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鏡面に響け、摩天より吼えろ 其の三

無尽臓マザー・グース。

軽自動車サイズのガチョウは他のモンスター達が割と活発に動き回っている中で、そいつは大樹のうろ(・・)にひっそりと隠れていた。軽自動車サイズの鳥が隠れている木なのでやけに目立っていたが……いやまさかドンピシャとは。


しかしこのガチョウ、戦闘態勢に入った瞬間にケツ……いや総排泄孔? からマシンガンのような勢いで爆速産卵をおっぱじめやがった。

雑に地面に叩きつけられた卵が割れ、中から既に戦闘準備を終えた雛鳥が飛び出してはこちらへと襲い来る……成る程、見た目の割に中々厄介な性質だ。マシンガンの如く産卵するということはマシンガンの如く雛が生まれて襲ってくるということだ。


ミツバチはスクラムを組んでスズメバチに対抗する、一羽一羽は大したことない敵だが囲んで殴れば雛鳥の大群はプレイヤーの一人や二人は簡単につつき殺す(・・・・・)事ができる。

雛鳥は単体では雑魚だが群れる事で潜在的な脅威度はレベル150オーバーのモンスターにも匹敵すると言えるだろう。群体型のモンスターとしてオーソドックスな性能をしつつも供給が止まらないという一点に於いてこいつは生態系の頂点に位置しているのだろう。





だがマザー・グースには3つの不幸があった。

まず一つ目、それは怒涛の産卵能力の代償として本体の性能が著しく低い。産卵にエネルギーだけではなく挙動の大半も持っていかれているためか、奴はほとんど動く事ができない。


二つ目、雛鳥の耐久度が低いということ。確かに雛鳥が津波の如く襲いかかってくるのは脅威だが……当然、雛鳥の嘴が通じない相手を倒す為にはそれなりの手間と時間がかかる。そしてその嘴の通じない相手はただ突っ立ってるわけじゃない。


そして三つ目。


「雑魚が」「大量に」「いち戦闘中に出現する」……条件は満たされた。奴は最悪の相性ゲーを引き当ててしまったのだ、全部まとめてつみれ団子にしてやるからかかってこいやァ!!!









「フハハハハハハハ!! 破壊衝動が満たされていくゥーっ!!!」


R.I.P.と別離なく死を憶ふの半永久虐殺コンボに加え、封雷の撃鉄・災による触るな危険状態、そして過剰伝達を使わない代わりに回転力を得る事でより無双パワーを強める兇嵐帝痕・極による大回転……俺は今、津波の如く迫る雛鳥の大群に対して秒間10キルのオーバーキル・ジェノサイドで対抗していた。


「頼むぞエタゼロ! 雑魚は任せろ!!」


「任された! 援護頼むぜ先生方!!」


無尽臓マザー・グースの物量戦に対する俺達の戦法は至ってシンプル。

単独で雑魚の虐殺ができる俺が雛鳥を引きつけ、その間に磐斎氏とキョージュの援護を受けたエタゼロが本体を叩くというものだった。


そして今、別離なく死を憶ふをフルスイングしてキルスコアを稼ぎつつ、雛鳥に群がられて削られるダメージ量をそれ以上の回復量で相殺しながら雛鳥津波と拮抗している俺を囮として親鳥たる本体へと突っ込むエタゼロは……なんというか、あまり見た事のないタイプの戦法を使っていた。


「ガチョウだか七面鳥だか知らねえが、俺にとってはカモ(・・)だぜマザー・グース!!」


エタゼロは何も握ってはいない、所謂徒手空拳……というわけでもない。オイカッツォみたいな無装備の素手ではなく格闘武器を装備している。だがそれでも素手に見えてしまう理由はただ一つ、その拳があまりにも防具たる鎧とマッチしてるからだ。

一見すれば鎧の一部にしか見えないそれは武器というカテゴリでありながら特定の防具との同時運用を前提としているから……言うなればレイ氏の剣と鎧のようにセットで真価を発揮するもの。


では武器を持たない重戦士の甲冑が繰り出す「技」とは何か。


重装角力(フルアームドレッスル)!!」


轟と全身の捻りを加えて振り抜かれた鎧の二の腕部分が巨大ガチョウの首に直撃、基礎スペックが低めの頸椎と支援強化を存分に受けた一撃の拮抗はそう長くは続かず……


「おおぉ! 「タロス・ラリアット」ォ!!!」


ガチョウの首に炸裂した重量級のラリアットが軽自動車クラスの巨体を吹っ飛ばすという冗談みたいなノックバックを実現……これがエタゼロのバトルスタイル、距離にして1メートルという極めて狭いレンジに限定した瞬発力で人外の存在に格闘戦を挑む闘士(グラディエーター)系統隠しユニークジョブ「鎧闘士(アームドレスラー)」によるファンタジープロレス(・・・・・・・・・・)である。


