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「シリー、疲れていると思うけれど走れる?」
「えぇ、大丈夫よ」
「傷が痛むなら私が抱えるよ」
「ふふふ、そうね、本当に限界が来たらそうして貰おうかな。今は大丈夫よ」
「無理しないで、すぐに言ってね」
手を繋ぎながら道なりに沿って走る。
静かな森に二人の足音だけが聞こえる。
一度も外に出たことがないため、どれだけ行けば人の住む場所に辿り着くのか分からない。
追っ手が来ないとも限らないため、進むしかない。
いくつかの分かれ道を経て空が少し明るくなってきた。
「シリー、少し休もう」
「ハァ、ハァ…でも…」
「この先何があるか分からないから、今のうちに休んでおこう」
「ごめんなさい、ロゼ。そうさせてもらうわ」
呼吸の荒いシリーはいつもより汗をかいている。
ここで休憩させなければ倒れてしまうかもしれない。
道から死角になるがこちらからは道が見える場所を探しそこにシリーを休ませる。
「少し寝てて」
「ロゼは?」
「私は見張りをしているよ。シリーが起きたら少し寝させてもらうから、ほら、疲れているでしょ?横になって」
「ありがとう、少し…寝させて、もらう、わ」
横になってすぐ寝息が聞こえてきた。相当無理をしていたのだろう。ゆっくりと休ませてあげたい。
もう少し村から離れなければ、まだ安心はできない。
「私の方こそ、ありがとう、シリー」
日が登り少し経つがこの道を通る人影はない。
耳をすませても鳥の鳴き声しか聞こえない。
このまま進んでも人の住む所に辿り着けるのだろうか。いくつか道を戻り、違う方向へ進むべきか。
地図がないため不安が膨らむ。
村を出る直前にどこかの家から地図を持ってくれば良かった。
一人になると色々と考えてしまう。希望を持ちたいが、マイナスの事しか思い浮かばない。
そのせいか、近付いてくる気配に気付くのが遅れた。
ガサ
「っ?!」
ガサガサ
「シリー…シリー、起きて!」
大きく彼女を揺すり起こす。眠りが深いせいでなかなか起きない。
そうしている間も気配はこちらに迫ってきている。
「シリー!!起きて!!」
「ん、ぅん…どーしたの、ロゼ」
「何かがこっちに来てる」
完全に覚醒していない彼女を背に庇い、近づく気配を迎える。
ガサ ガサガサ
来た。
「誰だ!!」
「お前ら…」
そこに居たのはマントを被った、声からして男だ。
シリーを守るために私は男に向かっていった。
次回から少し時間が進み空腹少年編にいきます