12月19日:機機会敵
焠がる大赤翅戦を書いてた時に息抜きで先に書いてたルスト視点がようやく日の目を浴びた……というわけで連続更新です
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「…………いいね、とてもいい」
戦いの嚆矢となった一撃、サードレマ大公城より放たれた長距離射撃が描いた光の直線が薄れ消えていくのを眺めながらルストはぽつりとつぶやいた。ルスト自身が耳につけたインカムからそれを為したモルドの声が鳴る。
『ルスト。敵チームは”前情報”通りなら八人、ただ後々乱入することも考えるとあくまでも最低数で考えた方が良い』
「………了解。座標は?」
『待って、今ソナーの解析中………うん、その近辺に三人いる。ガルトン武具店裏口、第三大通り、あと第五下水道。僕の方は補足した別の三機を足止めしておく』
「………別に、仕留めてもいいよ?」
『ワンショットエスケープが今回のコンセプトだから、程々かな』
「………嘘ばっか」
『あはは……』
裏方に回ったモルドは、前線を張るよりも殺傷力が高い。それはネフィリム・ホロウのプレイヤーであれば常識のようなものであるし、ルストにとってはより深い意味を持つ。
戦術機を操作するための専用装備、特殊強化装甲「カラーパレット」のヘルメット越しにサードレマの街並みを眺めながら歩くルストは視界に小さく映ったそれを確認し、インベントリアを操作する。
「………まずは様子見………なーんて、ね」
ルストは斥候兵ではない。敵が本拠地に攻めて来たというのならば、それはもう防衛線であり決戦なのだ。そしてルストが今持てる情熱を六分割して生み出した六機六色のルストシリーズは斥候に使うには………少々、強すぎる。
「………挨拶は派手にしないと、ね………展開、【黄梁一粋】」
敵は配信戦線の中でも屈指の市街戦巧者にして、魔法と神秘からは程遠い鉄鋼火炎の戦闘に精通するGUN!GUN!傭兵団。であるならばこの戦いは彼ら自身によって配信されているだろう………ならば、この戦いは世界に向けた発言の場でもある。世界は言い過ぎでも少なくとも日本全国には。
『I’m Ready.』
僅かに宙に浮くようにして格納空間から転送され、情報が実体の質量を得たことで石畳の上に重厚な音を立てて着地したそれは不思議な物体であった。例えるなら、亀の甲羅を球体にしたようなあるいは小さな板を何枚も使って球体を作ったかのような。
「………装着」
『OK.』
どうやら、敵もルストに気づいたようだ。市街地に合わせたのか、サードレマの街並みと同じカラーリングの戦術機がライフルを構え、射撃する。狙うはもちろんルスト本体………だがその弾丸はルストの左腕に命中し、しかしガキンと硬い音を立てて弾かれた。
「………実弾、中々渋いチョイス」
人間程度であれば握りつぶしたトマトの如く粉砕できるであろう弾丸を弾いたルストの左腕は、変形した球体によって一回り巨大な鎧に覆われていた。とはいえ、その姿は人間に盾を何枚もくっつけたような鎧と言うには異質すぎる姿であったが、一歩進むたびに盾の集合体がルストの身体を包み込んでいく。
そうして、全身を装甲の形をした盾が覆い尽くして最後に重厚な靴の如き脚部装甲が装着された事で戦術機【黄梁一粋】の装着が完了した瞬間………魔力の光が黄色い盾甲の機人を十センチほど地面から浮かび上がらせる。
「………戦闘開始」
再び放たれる弾丸、今度は連射。しかしそれが黄梁一粋に命中するよりも早く、黄色い奇妙な鎧が動いた。
『ちょ、速ッ…!?』
スラスターを噴かしてはいる、ホバーで移動してもいる。だがその両方が併さった事で起きている現象はホバー移動だとかそんな生易しいものではない。機体は前傾姿勢、その手には展開した奇妙な形をした銃器をさらに不自然な持ち方に。足を前に出すたびに加速するその姿は哀れな被害者第一号……GUN!GUN!傭兵団のメンバーであり普段は”フォックストロット”のフォネティックコードを担当する「フィグ@GGMC」の目にはアイスホッケー選手のように見えた。
「………熱烈歓迎」
『おぐぅ!?』
銃身を握り、銃床で打撃する。まさしくアイスホッケーの如き棍の一撃がフィグが纏う戦術機「GGMC:アサルトフォックス」の脛を打ち据え、掬い上げた。潤沢な助走距離とそれに比例して加速された滑走から繰り出されたショットガンによる殴打は如何に重厚な戦術機装備状態といえど足元を掬われるには十分すぎる。そして人間に強化装甲を着せ、さらにその上から機巧の塊を被せた戦術機は一度バランスを崩せばあらかじめ覚悟でもしていなければ踏ん張ることは難しく。
『なんかヤバいロボがいる! 黄色くて、滑って───』
「………ネフィリム・ホロウ2を宜しく。できれば配信してほしい、歓迎する」
『なんの宣伝?!』
まるで棒術の如く華麗に散弾棍銃を反転させ、転倒した敵戦術機へと銃口を突き付けた黄梁一粋はズゴン!! と至近距離から発砲。放たれた散弾がGGMC:アサルトフォックスの全身をくまなく叩き据え打ち砕く。
散弾というものは短射程広範囲の弾丸、と思われがちだがそれは大きな勘違いである。現実の散弾銃ですらその射程は50メートル、その威力は人間を容易くミンチに変えてしまう。如何にゲームとしてバランス調整がされているとて………触れるほどの至近距離から中に人の入った装甲を射撃すればそのダメージはあまりにも大きい。
足を掬われた際の打撃によるダメージに加え、至近距離からのショットガン。さらに確実に仕留めるべく二射目も叩き込まれたことで、GGMC:アサルトフォックス内のフィグ@GGMCの体力が全損する。
「………まずは一人」
王国騒乱中の特別ルールに則り、ギリギリ原型を留めているものの動かなくなった戦術機だけ遺して消えたフィグ@GGMCから視線を外したルストは次の獲物を求めて動き出す。
その傍らには、”黒い”三角錐───
ルストのメンタルボルテージはもう止まらない……!
頑張れGUN!GUN!傭兵団!!負けるなGUN!GUN!傭兵団!!
なお今のルストはエナドリを摂取したサンラクと同じくらいのテンションです
・RS:Ο【黄梁一粋】
全身装甲を取り払い、代わりにシールドを取り付けることでコスト軽減を実現した高機動”盾甲”ボールメン。
散弾銃棍をメイン武装とすることで中・近距離をメインレンジとし、外部衝撃に対して盾甲「正面」から受け止めることで高い防御能力を実現している。
ホバー移動は重装甲のタイプメンに多く見られる機動手段であるが、限界まで重量軽減に成功したこの機体のホバー移動はスピードスケートに近く、地上移動速度に関しては【殲顎緋砕】以上の驚異的機動力を誇る。
Q.要するに?
A.ものすごい勢いで滑走してくるアイスホッケー選手みたいな全身に盾をくっつけた黄色い戦術機が思いっきり鈍器で殴りつけてくるしショットガンで確実に殺しに来る。
ちなみに「RS:Ο」は「ルストシリーズ:ボールメン」の略




