竹床の畜生
埼玉県民に贈るエール(翔んで埼玉見ました)
面倒な事になった、というのが正直な感情だ。
強制的に素手で戦うか、あるいは妨害覚悟で武器を振るうか。ボス次第ではあるが仮に素手で倒した方が効率が良かった場合ならまだマシだが……最悪のパターンとして超頑丈なモンスターが出てくるという確率の方が高い。
「しかも危険度の判断基準が人間寄りって事は魔法とか道具もアウトっぽいよな」
「試す?」
炸裂グリンピース姉貴、後始末全部自分でやってくれるんです? あのウナギトカゲ、数で来られると結構面倒臭いよ?
無装備状態で人工の山を進む俺達であったが、遠方からちょくちょく聞こえてくる爆発音はどこかのプレイヤーが未だ泳ぐ地雷から逃げている事を指し示している。
「どうするんですか? 助けに行きますか?」
「いや……僕らはタケノコを探そう。最初にサンラク君が遭遇した時もそうだったが、爆泳魚は同胞の爆音にも反応して寄ってくる。つまり今ならある程度は爆破されるリスクを無視してボス戦に入ることが出来る」
「しれっと五人くらい見捨ててないかそれ」
「キョージュの方に他の【ライブラリ】な流れてるのが見えたから向こうもギミックには気づいてそうだね」
つまり五人捨て駒ってことでは……? いや、爆泳魚自体はそこまで強敵というわけではない。よくあるスーサイドタイプに隠密属性をつけるなとは思うが、対処自体は誘爆させられることも考えればそんなに難しくはないはず。
まぁなんだつまり……現在進行形で地雷原で苦しんでる【ライブラリ】がいないパーティの方々は頑張ってくださいとしか。
「秋津茜、ボスモンスターが何か当てようぜ」
「え? えーと……私、あれだと思います! パンダ!!」
「……秋津茜、竹と笹は別の植物なんだぜ」
「へぇー! 初めて知りました!!」
竹と言えば幕末に竹槍使いがいたような。曲がりなりにも江戸時代的文明の中で一人だけ落ち武者狩りみたいな奴だったから記憶に残っている。ランカーを撃破しようとしてたけど最終的に「竹槍のストックがぁ!?」とか叫びながらハイエナ狙い達に袋叩きにされてたっけ……流石に竹槍の対空性能じゃあいつ(↑)の対地攻撃には勝てんよ、素直に花火使え花火。
「見た限り竹林がある様子もなし、やはり山頂にいるのだろうか?」
「冠を被ってるくらいだもの、そうなんじゃないの?」
「だとするとこの画像と矛盾する気がするのだがね……ほら、背景は山頂ではない」
「非アクティブ時は徘徊してるってだけじゃないのか? 今はプレイヤーが中にあるから所定の位置で待機してるって可能性もある」
「確かにこれはあくまでもゲームだからその可能性は高い。ベヒーモスのモンスターはなんらかの制御下にある可能性もほぼ確実と言っていいからね」
であれば山頂を目指すべきか、それとも他のパーティと合流するべきか。結論は……向こうから来た。
「……揺れてます」
「レイ氏、これは……多分そういうことだよな?」
「どういう事ですか?」
「磐斎氏の推測は半分正解で半分間違いって事だ! 向こうから襲いに来たぞ!!」
まさかこれ、爆泳魚を警戒して無装備状態のプレイヤーを優先して……!!
「グォロロロロロロロロ!!!!」
「何よこいつ!?」
「パンダですよ!!」
「鎧を着たパンダなんているわけないだろがーっ!!」
いや確かにパンダに見えないこともないが!! これ完全に漆黒の熊が白い外骨格を纏っている感じのモンスターだ、そして頭頂部からは立派な黒光りのタケノコが……!!
『紹介します、パラサイトテンタクルの変種でありチョバム・グリズリーの変種、その融合体とでも言うべき……ドミネイト・グリズリーです』
「リンリカーーン!!」
融合体って言っちゃったよこいつ!! 完全に邪悪寄りのマッドじゃねーか!!
……ん? いや待てパラサイトテンタクル? 確かラビッツの闘技場でそんな感じのモンスターと戦ったような。
『ドミネイト・グリズリーはパラサイトテンタクルの変種であるパラサイトバンブーのシンキング・ジャック運動を捻じ伏せ、逆に支配した特異個体であり……』
後で聞くからスキップしてもらってもいい!?
ドミネイト・グリズリー……竹熊でいいや、竹熊は最初からフルスロットルといった様子で暴れに暴れている。いきなり突っ込んできたのもあるが、爆泳魚の存在が脳裏にちらつくのか、皆武器や道具を出さずに投げに徹している……ええいじれったい!!
「レイ氏! 最速で仕留めよう!!」
「っ……はい!!」
武器の危険度が魚を引き寄せる? 上等だ餌に食いつく前に焼きタケノコにしてやるよ。
「打撃しろ!!」
兎にも角にもあの外殻を叩き割らないことには斬撃なんて効きやしないだろう、煌蠍の籠手を装備した俺と鉄鞭を装備したレイ氏が前線に飛び出して突貫工事の戦闘態勢を整える。
「秋津茜! 無理に戦闘に参加しなくていい! 魚を警戒しろ!!」
「馬鹿ね、一撃で誘爆させる私の方が適任よ! ドラ姫ちゃんは戦闘に参加して!!」
「はいっ!」
「じゃあ僕は援護に専念するから」
「聖騎士だろ!?」
「いやこれ見た目だけ、完全回復支援特化」
ややこしいわ!!
煌蠍の籠手は肘までを覆う大型のグローブだ、デカいという事は硬くてタフネスという事……竹熊のかさぶた程度、粉砕してやるよ!!
「っしゃあ!!」
小手調べに百秀の神腕の補正を乗せた右拳を竹熊の外殻に叩きつける。手応えあり、ヒビの入った外殻が続く左エルボーで砕け散ったのを見ながら、思ったよりも脆いと続けて……いや違う!
「ぬおお竹槍ィィ!!」
「サンラク君!!」
粉砕した方から露出した毛皮が隆起、肉と皮を突き破って飛び出してきた鋭利な竹……まさしく竹槍をすんでのところで回避する。いや回避できてないなこれ、思いっきり脇腹を抉られてるわ。鈍ったか……?
「回復感謝!!」
「顔面に当てれば他部位がダメージ源でも幾分かは回復するものだ! ソースはウチの検証班!!」
頼りになるぜ考察厨、そして初見で俺を殺しきれなかった事を後悔するがいい!! 二度は当たらんぞ竹熊ァ!!
「きゃっ……うん、ノックバック以外は無視できるダメージ量ですね」
「………」
竹槍が肩に直撃してもなんのそのと攻撃を続けるレイ氏と自分を比較して何も感じなかったといえば嘘になる……はい。
ドミネイト・グリズリー
竹の生えた熊……ではなく、肉体を基点に竹を生やす熊。本来パラサイトテンタクルに寄生された生物は脳味噌をくちゅくちゅされて肉体の主導権を奪われるのが通常であるが、この個体はパラサイトテンタクルの変種であり足を奪わず寄生先の神経系に根を張る事で肉体を強化する共生に近いパラサイトバンブーが優れた外殻生成能力を持つチョバム・グリズリーに寄生したものである
簡単に言うとドーピング竹に寄生された熊が気合で主導権を奪い取って任意で身体から竹槍を生やせるようになった




