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RuiN-花の咲く音-  作者: みづき
一部
4/21

4

いつも何かしらの音が聞こえていた家は、今は物音1つしない。

薄々気付いていたそれを認めたくなくて、端から部屋の中を念入りにもう一度探してみた。クローゼットやタンス、机の引き出しなんかも開けて、誰かがそこにいると信じて。誰もいなくても良いから、私が知っている何かがあれば、それだけで安心できるから。


全部の部屋をみて回ったけれどやはり見つけられなかった。


「ど、どうして…」


声が震えた。今まで感じたことのない恐怖が身体を支配する。


どうしよう、どうして、どうしたら。


混乱する頭で何か、手掛かりでも何かあれば。部屋をぐるぐると回り、階段を行ったり来たりしても、現状は変わらない。


「あれ?」


ふと、窓から外を見てみた。この小窓は二階の父母の寝室にあり、丁度裏の庭が見えるようになっているのだ。

窓に添えた手が異常に震えた。爪とガラスがあたりカチカチ鳴っている。いや、これは歯の音か。


「なんで」


何度目かの問いを言い終わる前にわたしは駆け出した。階段を1つ踏み間違え、転がり落ちてしまい、擦りむいたところやぶつけたところが痛いけれど、そんなの気にしていられない。


なんで。


早く、早く行かなくては。


なんで。


裏庭までそんな遠くない距離が今はとても遠く感じる。


なんで。


「なにも」


ないの。


父が買ってきたテーブルも母が嬉しそうに座った椅子も、姉が楽しそうに育てていた花も兄が作ってくれたブランコも。


さっきまであった。そう、家にはいる前にはあった。それなのに。


足元から冷えていく感覚。目の前の現実を受け入れられない。

これは夢だ。夢であって欲しい。


もう一度家に入ろう。少し落ち着いてから、そうしたら何か分かるかもしれない。見落としがあるのかも。

そう思い振り返った。


「な、んで…。」


家さえも消えていた。さっきまであった。わたし達の家が。初めからなかったかのように。

ただ、雑草が好き放題に伸びて生えているだけだ。


今、わたしに残っているものは握りした髪ゴムだけだ。祖母がわたしにくれた大切な髪ゴム。

最初は可愛くないし、綺麗じゃないし、いらないと思ったけれど、これだけがそこにわたしの家族がいた、わたし達の住む家が存在したと証明してくる。


これさえも消えてしまってはどうにかなってしまいそうだ。

結べるほどの髪の長さではないけれど、かっこわるくなっても良いから。わたしの記憶と相違のない唯一の物を身に付けていたいと思った。


鏡がないから手間取ってしまったけれど、何とか結べた。


その時に、分かってしまった。どうしてこうなったのか。

思い出した。


そこに

「愛情なんてなかった」のだ。


全てがまやかしであり、わたしの理想が作り出した夢。全ては彼女のため。

私が全て背負おうと思った。

これは罰だ。私だけの罪だ。


けれども、昔のわたしが何を考えて、こんなものを作り出したのかは現在の私には、あの恐怖を味わった私には到底理解ができない。


ただ、繰り返される未来の私が何を思うかは理解できる。


「恨むぞ」過去のわたしよ。

プロローグ終わり。読まなくてもいいやつ。裏設定?みたいな。本当は最終章のあとでプロローグとして入れようと思ってたやつ。主人子の過去みたいな感じで。

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