愚かな平穏に技は朽ち錆びる
巨人族秘蔵の地図によって目指すべき場所は既にマッピングされている。更に出身地が沼地であるNPCラダー氏の案内で効率的に通過できる観点から見ても俺たちが通るべきルートは樹海南西から沼地を通って火山に向かうルートだ。
この地図の通りであれば新大陸は東側こそ大部分が樹海に覆われているが途中から一気に環境が多様化する。沼地を超えた先にある大河を越えれば火山に到着するってわけだ。
と、そんなわけでこれまで多くのプレイヤーを阻んできた大樹海を進む俺達であったが………ここでパーティの内訳を思い出して欲しい。
「悪いな、俺は直角に曲がりながら加速できる」
最大速度の俺と。
「追加のモンスター、です……! 私、一人で対処できますから任せてください……!」
最大火力のレイ氏と。
「前線が頼りになりすぎて出番ねぇな、甦機装以外の修理なら出来るから存分に戦え〜」
「一応構えてるんで多少死にかけても問題ないですよ〜」
勇者武器の持ち主二人である。
ラダー氏もそこそこ強い部類のNPCだがエムルと違ってレベル100の壁を超えていない、つまり後方待機一択なのだがそれを差し引いてもメンバーが豪華すぎる。
普段は耐久力が減らない代わりに火力補正はそうでもない傑剣への憧焉終刃や傑剣への憧刃を基本運用としているが、修理要員がいるので多少手荒く耐久値を削っても火力高めの武器を使うことができる。具体的に言うとアラドヴァルをぶん投げられる。
そもそも樹海に出現するモンスターの大半は色竜ウィルスで竜化したモンスターだ、つまり色竜特攻の灼熱を持つアラドヴァルはこと樹海において恐ろしく強いのだ。
咆哮を上げて突っ込んできた獣竜……今や我が兄弟とそのパチモンに並んで樹海の顔になりつつあるサラブレッドトリケラトプス君の変則的なステップを絡めた突進に対して、さらに変則的なステップで翻弄。竜を焼き断つ黒い刃がトリケラ部分の角に食い込む。
既に幾度となく溶け刻まれた角に致命的なダメージが入り、悲鳴と共に奴の角が宙を舞う。はいごっつぁん。
「さて……」
レベル150、レイ氏ですら未だ辿りついていない前人未踏の最高レベル。そんな身体で戦ってみた感想だが………マジでクソだ。
あの日、オルケストラから「退場」した俺の前に現れた人間なのか亡霊なのかそれ以外なのかよくわからないNPC「覚醒の導師アーカヌム」から宣告された神秘の反転………逆位置となった「愚者」は当たり前というかなんというか、その効果を全く別のものへと変質させていた。
逆位置とは正反対、すなわち………「リキャストタイム二倍化」「回復量二倍化」「スリップダメージ半減」というものに。
成る程、一見すればむしろ強化されているのではないかと思うだろう。これまで糞乱数の影に怯えながら使っていた回復アイテムが確定成功に戻り、効果量が二倍に増えたのだから恩恵の方が大きいように見える。スリップダメージの半減もDOTの性質を鑑みれば仮に状態異常になっても生存時間が単純計算で二倍になるわけだし。
だがリキャストタイムの二倍化、これだけはだめだ。前述のメリットを加味してもあまりにも俺というプレイヤーにとって致命傷に過ぎる。
「…………どうすっかな、これ」
現在の俺のステータスはこのようになっている。
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PN:サンラク
LV:150
JOB:仇討人(二刀流使い)
SUB:逆位置「愚者」
868,656マーニ
HP(体力):100
MP(魔力):200
STM (スタミナ):250(125)
STR(筋力):250
DEX(器用):220
AGI(敏捷):300
TEC(技量):210
VIT(耐久力):1(240)(1)
LUC(幸運):400
スキル
・虹光の斬閃
・光差す輝道
・重律超越
・星海飛脚
・韋駄天権現
・ディオーネーの神助
・アブレイズ・アドバンスドエール
・リミット・アセンション
・覚醒己律
・アウトレイジ・エッジ
・火蓋斬り
・リミットブレイク・レェス
・睡神の永撃
・ハーキュリー・ストライク
・帝釈天化身
・武身極威
・剣舞【輪廻】
・仁王屹立
・ヴィス・ユガ
・永劫の眼
・王神の銀腕
・勝利の神撃Lv.1
・幻日と幻月の狼影
・震烈の衝撃
・スピリット・オブ・ガーディアン
・冥土地平
・ストラトゥム・バスター
・全武全能
・スペリオル・フォース
・運命の眼
・運命躱し
・必勝の先触れ
