新たなる歴史の創造者
シャンフロ書いててここまでニッコニコ笑いながら書いた話もそうそうないですよってくらい笑いながら書いてました
「くっ、なんだあの茨イソギンチャク……!!」
「いえ、恐らくイソギンチャクではなく茨に擬態した群体系の虫モンスターではないかと。ふふふ、私に任せてください」
「お、おう」
敵ボスの正体を看破したレイ氏が自軍に指示を出し、そこまで上等なAIではないからこそ逆に躊躇いのない動きでボス「茨の王ロゼル」へと百合乙女達が突撃していく。
「私の見立てによればあのモンスターには攻撃の瞬間に弱点が露出します、であれば少々リスキーではありますがノックバックの確信をもってすれば求められるべきはそう……突撃」
「え、あ、はい」
ヤバい、バグって何か別の挙動し始めたキャラみたいだ。あのほら、システム上は女キャラがいるべき場所になぜか男キャラがいるせいで女の動きをするおっさんみたいな……使ったはいいが日の目を浴びることなく消えていく個人Modみたいだな。
「我々プレイヤーには戦闘力は無い、しかしながらヘイトを集めるタンクとして役割は辛うじて果たすことは出来る」
「そだね」
「であればあとはプレイヤーの手腕、注意を引きつつも狙われない限界を───」
「あ、そこは致死圏内」
やたら饒舌なまま攻撃範囲に足を踏み入れたレイ氏の手を掴んで引き戻す、次の瞬間には待ってましたと言わんばかりに茨の鞭……いや、見れば分かるのだが鞭の先端に何か幼虫っぽい顔が付いているので恐らく芋虫か毛虫の群体と思われるボスの一部が叩きつけられる。
「大丈夫?」
「───ふっ……ありがとう、サンラク君。助かりました」
「え、あ、うん」
なんだこの……ええと、うーん。なんだろう……あと少しで思い出せそうなんだが。
「全軍、突撃。敵を討ち倒し道を切り開くのです!!」
「あ、成る程」
わかった、なんか京極っぽいんだ。それも幕末で比較的調子に乗ってる時のなんかアホっぽいキラキラエフェクトが出てそうな京極。大抵数秒後には有志によって天誅されるので目撃の確率が地味にレアっていう。
ゲームがゲームなら粘着扱いされても文句の言えない連中だが、こと幕末に限っては復讐相手が勝手にくっついてきてくれるラッキーな扱いとなる。粘着レイドボスさんは流石にどうしようもないが。
「あー、信徒達。正面からはあっちの軍団が受け持ってくれてるから二手に分かれて左右から敵を挟撃しろ。弱点ではなく触手を狙え、アレ放置するとまずい系だろ」
「「「「神の仰せのままに!!」」」」
うん、頑張れー……あ、一人食われた、信徒ーっ!!
うちの信徒は団体行動に秀でるが個々のパワーはレイ氏の百合乙女軍団には劣る。なので一人二人死んだところでいちいち気にしちゃいられない、将とは……帥とは時に合理のために非情な選択をしなければならぬのだ。あ、また一人死んだ。信徒ーっ!!
「これ以上の犠牲は看過出来ません、覚悟の刻です……!!」
おほーっ! スペクリ時代の思い出が何故だかぬるめの熱となって喉と目頭を焼いてくるぜーっ!
まずい、今レイ氏は歴史を作っている……いや、どうなんだろう? 現在進行形の京極が人生楽しそうなら大丈夫なのか?
「お、死んだ」
「やりましたね、サンラク君……完勝とは言い難く、しかし死んでいった者達が無駄ではない勝利です」
「お、そうだな」
俺の見間違いじゃなければ今から二人ほど生贄に捧げないといけないっぽいんですがね。
身体は暖まるが血の気は引くような焚火の燃料はどうしたものか……ん? 軍団の中にレイ氏が気になってる奴がいるな……こちらへの信奉が減ってる。成る程。
これマルチで組むとNPCの奪い合いが発生するな?
「よし、君と君で」
信者にあらずんば庇護に値せず、俺は俺を愛する者だけを愛するのだ……よーし我が愛しき信者どもよ、離反者を拘束しろ! 不純を焼いて浄化されるのだ! なんなら焼ける時に出てくる煙で燻製肉でも作ってやろうか? 遺灰ダイヤモンドみたいな……む、ダメだな思考がデベリオンに汚染されてきた。
「サンラク君、ここは半々で出すべきでは……」
「あー、気にしなくていいよ。なんか裏切りそうなキャラだったし」
悲鳴を上げて芋虫の盛り合わせと一緒に焼けていく信者二人を尻目に、俺はさりげなくレイ氏を誘導してボスエリアを離脱する。うわぁ、なんか後ろから俺への恨み言が聞こえる………すまん、ソロなら追伸まで聞いてもいいんだがレイ氏もいるので無視するわ。
「どうせベータ版はここまでだし戻ろうかレイ氏」
「はい……ふふ、なんだかエスコートされてるみたいですね」
くっ、ナチュラルに気取った台詞を言いおってからにこの人は……あとで悶えても知らんぞ。だが言われっぱなしも性に合わない。
「それではお嬢さん、お手を拝借」
「んぐっひゅ…………え、ええ、喜んで?」
くっ、なんか今日のレイ氏はやたら強気だな……サイガ-100みたいだ。何故かレイ氏の手を取りながら俺達は二層へと戻るのだった………
とりあえずクラウドファンディングの画面が邪魔! いつになったら消えるんだこれ!!
……
…………
サンラクとサイガ-0がデスゲーム・リベリオン・オンラインで合流してからちょうど三時間後。
…………
……
◇
「 」
全ての感情が振り切った先にあるものは虚無、ただそれだけ。枕に顔を埋め、布団にうつ伏せで突っ伏した玲はどこかクリアな思考でそう悟っていた。
「んひゅひっ」
時折、フラッシュバックが起きるのかビクン! と痙攣したりプルプルと震えている姿は、なんの偶然かほんの数時間前にサンラクと共に倒した茨の王ロゼルを構築する茨芋虫のようで───
(渾身のキメ顔でサンラクに向けた言動の数々が蘇る音)
「ほあああああああああっ!!?!?」
冷静になるべく参考にした対象が間違いだった、何故よりにもよって姉と親戚を参考にしてしまったのか、何故それを躊躇う事がなかったのか、何故、何故、何故! というか明日この状態で会う事になるのか、一緒に登校しなければいいだけだがそれはそれで嫌だ!!
様々な感情が体内で暴れ狂う。口からは奇声として、全身から魚のような動きとして出力されるそれらは斎賀 玲の人生において初めての「黒歴史」である。
と、
「玲、何事ですか玲」
「あ……仙姉さん。いえ、その何でもないです」
「玲、致す事を咎めはしませんが家人や近所の事を慮って……あふんっ」
「〜〜〜〜っ!!!!」
斎賀 玲はこの日人生初めて、実の姉に本気の殺意を込めて枕をぶん投げた。
・斎賀 玲(理想)
楽郎を前にしても物怖じせずちゃんと同じ視線、同じ立ち位置で並んで歩けるような立派な女性
・斎賀 玲(現実)
参考にしたのがカップ麺姉としなびたほうれん草であった為に「さも当然なようにキザな台詞を吐きながら誰よりもノリノリで味方を鼓舞し、見れば分かる事を名推理のように指摘する」というなんかアレな感じになった。玲が心の奥底で親戚をどう思っているのか何となく窺える暴走形態である




