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道に迷わずとも人生に迷う

さてなるほど、いきなり脳味噌パラリラな感じのビィラックから聞いた話を脳内でまとめ上げ、その上で……とりあえず放置することにした。


こういう時に脇道に逸れると無限に戻って来れなくなる、人はそれをサブクエ迷宮現象と言う。

サブクエをクリアするために向かった場所でさらにサブクエ発生、クリアしたら実は続き物でさらに……という多重構造に囚われた時、人は二度とメインシナリオに戻って来れなくなるとされる……そう、つまり俺も迷宮に片足突っ込みかけていたというわけだ危ない危ない。


そもそも真なる竜種がなんなのか分からんのに樹海に突っ込んだって良くてブラザー悪くてブラザーとのエンカウントしかないぜ……兄弟、まだまだ強さの上限が見えてない疑惑があるらしく。

ここまで来ると本当に討伐可能なのか怪しくなってくるなあいつ、もはやプレイヤーの力ではどうなもならない領域に足を突っ込んでいるのでは。


「さて……悪いなビィラック、その真なるドラゴンとやらに興味は尽きないが俺も俺で多忙な身で……」


「そうけ。ああ、あとこれを渡しとけと親父から言われとったわ」


ゴソゴソと何かを取り出したビィラックがその渡すものとやらをこちらへと放り投げる。なんだこれ、懐中時計? いや違うな、時計の針じゃないなこれ……羅針盤(コンパス)かこれ?


「何コレ」


「ん、「航陸者(トラベラー)」じゃ」


「なるほど分かった。で、何コレ?」


「じゃから「航陸者(トラベラー)」じゃと」


「よし分かった、で、何コレ?」


(無言でハンマーを振りかぶるビィラック)


(無言で迎撃体勢になる俺)


「なんべん言わすつもりじゃアホがーっ!!」


「名前以外を聞いてるんだろうがダボがーっ!!」


トラベラーだか鉄ベラだか知らんが名前だけ言われてどうしろってんだ馬鹿が! さっきの怪電波がまだ抜けてないのか!?


「それは「航陸者(トラベラー)」じゃ。屋外で使用すりゃ作ったモンが決めた場所への方角を示しよる」


「作った奴……って言うと、」


「親父じゃ、よう見てみぃ」


んー? 見た目はただの羅針盤だと思うが………あぁ、装飾の方を見ろ? ええっと………

化粧具(コンパクト)のような航陸者を閉じれば、恐ろしく精緻な金細工で描かれた兎と炎のような何らかの文字(・・・・・・)のエンブレム。コレは見たことがある、というか見飽きるほどに見ているもの……即ちラビッツの紋章だ。


「そりゃあワリャの所属を示すモンじゃ。道案内以上に、ワリャがラビッツ(ウチ)のモンじゃと示すためのもんじゃろう」


「所属証明か………誰に?」


「それが示す場所に集まる奴らにじゃ」


金槌を元あった場所に戻し、溶けた壁を恨めしげに眺めながらビィラックは言葉を続ける。


「ええかサンラク、これが示す先は新大陸じゃ。新大陸にゃあ親父を頭に子分杯を交わした奴らがおるんじゃ」


「そ……」


それなんて極道?


「あれじゃ、ワリャも覚えがあるじゃろう。ケット・シーも子分杯を交わした種族の一つじゃ」


「ケット・シー……あー、なるほど」


なんとなく見えてきた、要するに新大陸のそんなに強くない種族の連合みたいなもんがあるんだろう。それも人語が話せるタイプの小動物系だろうか。新大陸にも一応存在する、みたいな話をどっかで聞いた気がする……【ライブラリ】のプレイヤーだったっけ、違うプレイヤーだったかもしれないがまぁさして重要でもないか。


「要するに小動物の集まりがあるので道案内はしてやるから来い、と」


「そげんことじゃろうな、親父が動いちょる………時が近いってことじゃ」


「時?」


溶けた壁を見ていたビィラックがこちらへと視線を向ける。その目は怒りでもなく、悲しみでもなく……なにか、俺を見ているようで全く別のものを見ているような、無機質なようで悟っているようで。少なくとも普段のそれとは明確に異なる何とも言えない眼差しであった。


「開拓者サンラク、大きな風が吹こうとしちょる。大地を捲り、海を呑む大きな風が……わち等は、いんや親父はそれに勝つために在る(・・)。エムルん奴が姿を見せんのもそれに関係しちゅうわけじゃ……じゃから」


「ビィラック」


「……なんじゃ」


なにか難しい思わせぶりな話をしたいらしいが、残念ながら俺も……いいや、開拓者ってのはどいつもこいつも半端な気持ちで命をかけてる奴らばっかりなんだぜ? 真面目な口調で話したって「なんかのフラグ踏んだか?」程度でしかない。


「俺達は追い風で吹っ飛ばされようが向い風に薙ぎ倒されようが何度だって走っていく馬鹿の集まりだぜ」


「………」


「風だろうが大怪獣(・・・)だろうがドンと来いってな」


仮に大怪獣が出現したとしても今のプレイヤーならそこそこ勝てそうというか、本気で周回すれば戦術機運用で巨大モンスターでも勝てそうな気がするんだよな。まぁこのゲーム楽に勝たせる気サラサラないと言うか、下手したら編隊組んで近づいたら範囲攻撃、みたいなデザインのモンスターとか普通に出しそうなんだよなぁ……


「……まぁええか、威勢はデカくて困ることもありゃあせん。それにわちのやることも変わらんしのう」


「そうそう、とりあえず黄金のマグマは持ってきたんだから武器を作ってくれって話ですよ」


「わぁーったわぁーった、全く………」


しっしっ、と手を振って出て行けと示すビィラック。炉にのそのそと近く辺り、どうやら作業を始めてくれるらしい。全く……随分と長ったらしい会話イベントだったなぁ。そこそこ重要なワードは出てたけど八回くらいスキップしたい気分だった、どうせワールドストーリー的にまずゴルドゥニーネだろ? いや、どうなんだっけ……ユニークモンスターって別に順番とかないんだっけ? いやでもジークヴルムとか強制イベントっぽかったけど……


「ゴルドゥニーネやって……黄金のマグマ、は入手したけどどうせならもっと数を……いやその為にバケツの量産を……あーでも真なる竜とか言うのを探して……いやでも仇討人関連も……………」


えー、あー、んー…………




このゲームで何すればいいんだ俺?



小動物サミットは別に無所属でも敵意さえなければ参加可能

サンラクの場合は「こいつはラビッツ所属です」と立ち位置が固定されてるだけ

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― 新着の感想 ―
サンラクとビィラックの絡み好きよ
あのー兄貴を殺さなくしたのお前なの自覚してる?
在るって言い方が気になるよな
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