12月16日:答えは殺すのではなく、打ち破ったが故に
◆
「こういうのって「ドラゴンスレイヤー」が定番じゃないの? なんでドラゴンバスター?」
「俺に聞かれてもなァ」
トマホークは死んだ、だがモンスターと言えど誇り高い死に様だった。こういう自分たちしか知らない強敵の最期、ってのはちょっと燃えるものがある。凍結した左腕を肩ごと引きちぎって振り回してきたときは流石に肝が冷えたが……あんな最期を見せられたら、愛着が湧いちゃうってもんだぜ。
「で、問題の討伐報酬だが……まさかそもそも素材アイテムが落ちないとは」
「とはいえジョブと装備強化ですからね、リターンはでかいですよこれは……徹夜の価値がありました」
現在12月16日、午前6時半……ほとんど一晩中戦っていた計算になる。このゲーム確か人数でモンスターの強さがあんまり変わらないんじゃなかったか? つまりトマホークはこの場にいるメンバー総出で戦い続けて一晩かかるようなモンスターだったわけだ………それもうほぼレイドモンスターじゃねーの?
「ていうかジョブで思い出した、サバイバアルお前メインジョブ【仇討人】じゃないだろ」
「おうよ、今のメインは戦王だな………その様子じゃお前、最上位職業転職クエストやってねぇんだろ」
転職………あー、あのなんか、化粧したなんかを倒せとかいう。
「仇討人の最上位職業……多分お前の【死者の剣】だったか? そっちも俺が発生させた【復讐の剣】と同じで、サブに設定してもメインと同じ効果を維持するジョブだぜ」
「は、マジ?」
このゲームのジョブシステムはメインとサブの二つがある。基本的に上位以上のジョブは他の職業にはない固有の技能・特典が備わっており(例えば仇討人なら専用スキルの獲得)、これはメインに装備した時のみ効果が発動する。
サブジョブはなんていうかな………言うなれば「補正」だけが得られる。例えば俺が【剣聖】のジョブをサブにセットしたとしても、サイガ-100のように剣を縦横無尽に操ることは出来ない、せいぜい剣技系のスキルが覚えやすくなるくらいだろう。
そして職業【仇討人】はこれをメインに設定していなければ、仇討人としてギルドで活動することが出来ない。これは「頭領」から聞いたので間違いない。
今の俺は【蹴撃術士】をサブにつけているが………正直に言えば、別にこのジョブにはそこまで執着していない。補正は惜しいが何度も何度も反復練習してスキルを覚える、という性質上……やり方は大体覚えた。多分今ならシステム補正無しでもナイフくらいなら蹴って飛ばせる。
あれ、やってて分かったんだけど設定的な意味での「スキル」が適用されるのは投げた武器を蹴った瞬間なんだよな。つまり上に投げて落ちて来たのを蹴り飛ばすまではモーション補正の範囲内だ。
DEX……まさかお前、人権パラメータだったのか? いや腐ってるパラメータ存在しないわ、一番軽視されがちなLUCですら食いしばりの確定保証のために100まで上げるのがベターなわけだし。VIT君は……その、ごめん。縁がなかった、一緒にリュカオーンに復讐しようぜ……せーのっ、おのれリュカオーン。
「お前はやたらにユニークに関わってるから変に優先順位付けるのが良かねぇな。俺なんか最初に試験を見た時点でもうクリア最優先くらいの気持ちだったぜ」
「ジョブの内容は?」
「おおよそ仇討人の単純上位互換って感じだがちと条件付きになる………いや、そうだな」
何故かいきなり話すことをやめたサバイバアルはにやり、と悪そうな笑みを浮かべると……こう言いやがった。
「そういうのは自分で見るもんだよなぁ? 先に誰かからネタバレされるんじゃなくてよ」
「………言うじゃねーか」
そう言われると、そう言ってきた俺は返す言葉が無い。
まぁ条件が提示されて、それに挑戦する制限もないのであればさっさと挑んでクリアすればいいだけの話だ。というか延々と話が脇道にそれ続けていたな………そう、ジョブだ。ジョブの話だ。
十番目の真なる竜種トマホーク……いいや、「想い託す半身」なる、なにやら詩的な本名を持つ想い託す半身君が勝利者たる俺達に遺したものは、素材アイテムではなく………”権利”と”変化”だった。
まず一つ目、それはとある職業に就くための権利だ。
その名も【真竜討滅者】、なんとも香ばしい香り漂う職業名だが取得条件が真なる竜種の討伐というだけあって、性能は高い。十中八九隠し最上位職業だ。
性能を一言で説明すると……「廉価版勇者」だろうか。とある武器を運用している時のみ真価を発揮する職業で、そのとある武器が破損すると職業ではなく称号に代わってしまう、という結構きつい縛りを課せられているだけあって【剣聖】や【賢者】……下手をすればレイ氏のなんとかドラグーンにも負けない強さを持っている。
就職条件はとある武器を持っていること、そしてこの「とある武器」は戦闘に参加したプレイヤーであればほぼ確実に持っているものだ。なにせ………
「竜滅装備。サンラク、僕は今猛烈に感動しているよ………神代製銃火器にも適用されるなんて!!」
「それはよかったね」
「ひゃっほう!!!」
狂喜乱舞するヤシロバードが握るスナイパーライフル。本人の言う通り神代の技術で作られたそれは、現在少々特徴的な状態になっていた。科学文明特有の雰囲気はどこへやら、まるで………そう、まるでトマホークの素材を使って作成されたかのようなデザインに変質していたのだから。
真なる竜種は生き物であって生き物じゃない受肉概念なので「殺害」じゃなくて「破壊」なんですね
・【復讐の剣】
人の「悪」は法と義が裁くことができる。だが人ならざる獣に人の法を説いてなんになる? 飢えた獣が義によって本能を押さえつけることができるとでも?
故に汝、剣たれ。虐げられし人の想いを使い手とし、悪辣なるモノを悉く討ち滅ぼすべし
要するにカルマ値の高いモンスターを狩る仇討人、生きている被害者から依頼を受けることで対象との戦闘に補正がかかる
では「死者の剣」とは? それは去りし者の想いを継ぐ刃に他ならない
近く2021年06月17日、コミカライズ版シャングリラ・フロンティアの四巻が発売されます!
今回の特装版は編集氏に無茶振りしたらまさかの成功判定で返してきたのでまさかの公認で「クトゥルフ神話TRPG」を題材にしております
そこそこCoCにハマってたのですが、本格的にリプレイを書いたのは初めてなのでお手柔らかに……まぁ長くなって上下編にしていいか、ってさらに無茶振りをしたので硬梨菜は申し訳なさでいっぱいなのです
それを差し引いても漫画部分は全編通して不二先生の手によってシャンフロの世界が完璧に出力されていますので手に取って後悔することはありません
是非ともよろしくお願いします




