3
暴力的表現あり、注意です!
呑気に鼻唄を歌いながら歩く大男は彼女がいることに気付いていない。自分の声が彼女の接近を許していることに気付いていない。
背後から迫ったロゼはまず、男の急所を蹴りあげた。
「ぐぁっ!っ…!」
突然の攻撃に驚きと耐えられない痛さとで大声を出そうとした男の口を後ろから塞ぎ、喉仏を持っていた棒で殴る。
「静かにしろ」
更なる痛みで何を言われたのか理解できていないようだが、脅されていることは理解できるのだろう。
冷や汗をかきながら何度も頷いている。
男を膝まつかせてそっと口を塞いでいた手を離す。
「てめぇ!!!ぐぼばぁ゛!!!」
その瞬間大声をだし怒鳴ろうとした男の米神を足が直撃した。
回り蹴りをしたロゼは倒れた男をさらに痛め付けていく。腹を何度も蹴り棒で顔を殴る。一向に止まる気配がない。
「ロゼ、もう良いわ。その辺に。時間が惜しい、急ぎましょう」
「分かった。」
頬についた返り血を拭ってやり先を急かす。
「門を開けるまでの間、周りを警戒しておいて。近づく気配がしたら真っ先に知らせて」
「…うん、分かったよ。」
少し冷静になってきたみたいだ。先程までのロゼだったら「ヤってくる」など言いそうだ。
まず錠を外す。大の男二人係で外すであろうそれを一人で外す。
「ぐぅぅ゛っっっ!!!」
片側を外し地面に置く。土にめり込んだそれを荒い息で眺め汗を拭う。手の汗を念入りに拭き取りもう一方の錠を外しにかかる。
「シリー、足音が…ふたつ、いや、みっつする。」
見つかってしまったのなら音を抑える必要がない。
なるべく早く開けなければ。
「どぉりゃぁぁあ゛あ゛あ゛」
勢いを活かしてもうひとつも外した。
後は門を押し開けるだけだが、こちらも無駄に重そうだ。地面の抉れている後を見ればどれだけの力が必要かわかる。
「見えた!シリー!男が二人、女が一人来てる。」
本来なら女、しかも少女一人で開けれるものではないが、何故か昔から化け物のような筋力があった私なら開けられる。いや、開けるのだ。
「ヒッ!!どうしてあんた達が外に!」
「おい!お前ら誰の許可を得てそこにいる!」
「災いが!外に出ようとしている!」
「ハァ…ハァ…うるさいわね。ロゼ、時間稼ぎはお願い」
「うん。二人なら余裕で片付くよ。女は誰かを呼びにいったみたい。」
「これ以上増えたらやっかいね。」
「俺は門を押してるやつをやる!おまえ゛…どぅ゛ぐはぁっ!!」
「な!はやい゛っぶべら!!」
「シリーの邪魔はさせない」
私の筋力と対になるようロゼの速さは村一番だ。
男が相手だと力で負けてしまうが、攻撃の動作に入るまえにロゼが懐に入りその勢いのまま体勢を崩す。
「シリー、手を出して」
一瞬のうちに二人を沈めたロゼが自分の洋服を千切ると私の手に巻き付けてきた。錠を外すときに痛めてしまった両手は擦り傷だらけで血が出ている。
「ん、これで滑りにくいね。」
「ありがとう、ロゼ。男たちはたいしたことがなかったけれど女の方が気になるわ」
「うん、少し様子を見てくる。その間に門をお願いね」
そう言うと駆け出して行った。あっという間に姿が見えなくなってしまった。
ロゼが戻ってくる時、その時はきっとあの女が多くの村人を引き連れてくるだろう。その前に、急いで二人が通れるだけの隙間を作らなくては。
「よし、やるわよ!!」