3
お姉さんの言ったように彼らはこちらに干渉することはなかったが、悪い噂はどんどん広がっていった。
だが、こちらよりも豊かな暮らしをしているせいかオレ達の中から彼のもとへ行くやつが後を絶たず、今では六人になってしまった。
オレはここが気に入っているし、空腹は紛れないがそれでもこの場所に居たいから残っているのだが、お腹の音を鳴らすオレ達をみてお姉さんは「ごめんね、ごめんね」と言うのだ。
「にーちゃ、きょうもねーね、おそいね」
「そうだな」
「ねーちゃん、どこにいるんだー?」
「…」
人数が減ってからお姉さんの帰りが遅くなった。
それに気付いたのは下の二人で、いつ帰ってくるのかと頻繁に聞いては、テントから顔を出しお姉さんの姿を探す。それでも戻ってくる気配はなく、二人は泣き出してしまう。
泣くと体力を使うのか、以前と比べて元気がなくはしゃぐ姿が見られなくなった。
疲れて寝てしまった二人を見て、お姉さんはまた「ごめんね、ごめんね」と謝るが、彼女も彼女でとても疲れている様子をみせている。
それでもオレ達を外には出そうとせず、こっそり外に出て食べ物を皆で調達してきた時があったが後で知ったお姉さんは取り乱してしまい、泣き叫びながら「お願いだからテントの中にいて欲しい」と訴えてきた。
そのせいで寝込んでしまったから、ますますオレ達は外へ出られなくなってしまった。
オレ達はお姉さんを気遣いながら生活するようになった。感情の起伏が激しくなり、ちょっとの一言でも泣いてしまうようになった。
最初は静かに涙を流すだけだったのだが、怒鳴ることも増えていった。
原因が分からないオレ達はお姉さんの顔色を伺いながらいた。そのせいかここを出ていきたがる子供も増えた。
しばらくするとお姉さんが帰ってこなくなった。
まるでおばさんがいなくなったときのように。
その事を覚えていた上のやつら下の子を連れて早々に出ていってしまった。
「ごめんな。けど、こいつらにはもっと生きて欲しいんだ」
「お前もこんな所にいないで早くあいつの所に行った方が良い。」
最後の一人がそう言って出ていくのを見送った。
何日間は置いてあった水でその日を凌いだ。だが、それもいつしか無くなる。
お腹が空いた。
お姉さんは帰ってこないのだろうか。
おばさんの時のように何処かに倒れていたら、可哀想だ。
次で終わり。暗い。暗すぎて息抜き連載はじめたい