投げられたであろう場所を見てみると子供がいた。
小さい子達は石を拾ってきて、大きい子達はそれをシリー投げているようだ。
「化け物め!出ていけ!」
ヒュン
手のひら一杯の大きな石を子供が投げる。その隣では何人かが小さい石を投げようとしている。
大きな石は一直線にシリーへ飛んでいき瞼の上に当たった。そこからは血が流れ出ており、そこだけではなく口や頬からも血が出ていた。
「当たった!ざまぁみろ!」
「お兄ちゃんすごい!!ヒーローみたい!」
「もっとやっちゃえ」
目の前が赤く染まる。足元から冷えてきて感覚がなくなる。
あいつらはナニを、シテイル?
アイツはシリーを傷つけてイル?
アイツがシリーを、シリーから血が…
「ユルサナイ」
石を投げた子供目掛けて拳をつきだす。小さい体は声を出すまでもなくぶっ飛んだ。
ドゴォン!!
「ぎゃぁ!!!」
「なに?!なに?!」
「おにーちゃん!!!」
「ハァ、ハァ、ユルサナイユルサナイ許さないユルサナイィ゛!!!」
「ヒィ!!」
「ママー!!!」
「ウワーン!!!」
散り散りに逃げていく子供を横目で見ながら吹き飛んだ方へ行く。
意識を失っているそいつを持ち上げる。こいつがシリーを傷つけていたのだ。恐らく彼女の傷はこいつによるものが多いだろう。
ジ、ジリリ
『全員起きろ!!災いが村を出ようとしておる!!!
男どもは門へ急げ!!!』
スピーカーから老人の声が響く。あの女は無事村長へ知らせたらしい。
「チッ」
物足りないが子供を地面におき来るであろう男たちに備える。シリーの背後に立ち彼女を守る。
ドタドタ、ドタドタ
「さすがに早いね」
全員起きたのだろう。村中が一気に騒がしくなりこちらへ向かってくる足音がいたるところから聞こえてくる。
門はあと少しで人一人が通れる幅だ。あと少し。
ごめんね、お兄ちゃん( ノ;_ _)ノ