使用スキルのほとんどにノックバック効果が付与されるとかいうとんでもないジョブだが、代わりに取得条件がダル過ぎるとは本人の談だが……それを差し引いてもただでさえ濃ゆいエタゼロのキャラがさらに濃くなる活躍っぷりだ。

マザー・グースの性能が低いが故にサンドバッグに出来るのも理由の一つだろう……何せ本来迎撃に回る筈の雛鳥は群れると刻傷の強者判定に引っかかるらしく、その殆どがこっちに流れてくる。そして多少つつかれた所で全身鎧のエタゼロにとってはカスダメにすらならない訳で。


「オラオラどしたぁ! まだまだ攻撃は続くぞカモ野郎!!」


延髄斬りにエルボー、まんまプロレス技を巨大ガチョウにしかけていく重装甲のおしゃぶり咥えたレスラー……ダメだ、頭痛くなってきた。


「チッ、プロレスが見えねーだろうがつみれの材料共が!!」


どうも追い詰められると産卵速度が上がってくるらしく先程から俺は殆ど埋まっている状態に近いのだが、貪る大赤依戦をも凌駕するキルスコアの溜まりっぷりでR.I.P.も別離なく死を憶ふ(メメント・モリ)もフルスロットルで効果を発動し続けている……通常の半裸状態だったら既に三十回は死んでそうだ。


「キョージュ! 後何分だ!!」


「十分! いや九分だ!!」


「トばせエタゼロ! ロスタイムは認められないだろうからなぁ!!」


「応よ!!」


もはや素手でも雛鳥を粉砕できる程の強化倍率、エタゼロの奴がプロレスなら見せてやるぜ俺のルチャ・リブレ! そんな詳しいわけじゃないが三羽纏めて砕け散れパターダ・コン・ヒーロ!!



……


…………


………………



『ああ、愛しき我が子達。身一つで世界に投げ出されながらも貴方達は力を得て私のもとに戻ってきました。そして今……学び、培い、この箱庭の頂点に立ちました』


最終的に俺とエタゼロによる双方向ラリアット(クロス・ボンバー)を食らった無尽臓マザー・グースが斃れ、母と命を共有していたらしい雛鳥達もまた砕け散り……どうやらキョージュ達の考察は正しかったらしく、「象牙」がその姿を現した。


『貴方達人類はかつて、万物の中で最も長じた存在として霊長の名を掲げていました。ですがこの星で敗北した彼らは滅び……しかし貴方達次世代の人類を遺しました』


「象牙」の言葉は揺り籠に眠る赤子に語りかけるように優しく、それでいて独り立ちする若者に語りかけるような寂しさも混じっていて。


『人類が「霊長」の名を再び掲げる事……それが私の切なる願い。どうか人の可能性を見せてくださいね』


「だが時には赤子のように母に甘えたっていい……そうだろう? ママ」


真面目な会話中に笑かすのやめて貰えますゥー?

鎧闘士(アームドレスラー)

旧大陸に存在する全ての闘技場で開催される

対人、対モンスター全てで優勝し、さらにNPCの「スポンサー」を得る事で解放される最上位職業にして隠しジョブ。このジョブを解放すると鎧とセット運用で装備可能な「闘拳」武器を装備可能になる。

この闘拳カテゴリは対応する鎧と同時使用する事で拳のみならず足や全身を使った攻撃にも補正が乗る。


重装角力(フルアームドレッスル)」はダメージ倍率が際立って高いわけではないが全てのスキルに大なり小なりノックバックが付与されている為、恐ろしく有能……に、思えるが三人以上で同じ敵を相手に戦うとノックバック倍率が低下する上に、ソロだと吹っ飛ばして自分の射程からも外れてしまうという少々トリッキーな技だったりする(二人ならギリギリ許される、それならタッグマッチだからね)

あとスポンサーになったNPCの商会で何かを買う時に特典がつく、地味にお得なジョブ


ちなみに鎧闘士に就職すると闘技場に出場した時にリングネームで呼ばれるようになる(自分で設定可能)

エターナルゼロのリングネームは「ベイビーハート」

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― 新着の感想 ―
メメント無双楽しいけど、なんか致命魂削られそう。
ブレないエタゼロ氏好きすぎる
>R.I.P.と別離なく死を憶ふの半永久虐殺コンボに加え~津波の如く迫る雛鳥の大群に対して秒間10キルのオーバーキル・ジェノサイドで対抗していた。 ジェノサイドで現れる本家出てきたら本物vs偽物っぽい…
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