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三四 ハッキング

ここはすみませんが、イラストなしっす



三四 ハッキング



「おい、危ねぇだろ!」


 魁地が真理望の後を追う。

 真理望はそんな彼に構わず、エンバッシュの残骸へと走る。そして、そこに落ちている端末を拾い上げた。


「やっぱり、これだわ――」

「何やってんだ。早く逃げろ!」

 魁地は彼女を抱きかかえると、慌てて皆の所に戻った。


「一体、どうしたんだよ真理望。危険だろぉが!」

「それより、ちょっとこれ見て」


 それはどこにでもある手の平程度の携帯端末だが、裏には結線された丸い有機的な物体があった。それはまるで、蜘蛛が巣をかけて貼り付いているかのようだ。


「あ、それ……」

 霧生には見覚えがあった。結浜のデータベースにその画像があったのを思い出す。

「石人の心臓ね」


 端末モニタには、起動中のデータ通信用アプリケーションに出力されたランダムな数値やテキストデータが表示されている。

 それを見るなり、真理望は自分の端末を取り出し、通信会社にハッキングしてエンバッシュの通信履歴を調べ始めた。


「……やっぱり。エンバッシュは、この端末で大量のデータを送信しているみたい。たぶん裏にくっついてる気持ち悪い装置でデコードされたデータね。信司が言っていた、フェルベアードとのアクセスルートをつなぐために仮想構築されたコマンドラインインターフェースよ。エンバッシュは、これを使ってあいつのプログラムを改変したのね」


 真理望はさらに通信会社のデータベースサーバにハッキングして二台間の通信データを吸い上げる。


「これが実際にエンバッシュがフェルベアードに送信したデータよ。独自のアルゴリズムで作られているから意味は分からないけど、ここにアーティファクトのコマンドラインが含まれているはず。……ひょっとしたら、いけるかもしれない」


「やばい、動き出したぞ!」

 積み重なった瓦礫が押し退かれて、フェルベアードの腕が出てきた。そこから光が拡散し、周囲の大きな鉄材をばらばらに切断して、彼は埋もれていた体を再び魁地らの眼前に現す。


「かぁっ、まだもう一匹いたとはね。次から次へと邪魔しやがって。全く面倒な奴らだ。もう飽きたから、全部終わりにしようぜ」

 フェルベアードの両腕から閃光刀が出現する。彼はそれを振り回して障害物を切り刻みながら、子犬を連れて散歩をするように、ゆっくりと直進してくる。


「真理望、よく理解できねぇけど、何か策があるんだな? 俺が時間を稼ぐ。霧生、いくぞ!」

「分かりました!」


 魁地はバトルモードをフルセットしてフェルベアードに突撃する。すると横から山田が飛んできた。

「俺も行くぜ!」


 彼らはフェルベアードの閃光刀を何とかかわしながら攻撃を仕掛ける。しかし、彼には全くダメージを与えられない。

 二人は徐々にフェルベアードの刀捌きに押され、避け切れずに細かい切り傷を負っていく。そして蹴りを喰らって倒れた山田に飛び上がったフェルベアードが刀を振り下ろす。


 その時、辺りを包み込む強烈な光と共に爆音が鳴り響いた。

 中空のフェルベアードを突然爆発が襲う。彼は勢い良く弾き飛ばされるが、空中で旋回して体勢を整えて着地した。


「おっさん、ナイス!」

「正直今のは危険だった。爆発に巻き込む恐れがあるから援護射撃には向いてないんだよ」結浜は額の汗を拭いながら言った。


 真理望は出力された大量のバイナリーデータを睨む。彼女は、それがアセンブリの実行コードとそれ以外に分かれていることに気付き、一定の変換ルールを適用してデコードした。


「きっとこれがコマンドラインよ。ここで変換スクリプトが実行されて、端末から強制実行されている。信司、これ見て何か分かる?」


 信司は中空パネルをスクロールしてデータを徐々に溯る。そこに表示されたデータは独自のアセンブラーを使用しているようで、彼にも詳細は理解できない。だが、定型化された文や命令の繰り返しから、ある程度の予想はついた。そしてルートオブジェクトを強制配信したと思われるコマンドラインを見つけた。


「たぶん、この部分がアイツのコアにアクセスする命令です。独自のプロトコルで動いているので直接停止命令を打つことはできませんが、エンバッシュが最期にセキュリティーロックを解除したようなので、これを繰り返し再送信し続ければ、一時的に奴のコア機能を止められると思います」

「コアを止められる時間は?」

「ビジー回避の割り込みが入るでしょうから、たぶん十秒程度です」


 真理望は、横で眠ったように座っている霧生の手を握った。ルーナーの隙間から汗が垂れ落ち、戦いの疲労が伝わる。


「霧生さん、聞こえる?」


 霧生は、魁地がフェルベアードの攻撃を受けて一時退避したところを見計らって、リンクを解いた。そして真理望に頷く。

 続いて真理望は結浜と華凛を呼んだ。


「今からアイツに強制アクセスして機能を一時的に止めるわ。時間は十秒。フェルベアードを倒すにはそこしかチャンスがないわ。結浜先生も協力してください」

 そして、真理望は彼らに作戦を伝える。


「分かりました。合図をお願いします」霧生が応える。


「君は大した子だよ。正直私のパートは正確性に難があるから不安もあるが、他に手もなかろう。異論はない、従う」結浜はそう言いながら、頭部に装置をセットする。

 そして、霧生はルーナーを起動して、ノーマルモードで山田と戦っている魁地に再度アクセスする。


『多綱くん、音声だけは共有化していたのでリンクで聞こえていたと思いますが、真理望さんの合図があるまで山田くんとアイツを引き付けていてください。そして、合図と共に一気に距離をとって離れてください』


「あ、ああ。分かった……くそっ。こいつっ! おい、山さん、伝言だ――」

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