混ざらぬを混ぜて、混じって
とんでもねぇマーケティングをしてもらったので頑張って書き上げました
駄目だ、話が進まない。
もはやこの場所そのものが真面目という概念に対する天敵と化してしまった。そもそもが幼女先生と股割れ大根先輩を着せ替えるために集まったような連中なので幼女先生が降臨した時点でバカの集団がさらにバカになってしまった。
さらに言えば俺も俺で幼女先生の教え子ムーブしちゃったのでシリアスもクソもない、第一印象を唯一保ってるのが余計な事を言わなかったウィンプってどういう事なんだよ。いや幼女先生にパシられるムーブこそ見せていたがその幼女先生が本気出したらこの場にいる全員最速でキルできるお人なのでセーフ。
「さて…………俺も俺でそろそろログアウトしないとだし、その前にちゃちゃっと質問しちまおう。そこの蛇二人!」
「っ」
「な、何ヨ」
陰気そうなゴルドゥニーネと高飛車そうなゴルドゥニーネが俺へと視線を向ける。不安、疑念、敵意……うーん、素晴らしく警戒されているな。
「敵対するか、それとも協力するか。そのまま突っ立っていたっていつか龍蛇を連れたそっくりさんに抹殺されるだけだ、俺やウィンプは棒立ちのまま殺されてやるつもりはないが背中から刺されるのも勘弁だ」
幕末? あれは背中向ける方が悪いから………加害者が天と被害者に責任押し付けてくるの、第三者視点で見ると本当ゴミみたいな民度なんだけどこれが適合すると楽しいんだよマジで………
「だからここで決めろ。俺と敵対するのか、ウィンプと手を組むのか………制限時間は十五秒」
「短っ!!」
一秒も一年も未来から振り返れば同じ一瞬だよコーヒー牛乳ちゃん。
さぁハリーアップハリーアップ、十五秒あれば幼女先生なら一皿空にするぜ。理論上、超越速を使いながらであれば凄まじい速度での空腹と超越的な速度による早食いで永遠に食べていられるらしい……ちょっと見てみたいがこの喫茶店の貯蓄が尽き果てるのでやめてくれとマスターに言われては仕方がない。
「えーと、えーと……ニーネちゃんはどうしたいの?」
「どうシろってのヨぉ………分かッた! 分カったワよ戦ワナい! そレでイイでショ王我星!」
ゴルドゥニーネだからニーネちゃん? イイ名前じゃん、少なくともウィンプよりはずっとずっとマシな名前だ。
「さぁ、時間はいつだって等速で前に進む猪野郎だ、十五秒経ったぞ」
「…………」
「お嬢様………」
おじょうさま。なんだか随分と倒錯的なご関係のようで……ていうか鞭にヒールに、つまりそういうことなのか? え、このゲームでその関係性って成立するもんなの? 小学生もいるんですよ!?
俺の中でシユー氏の評価が変な方向に捻じ曲がり始めた中で、お嬢様と呼ばれたゴルドゥニーネが胡乱げな眼差しで俺と、ウィンプを睨み付ける。
「そッチが裏切らナいと、誰が保証スルのかしラねぇ?」
「へぇ、お前は信じようとするんだな」
「っ!!」
「勘違いしてるぜお嬢さん、信頼は求めちゃいない。欲しいのは信用だ」
双方向に向いた絆が欲しいわけじゃない。下手をすればあのゴルドゥニーネを倒す倒さない関係なく最後の一人になるまで殺しあう可能性だってある。欲しいのは俺たちも敵対しないからそっちも背中から刺してくれるなよ、という確証だ。
「あのゴルドゥニーネは強大な存在だ。プレイヤー二人は……その様子だとエンカウントはしたことないっぽいか」
「サン、サンラク、さんっ! その、あのゴルドゥニーネってなんなんですか?」
「んー、リニア新幹線ってわかる?」
「知ってる! ジョーシキよぅ!」
「あれよりちょっとデカいくらいの蛇を四匹連れたボスキャラみたいなゴルドゥニーネがいるんだよね、しかもめっちゃ人間嫌い」
人間以外も基本的に嫌ってそうな感じだったけど、少なくともウィンプやそこのニーネちゃんのように話して仲良くなれるようなタマではない。仮に話を聞いたとしてもそれは言語としてじゃなくて断末魔の鳴き声として聞いているだけだろう。
「だから協力……いや、協力しないとしても少なくとも俺達で敵対しないようにしようぜ、ってこと」
「へー……ニーネちゃん、知ってた?」
「当然デしょ……私達は皆、アレかラ逃げテきたノ」
アレは無理だよなぁ……本体が普通にスーパーアーマーついてる疑惑あるし、毒攻撃が普通にクソ性能だから直撃したらレイ氏クラスの頑強さでも動きが鈍る。戦るなら万全の装備と万全の環境が必要だ、内ゲバしながら挑むような相手ではないだろう。
「さぁ、答えを聞こう」
「…………イいでショう。手を出サないナラ、こちラモ手ヲ出さなイ」
Perfect negotiation……俺の天才的な交渉センスがまたしても証明されてしまったな……半分脅迫な気がしなくもないが、半分脅迫なくらいにしておかないとウチのドヘタレの化けの皮が剥がれてしまう。
「一応聞くけど不可侵だけ? それとも協力路線?」
「……ハッ」
あらやだ、鼻で笑われちゃったわアテクシ。やんのかコラ、腕力で危害を加えるだけが暴力だと思ったら大間違いだぞ。
「サバイバアル、ゴー」
「よう兄弟……サンラクの奴と不可侵ってんなら実質俺達は兄弟だ」
「………は? あの、ちょっとどういう意味なのか……」
どうやらシユー氏と兄弟の関係になる事で新たなアルビノ爬虫類要素美少女とお近づきになるのを狙っているらしい。ファーストインプレッションが支離滅裂すぎて初手で目論みが崩れている気がしなくもないが。
ほうらお嬢さん、この場で一番恐ろしいのは俺やウィンプではなく幼女先生でもない。性癖ゾンビと化した着せ替え隊の滲み出る気持ち悪さにのたうち回るがいい……蛇だけにな……っ!!
