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先生はいつも庭の真ん中に立っていた。長いときは数時間も。そんな先生を見て、ダズ兄さんがサプライズ作ったのだ。
「先生、こっち来て!」
「ダズ兄さんが呼んでる!」
「にーにすごいんだよー」
下の子達に手を引かれて歩いていく先生の後ろをついていく。あの時の僕はまだ話すことに慣れておらず、先生の後ろを勝手に付いて回っていた。
「わ、そんなに引っ張らないで。ちゃんと付いていきますよ」
何事かと進む先生はそれを目にした瞬間キラキラと輝いた。揶揄なんかではなく本当に先生の周りが明るくなり、光がキラキラと舞っていたのだ。
誰に言っても信じて貰えず「そんな訳ないじゃん。先生が魔法使いだったらありえるけど」とナーナに言われた。
それからは誰にも言っていなかったが、どうしてかエルに話してしまっていた。
「へぇー、先生は本当に魔法使いかもしれないな。だってオレに触ってくれた時も暖かくて体の痛みが消えたから」
茶化すわけでもなく信じてくれた。
「オレも先生のキラキラ見てみたいな」
そう言ったエルの笑顔もキラキラして見えた。
「今度、二人で先生に何かプレゼントしよう!」
「それ、良いな!」
「明日二人で街に行こうぜ!何か良いものあるかも」
エルの手を引っ張り走り出す。
先生に明日、街に降りていいか聞いてみよう。
エルにも何か買ってやろう。細身でガリガリだから美味しい食べ物でも食べさせてやろう。
「あ、アラン」
「ナーナ」
「こら、姉さんつけろ馬鹿」
玄関から丁度ナーナが出てきた。
「掃除は終わったから、先生のとこに行ってきな」
「うん」
「んで、そっちがエルね」
「あぁ、こいつがエル。エル、これナーナ」
「これって何だ馬鹿。エル、私はナーナ、よろしくね」
「うわ、ナーナが笑ったー」
「私だって笑うわよ!ねぇ、この子…」
ナーナが怪訝な顔で僕のとなりを指差した。
そういえば、さっきからエルの声がしていない。
「エル?」
隣を見てみるとエルがナーナの顔をボーッと見ていた。
「エル、大丈夫?」
ナーナが心配そうにエルの顔を覗き混むと、彼の顔は一瞬で赤くなった。
「おい、エル!!」
「はっ!」
強く肩を揺すってやるとやっと僕の声に気付いた。
「あ、あの!オレ、エ、エ、エルエルでぇす!」
「クスクス、エルエルって」
「はぁ?!大丈夫かよ、エル。ナーナのババァだぞ」
「アランは可愛げがないよね、本当」
わざとらしく僕に溜め息をついたナーナは「よろしくね、早く先生の所に行ってきな」と僕の頭に軽く手をのせてから庭の方に歩いていった。
エルが羨ましそうにこちらを見ていたが無視した。
僕も最初はナーナを好きだった、らしいが、僕には覚えがない。彼女と過ごすうちに本当の姉のように思えてきて、その好きは形を変えた。
こいつもすぐにナーナの凶悪さに気付いて打ち砕かれるだろう。
僕の頭を見つめ、触ってこようとしたエルをかわして先生の所へ走った。