嘘は誰かを守る盾になる
この部屋は誰のもの、とか特に決まりはないが自然と廊下を挟んで男女で別れている。
エルは慣れてないだろうからと最初は僕と二人部屋だったが、ここで過ごすうちに下の子が「エルと一緒に寝る」と言い、結局いつものように大人数で寝ることになった。
ナーナへの思いも早々に姉に対するものに変わってしまい、普段は「ナーナ姉さん」と呼んでいるが僕と居るときは二人で「ナーナおばさん」とからかうまでになった。
エルは僕といる事が多いがそれ以外はダズ兄さんと一緒にいる。
二人で周囲の森を散策したり、何かを作ったりしている。
ガリガリだった体型も戻り、健康的になった。
「なー、ナーナ」
「繋げて呼ばない」
「えー、良いじゃん」
「何か嫌なのよ、それで、なに?」
「最近さー、先生の傷、増えてない?」
「あら、鈍感アランちゃんにしてはよく見てるじゃない」
先生はよく出掛けるが、大体が僕たちの為だ、行きにはなかった擦り傷が帰ってくるとある。
服も少し砂っぽく、転んでしまったのか転ばされたのか。
最初は先生もドジするんだなー、と思っていたがそれが毎回となると可笑しいことに気づいた。
先生に聞いても、「転んだだけですよ」「大した怪我ではないですからね」と言うだけで何も教えてくれなかった。
「気になるよね」
「うん、絶対数転んだなんて嘘だ」
「でも聞いても教えてくれないだろ」
「尾行ってやつ、やろーぜ」
「はぁ?そんなの先生にすぐバレるって」
「エルはチキンだな。バレたらバレたで一緒に行けば良いだろ。そしたら原因が分かるかもしれない」
「怒られたらアランのせいにするからな」
ナーナもダズ兄さんも大事にしなかったから、エルに言ってみたら案の定気にしていた。
あの二人は何か事情を知っているのかもしれないが、先生の事となると何も教えてくれない。だから、自分達で確かめにいくことにした。
「明日、先生が出掛けそうな時間に庭にいよう」
朝は8時に家を出る。だから、それより早く庭に出て先生とは一定の距離を保ちながらついていく。
「上手くいくといいけど」
「僕に任せとけば大丈夫だ」
「先生のことになると本当に周りが見えなくなるよな」
「それはこのハウスの全員に言えることだ」
明日、原因を突き止める。もし、先生や皆に危険が迫っているのなら何をしてでも止めなくてはいけない。
ダズ兄さんもナーナももうすぐ家を出て働きに行くだろう。そうしたら、このハウスの責任者は僕になるのだ。しっかりしないといけない。