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RuiN-花の咲く音-  作者: みづき
三部
14/21

4

このままでは死んでしまう。

水も食べ物も何日も口にしていない。感覚も鈍くなっているし、とても疲れた。


だけど、何もせずには死ねない。

何処にいるか分からないけれど、お姉さんを見つけてあげたい。一人は寂しいから。おばさんの様にしたくないから。


立ち上がるのもやっとだ。ふらふらして思うように前に進めない。それでも一歩ずつ外へ向かう。

久しぶりにテントの外に出た気がする。建物の影になって暗いけれど、空を見上げると青空が広がっていた。それだねで眩しい。


思えば、一人でここを歩くのははじめてだ。

おばさんがいた頃は何度か外に出たけれど、いつも誰かといた。新鮮だ。


道が分からない。あてもなく、ゆっくりと、壁をつたいながら歩く。どこへ行けばいいのか。

歩いても歩いても似たような風景がある。オレはどこにも行けないのだろうか。


「お姉ちゃん!」


声が聞こえた。霞む視界でその声のする方を見てみる。


「もう、手を離さないでって言っているでしょ!」


明るい。そこには光が見えた。最後の力を振り絞ってそこへ向かう。

とても騒がしい気がするが耳もよく聞こえない。

あと、もうすこし。


壁を支えにしていた手が行き場をなくし、空をかく。そのまま身体ごと横へ倒れてしまった。衝撃だけが身体を遅い、痛みはよく感じなかった。


たちあがれない。


ここは暖かい。路地裏の暗さが嘘のように目の前は光が広がっている。今なら眠れそうだ。


瞼を閉じかけたとき微かに頬に熱を感じた。オレの頬を包み込み、少し撫でてくれる。


お姉さん?


目を動かしてみると誰かがしゃがみこんでいるように見える。ぼやける視界では顔を確認できないが、お姉さんではない。お姉さんよりも大きいその人は何か喋っていた。


ごめんなさい。オレにはもう聞こえない。


瞼を開けているのも限界がきて、この人には悪いけれどもう寝てしまおう。すると、身体が浮いた感覚がした。


おばさんが言っていたのを思い出した。「私たちが天に行くときは誰にだって神様が遣いをよこしてくれる。天使様が迎えに来てくれるから怖がらなくても良いんだよ。」

あぁ、オレにも神様が遣いをくれたんだ。


それならこわくないね。

空腹少年編おわり。次は記憶喪失少年編はじまります。

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