その刃に積み重ねてきたもの
アラドヴァルが生み出す非物質性の槍は槍のくせに範囲攻撃で貫通力が弱いというギャグみたいな性能をしているが、逆に言えばたった一本のアラドヴァルでド派手な範囲攻撃をぶちかませるという事だ。
派手ということは目立つということ、目立つということは気を引くということ! すなわちヘイトコントロール!! 力技だけどな。
「燃えろ灼熱! 隻腕がなんだ、食らいつく権利に手足の本数は関係ないだろうが!!」
もう何度目とも分からない加速、夜空を照らす煌々たる火焔を携えて前へ前へ。ヘイ皇帝陛下、久しぶりに俺に注目してくれて嬉しいよ……今からでも遅くない、俺たちは親友になれる。だから武器自慢勝負と洒落込もうぜ?
アラドヴァル必殺の「ブリューナク」は範囲攻撃ではあるが穂先の着弾が前提だ、どちらにせよ100%の威力を出す為には望ましい部位に叩きつける必要がある。
毛布か何かで右腕を巻いたかのような籠る熱がアラドヴァルから右腕全体へと広がっている、ちらと視線を向ければ右腕がなんか物理的に燃えていた……え、大丈夫なのこれ?
前に使った時はそんなの気にしてる暇がなかったけど実はあの時もスリップダメージが発生していたとかないよな? いや大丈夫、燃えてるだけでダメージはない。アラドヴァルは刃に触れると使い手でも遠慮なく焼くからな……調子に乗って刃をぺろぺろすると焼肉になる。だがまぁ問題ないと言うなら、
「よっしゃあ!!」
燃えろ闘魂! その過程で腕が焦げてもしゃーなしだ!!
既に発射準備は完了している。巨大な穂先を宿したかつて槍だった剣を携えて駆け抜ける姿に"皇金世代"の意識は釘付けだ。あくまでも「聖剣」は温存するつもりのようだが剣鋏による脅威の排除に乗り出してきたな、馬鹿が! 二時間三時間も戦ってればいい加減慣れるし見切れる!!
剣鋏の動きはどちらかというとロボットアームのそれに近い、なまじ200度くらいまで回転させられるからこそ奴の動きは関節の可動域に頼った動きが多い。つまり普通の生物のように腕を動かしながら関節を動かす、みたいな動きをそこまで多用しない。
であればこんな動きもできるんだよなぁ!!
俄然エースの風格が出てきたマクセル・ドッジアーツ! 多重的円周運動!! あえて敵に背を向けての垂直90度、サマーソルトとでも言うべき縦の円を描いて"皇金世代"の背中へと着地!!
知ってるんだぜ、水晶群蠍系列の中でもタイマンで戦う性質を持つ種類が背中に飛び乗られた場合に取る行動はたった一つ!!
「すまんサイナ! 覚悟を決めて歯を食いしばれ!!」
「問題ありません……きっとこれも、勇気なのでしょう?」
「いやどう考えても蛮勇ーっ!!」
「…………………………超電圧溶断剣、起動」
周囲を薙ぎ払うためではなく、振り落とすための大回転。如何に高性能の知性を持っていたとしても絶対に抗えない反応型のモーション、そして何度も闘ってきたから分かる……攻撃としての大回転と振り落としとしての大回転では尻尾に当たった時のダメージ量に差がある。
つまり、攻撃に身を晒すよりかはずっと賭け甲斐がある。
「実行:尾部の切断」
クラスVIII武装「超電圧溶断剣」は超ざっくり説明すると棒から電気の刃が発生してる馬鹿でかい大剣だ。なにやら複数のガジェットで無理矢理スイングする仕組みなのかサイナの膂力でも行使可能な代わりに、極めてシンプルな縦か横かの振り抜きしかできない。
一応確認したが構造上そもそも突きは大した威力を出せないらしい……まぁ物質部分はただの棒だしな。
全力で振り下ろした超電圧溶断剣と殺意の薄い横薙ぎの「聖剣」が激突する。やはり威力が甘い、僅かなりともサイナが拮抗できているのが何よりの証拠だ。
「聖剣」の纏う魔力光と超電圧溶断剣の放つ電光が激突して激しい閃光を放つ。サイナめ、若干外したな? 根元を狙えと言ったのに「聖剣」の刃とぶつかっている、だが奴の傷口からそう離れているわけではない、いけるか……?
「……く、推進力、拮抗……不利……限界、迎えます」
バギン、と嫌な音がする。超電圧溶断剣のプラズマエッジを食い破った「聖剣」が本体部分を砕く音だ、だがそれは何度かの激突で既に俺とサイナが予測していた事。
クラスVIIIの武装を断ち切り、振り抜かれた「聖剣」はしかしサイナを断ち切ることは無い。剣を振り抜いた段階で前に倒れ込むように伏せていたサイナの頭上を通過した「聖剣」は本体の大回転が勢いを損なうのと同時に緩やかに動きを減衰させ、最後に若干の慣性と遠心力で僅かに尻尾だけを揺らして止ま……
「お忘れじゃないか皇帝陛下! これが真打だっ!!」
如何に"皇金世代"と言えど行動が終了する寸前、たった数秒の隙を潰すまでには至らないようだな! 当然だ、そもそもこいつが大回転した時点で俺は空中ジャンプで退避しているのだから振り落とすもクソもない。そしてサイナという「切り札」を封じたからこそ生じる僅かな間隙……槍で突くには十分過ぎる隙間だ。
「燃えろアラドヴァル! 輝槍仮説第四:……!!」
空中ジャンプの効果が終了、"皇金世代"の背中に再び降りた俺はそれを誇るよりも先に焔槍の穂先を構え、狙いを定める。片腕だからなんだ、流石に数メートル先への照準くらいは合わせられる。
もらうぞ「聖剣」!!
「焼燬!!!」
炎が生み出した巨大な炎、巨人の槍が放たれる。そう大した距離ではないが目標までの空気を貪欲に食らって燃え上がる灼熱が度重なるダメージで無視しきれない亀裂を走らせた「聖剣」……を支える尻尾と針の接続部分に命中する。
敵は竜に非ず、龍でもなく、言ってしまえば石ころの怪物みたいなものだ。だが! 竜鱗を穿つ輝ける槍が水晶を砕けないなんて道理は無い!!
「こちとら英傑武器! 積み重ねた年季が違う!!」
大爆発が視界を埋め尽くし、俺の身体を吹き飛ばす中でパキン、という音がやけにはっきりと聞こえた。体力が60%くらい削れつつも五点着地(五箇所強打ともいう)から体勢を立て直した俺が見たものは、急速に消えゆく爆炎を突き破って宙を舞い、そして地面に突き立った「聖剣」………ひゃほほい!!!
「こんなところにレアアイテムが落ちてるゥーっ!!」
誰が警察に届けるかバーカ! シャンフロに自治厨と衛兵の詰め所はあってもポリスメンは存在しなーい!!!
サンキュー皇帝陛下! ついでに身ぐるみ剥がせて貰うぜ!!
積極的カツアゲスタイル