・盾士の憤撃
──【到達技能】──
・一威専心
十秒間に1ヒットのみヒット数を付与する攻撃の性能アップ
・多極彩心
十秒間に5ヒット以上のヒット数を付与する攻撃の性能アップ
・完全視界
視力に補正
・征存本能
体力が5%以内になった時、STR、AGI、LUCの中からランダムに補正
・全霊捧武
攻撃スキルの性能アップ
・一輝討千
ソロプレイ時、Mobを一体倒す毎にHPが一定時間回復し、スタミナの減少量が半減する
──【不世出の奥義】──
戦砕琥示
皇金時代
──【致命武技】──
・致命秘奥【ウツロウミカガミ】改備
・致命秘奥【タチキリワカチ】改備
──【晴天流】──
【風】
・晴天流「疾風」
・晴天流「斬風」
・晴天流「旋風」
・晴天流「廻風」
・晴天流「轟風」
・晴天流「爆風」
【雷】
・晴天流「雷鳴」
・晴天流「雷霆」
・晴天流「迫雷」
・晴天流「撃雷」
・晴天流「貫雷」
・晴天流「裂雷」
【波】
・晴天流「荒波」
・晴天流「波濤」
・晴天流「防波」
・晴天流「波旬」
・晴天流「引波」
・晴天流「波乱」
【空】
・晴天流「暮叫」
・晴天流「蒼然」
【雲】
・晴天流「浮雲」
・晴天流「渦巻雲」
・晴天流「螺雲」
・晴天流「叢雲」
【熱】
・晴天流「噴炎」
【灰】
・晴天流「灰流」
──【マクセル・ドッジアーツ】──
・多重的円周運動
・螺旋的確保挙動
・副次的防衛挙動
・相対的立体運動
──【仇討の流儀】──
・仇討の観察眼
・仇討の宣誓
・仇討の引導撃
装備
右:アラドヴァル・リビルド
左:無し
頭:|ラヴィ・ラビィ・イヤー(VIT+120)
胴:リュカオーンの刻傷
腰:ラヴィ・ラビィ・テール(VIT+120)
足:リュカオーンの刻傷
アクセサリー:格納鍵インベントリア
アクセサリー:格納鍵インベントリア
アクセサリー:封雷の撃鉄・災
アクセサリー: 兇嵐帝痕・極
アクセサリー:水晶蠍人形(MPリジェネ + HP回復時別枠回復)
アクセサリー:烈砲百足人形(状態異常超耐性:毒 + STM補正)
アクセサリー:要塞女王蜘蛛人形(耐衝撃:中 + VIT補正)
アクセサリー:燕尾羽衣
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もう文字からスキルの内容を読み取るのが不可能になってきたレベルのネーミングセンスだが重要なのはそこではない、地味に晴天流辺りのUIが見易くなっているのはありがたいがそこでもない。重要なのは…………三桁スキルのさらにその先であるレベル150スキルは大抵2パターンに分けられるということだ。
すなわち、リキャストがそこそこ長いか、リキャストが恐ろしく長いか。
ただでさえスキルがほぼ一新されて新しく動きやリキャストタイムを覚え直さないといけないってのに、ここにきてのリキャストタイム2倍という仕打ちだ。もはや不世出の奥義なんて一戦闘に一回しか使えないような状態になっているし、一番回転率が高いスキルでさえこれまでが通常から半減で今が通常の2倍だから………………あー、少なくともリキャストタイム1倍で戦っているプレイヤーよりも更に酷い実質4倍増加の体感で戦うことになるわけで。
「参った」
更に参ったことがあるとすれば…………そう、忘れがちだが神秘はジョブでありアイテムでもあるという妙な性質を持つ。試しに逆位置となった「愚者」を外せるか試したところ、なんと外すことができたのだが…………逆位置の効果は装備、非装備を問わず永続するらしい。つまり今モンスターと戦ってみてわかった。
「神秘」イベントは最優先でクリアしなければならない一大事だということが、だ。
・アクセサリー:要塞女王蜘蛛人形
かすり傷で発生する怯み程度なら完全無効化する耐衝撃:中に加えて肉体VITの半分をステータス追加するという地味にとんでもない効果が付与された人形、多分タンクスレに投下すると狂乱の祭りが開催される。まぁこの先の環境でかすり傷で済ませられるなら苦労はないけど大抵は肉体が多少頑丈になったところですり潰されるよねっていう。あと地味に嵩張る。
・アクセサリー:燕尾羽衣
何故かラビッツに売っていた燕尾服のように見える羽衣、若干体重が軽くなるというメリットなのかよく分からない効果を備えているがウサ耳とウサ尻尾に恐ろしくマッチする見た目だったので十中八九おしゃれアクセサリーであるとサンラクは結論づけた。
体重が0.8倍にするモンスター素材、という意味のヤバさに気づくことはない………




