12月20日:思い出を糧に、死より逃れ
なんもかんもサムライレムナントが悪い
セイバーに飯食わせて犬猫撫でて人間と妖怪から刀のパーツを強奪するのが楽しすぎるのが悪いんです
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皇金剣の隠し玉、刃糧煌剣。
ビィラック曰く、黄金のマグマを用いたことにより素材の力を限界まで引き出したというそれは、鉱石を一つコストにするだけで相当のダメージを叩き出すことができる。それに耐久が殆ど減っていない状態での解禁、威力はほぼ最大値と言っていいだろう。
「…………!!」
直撃した。それもクリーンヒットと言っていい………幕末で人斬りしまくっていれば自然と”会心の一撃”な当たり方が分かるようになる。今の一撃は間違いなく、ガル之瀬に大ダメージを与えたという確信がある。それ以上にガル之瀬の焦燥が致死に近いダメージを叩き出したのだと言葉よりも雄弁に語っている……攻め切るならここしかない!
「悪いが配信映えはあんまりしないぜ!」
大ダメージによって体勢を崩してこそいるが、半裸の俺とは比較にならない程「硬い」鎧姿のガル之瀬は刃糧煌剣の直撃を受けてなお、盾を構えようとしている。VITが高いのか、あるいは大ダメージを受けようとも行動不能にならないような”鍛え方”をしているのか。
とはいえ、体幹が崩れていることに変わりはなく……そして、攻勢に出ているのはこちらだ。
一度使ってしまえば、少なくともこの戦闘中での再利用は不可能に近いリキャストタイムを要求するそれは、しかし圧倒的……もはや絶対的とすら言ってよい破格の一撃。
エクゾーディナリースキル「戦砕琥示」、軽く触れれば巨獣を転がす……過程と真逆の結果を叩き出すパンチ……ではその逆で打つとどうなるか。
「………!」
俺の右手…………何も持っていない右の掌で無を握る。それだけで手は拳となり武器となる。そこにスキルの光が宿ればそれはもう凶手と呼んで差し支え無し!
最大のダメージを狙う必要はない、ただ強く殴る………それで「戦砕琥示」のもう一つの力が発揮される。
普段はあまり使わないが、「戦砕琥示」には「物凄く軽く殴るととんでもないノックバックが発生する」の他にもう一つ………いや、というよりも「パンチの威力で発生する現象が変わる」という一つのスキル故にノックバック偏重の効果とは真逆の効果を出すことができる。
強く殴るほどに、高い威力を……しかしながら、吹き飛ばない。岩を砕き大地を割るほどの威力があったとしても、宙に舞う羽根一つ吹き飛ばせない。
実のところ、これの使い勝手は良いか悪いかで言えば悪いと言わざるを得ない。単純に自分より五倍でかい相手でも怯ませられるノックバックの方が使い勝手がいいからな。
だがこっちにも使い道はある……たとえばこんな風になぁ!!
振りかぶった拳を、これまでのように軽く当てるのではなく思いっきり振り抜く。
ガル之瀬はそれを受けようとしたようだが………悪いがアドバンテージはこっちが握っている! 腕を避けて胸部に一撃叩き込めばパリィなんざ関係ねーだろ!!
拳に金属を殴る感触。だが拳が金属鎧に負けていないという確信。
肩や腰に捻りを入れた大振りの一撃を食らったにも関わらず、まるで一時停止したかのようにガル之瀬は動かない。転ぶ事もなければ、よろめく事もない。
だが、
「何…!?」
衝撃の無い、しかしモーション相応のダメージだけが伝わる。それは即ち、敵の位置情報をその場に留め続けたままダメージだけを伝えられるということ。
「圏内だろ」
「!!」
俺の言葉にガル之瀬が嫌なところを突かれたとばかりに表情を歪める。食いしばりは使わせた、あとはトドメを刺すだけ!!
「終わりだ!」
型も理もあったもんじゃない喧嘩キック、それで十分だった。
ガル之瀬の身体から力が抜け、その身体が崩れていく。流石に降伏勧告をするだけの余裕はなかった、悪いな配信者……アーカイブは保存しなくていいと思うぜ。
「───」
喧嘩キックを正面から受け、仰向けに倒れていくガル之瀬。その身体が地面に横たわるよりも前にその身体人の形を維持できなくなったかのように黒い煙のような粒子に消えて………
「ん?」
───その疑問が生じた"瞬間"と、黒い煙がガル之瀬の形になってメイスを振りかぶって迫ってきた"瞬間"はほぼ同時だった。
「は───!?」
咄嗟に回避できたのは、何のゲームの経験が活きたか。ともあれ、初撃は避けた………だが、まるで影のようにあるいは背後霊のようにメイスと同じ軌道で続く二つの半透明なメイスの幽霊もどきが俺の身体を掠った。
「……隠し球は誰だって用意して然るべきだろう?」
「やってくれる……!!」
距離を離そうとバックステップを入れるが、ガル之瀬はそれを逃してはくれない。
奴のビルドは恐らく行動範囲を限界まで縮める代わりに1、いや多く見積もって半径2メートル圏内を高速で詰め寄るガン盾アタッカー!
こちらの後退にそれ以上の速度で迫るタワーシールド、流石にそれは死ねる───
「どちくしょうめ!!」
「は!?」
苦し紛れの悪あがき、だが成功したならそれは立派な奇策と言い張れる。これには完全に俺の不意をついたガル之瀬もびっくり……何せ俺もできるとは思ってなかったからな。
「ふっ………最大速度は走り方を問わない」
「………いや、流石にキモいぞ」
「誰のせいだと思ってんだ!!」
いやはや、まさかブリッジした状態で超光速が使えたとは。
とはいえ、事態は一気に俺が不利に持ち込まれた。
───食いしばりを使わされた。