「サバさんと兄弟なら実質俺達も兄弟ってことになるわけだ……」
「家族になろう……」
「つまりお嬢様の下僕なんですよ我々……」
「やっぱその鞭ってそういう事なの? 服脱ぐわ」
「僕もう脱いだ」
早朝からフルスロットルだなこいつら、救いようがねぇ。
「は、離れナさイ! ナンなのヨこいツら! くっ……離レろ!!」
「ありがとうございますっ!! ありがとうございますっ!!」
「オ前もシユーと同ジかっ!!」
「「えっ」」
そんなわけで俺の腹いせによって解き放たれた性癖ゾンビに絡まれたお嬢様とシユー氏を尻目に俺は……えっ、待って今なんて?
「……いや、聞かなかった事にしよう」
どっかの変態みたいに自分からカミングアウトするようなアホでないのなら、そして実害がないのであるなら他人の性癖はそっとしておいた方がいい。NPCによって性癖を暴露されたシユー氏に黙祷しつつ、俺はログアウトの準備を進める。
「おいウィンプ」
「なによ」
声を潜め、他のゴルドゥニーネ達に聞こえないように警告する。
「サイナを置いておく、一応だけど暫くは身の回りに気を付けておけ」
「う……」
「いいか? サミーちゃんさんの近くから離れるなよ? 勝手に外を出歩くな、知らない人についていくな」
「わたしをなんだとおもってるのよ!」
「逆に聞くけどお前自分のことなんだと思ってるんだ、せめてボロを出すな。なんでここで働いてるかって聞かれたら無言でニヤリと笑っておけ」
なんか俺だけ別方面で難易度高くない? そこそこウィンプもレベル高いはずなんだけど、強くなってるのサミーちゃんさんだけなんだよなぁ……
◇
「私も、学校に行かなくちゃっ」
王我星にとってこの十数分は、突如として発生した夢のようなエンカウントだった。
有名人との出会い、学校の同級生にも内緒にしているユニークシナリオEXの進行。そして何よりも王我星達は不可侵ではなく協力を申し出た事であの最大速度とフレンドになることが出来た。
「どうしよう……もう自慢しちゃおうかな」
自分の兄が最前線のプレイヤーである事を自慢するいけすかない男子も、裏で大男のアバターを使う王我星を笑う女子も。その両方をそろそろ見返したいという欲求と秘密にしておきたい欲求の板挟みになっている王我星……そしてそれをヒいた目で見つめるニーネ。
「あのぉー……」
「え?」
「ちょっと、いいですかぁ?」
と、王我星のものでもニーネのものでもない声が、明確に王我星へと投げかけられた。振り向けば虚空、しかし視点を少し下に向ければ、そこには一人の女プレイヤーが恐る恐るといった様子で王我星を見上げていた。
「……誰?」
「その子、ゴルドゥニーネちゃん……だよね? ね?」
「!!!」
「あぁ、待って待って! 別に襲うとかそんな事しないからぁ! 信じて! ね!」
ニーネというNPCは用心深い。それ故に己と同じ「ゴルドゥニーネ」がこの前線拠点にいると発覚した事で喫茶店から出た時点でフードを目深に被っていた。
だというのに、眼下にいる緑髪の女はどこか媚びるような目を向けながらニーネの正体を看破した。当然そんな相手に歓迎の意思を見せるはずもなく、警戒心を露わにしたニーネに対して女は自分が敵意を持っていない事を過剰なまでにアピールする。
「実は、ね? 私も「ゴルドゥニーネ」のお友達がいて、ね?」
「あなたも?」
「そうなの、でも私はちょぉーっと、あのお店には入れなくてぇ……」
───だから、まずは貴女と仲良くなりたくて。
にへら、と笑みを浮かべて女は自身の頭上を指差しながら王我星へと自己紹介する。
「私、ヒイラギって言うんだぁ……宜しく、ね?」
邪悪。
あと小ネタだけど王我星のクラスメイトが自慢する「トッププレイヤーの兄」はリベなんとか




