我らが旗印は不朽となりて刻まれる
そろそろ本気出す(もう力尽きてる)
◇
とあるクランの話をしよう。
そのクランの名は【フォッシル・マイナーズ】、読んで字の如く化石の採掘者……化石堀りをメインとしたクランであった。
四駆八駆の沼荒野から発掘される化石アイテムを発端として地下への挑戦のためにツルハシ、スコップ、剣を担いで敵陣ど真ん中で化石発掘に勤しむ彼らは多くの発見をした。
例えば朽ち果てた巨大な突撃槍。
例えば下顎が何かに食いちぎられた獣の頭蓋。
例えば発掘され外気に触れたことで覚醒、羽化する不思議な虫型モンスター。
彼らが遭遇した時には「蝉」の姿をしていたそのモンスターはレベル50でありながら当時遭遇したフォッシル・マイナーズのプレイヤー十五人……平均レベル80のうち、実に三分の二である十人をリスポーンさせてようやく討伐された。
一体このモンスターはなんなのだ、かろうじて生き残ったプレイヤー達の前に提示されたのはドロップアイテムの名前ではなく……新発見モンスターの命名権であった。
未発見モンスター。それはプレイヤーによる発見例は片手で数えられるほどに僅かな、名づけられることを待っていたモンスターだ。
このゲームにおいて、殆どのモンスターはNPCによって命名されている。だが今まで発見されることなく、名づけられることもなかったモンスターは稀ではあるが皆無ではない。彼らはその中の一体……環境に応じて成虫としての姿を個体毎に全く別のものへと変質させる神秘の蛹と遭遇したのだった。
リスポーンしたプレイヤー達も戻ってきたところで彼等は相談した、勿論議題は新たに見つけたモンスターの名前である。そうして彼らはその蛹にこう名づけた。
───自分達とて永遠に続くわけではない。何か問題が起きて解散するかもしれないし、自然消滅するかもしれない。
だが今この瞬間に集ったこの面々が、確かにこのモンスターを見つけ、倒したのだと世界が終わるまで示し続けて欲しい。
だからこそこのモンスターは今日この日まで【ライブラリ】にすら明かされることなく、地中深くで眠り続けていたのだ……次に見つけた者が驚くように、ひっそりと。
彼らはFossil Miners、化石を掘る者の複数形。
そしてこのモンスターは……化石を掘る者の所有格。
◆
『モンスター不世出の発見!』
『討伐対象:FM'sクリサリス"戦災孤児"』
『エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されます』
不意打ちで新コンテンツが突っ込んできやがった!!
「くっ……全員散開!!」
「ぴぃぃ!!」
情けない声を上げていの一番に逃げ出したヘタレが見えたが、それを責める気にはなれない。何せ今の状況を説明するならトラックが物凄い勢いで狭い場所を飛び回っているようなものなのだから……!!
「く、なんだあの超兵器カブトムシ!?」
ずがん、どごん、と狭い隠れ家の中に何度も激突しながらも視界に入ったよし殺そうと言わんばかりに俺達へと突っ込んでくるその巨体は、今は懐かしき千紫万紅の樹海窟で戦ったクアッドビートルを彷彿とさせる甲虫型のモンスターだ。ツノが多いコーカサス系じゃなくてヘラクレスっぽい胸角が大きく発達した二本角のカブトか。母さんならもっと詳しく解説できるのだろうか?
だがその形状は単純に虫と呼ぶにはあまりにも物騒だ。普通のカブトムシは明らかに何かの射出機構を備えたツノなんて生えていないし、前脚が鋏型に進化もしない。
そしてなによりあんなロボットみたいなメカメカしい変形で飛行モードになって突っ込んでこねぇ! どういう変形してんだ前翅が刃状に格納変形して後翅が戦闘機の翼みたいになってやがる!!
「あぶねぇぇ!!」
「わたしのさくひんんんんん!!」
芸術は滅びん! 生き延びてまた作れ!!
だがどうする、現状は最高だが最悪だ。飛ぶタイプのモンスターを狭い虫かごに閉じ込めたのはナイスだが、俺たちもその中にいるんじゃ金網デスマッチに早変わり。メリットとデメリットが極端に尖り過ぎている、そしてなによりこのシグモニアに出現したエクゾーディナリーって時点で死闘の予感しかしねぇ!!
「そ、そとににげ……」
「騒音にキレた虫達が出待ちしてると思うがどうする?」
「ど、どっちにしてもしぬのいやぁ!!」
「だったら足掻くんだよ! 戦闘用意!! タンクは俺が張る、エムルとサイナは生存重視で後方支援!! ウィン……あー、サミーちゃんさん宜しくお願いしやす!!」
「せんりょくがいつうこく!?」
それもあるがユニークシナリオEX的に死なれると困る、超困る。そもそも俺こいつの性能殆ど把握してないんだよな、憶えてるのはSTRが強いのと毒を使える……くらいかな。
だが呑気にパーティメンバーのステータスに思いを馳せている暇はない。クソッ、マジで虫かごの中で大暴れする虫のそれじゃねーか……!!
だがこの俺を誰と心得る、ゴキブリを見つけたら対峙する前に生け捕りにして観察するプロセスを挟む狂気のインセクトスキー・陽務 永華の息子だぞ! 昆虫耐性が無ければ生きていけない家で生きてきた十数年の知識経験が、虫かごの中で暴れる虫の動きを捕捉する。
「そこだっ!!」
臨界速を解除しておいて本当に良かった、こんな狭いところでアレを使ったらあのなんたらクリサリスに轢かれる前に壁のシミだ。
傑剣への憧焉終刃と傑剣への憧刃を構え、壁にぶつかり斜め下に落ちてくるような軌道で飛んできたFM'sクリサリス成虫……サイボーグカブトの前翅が変形した刃にクリティカルで叩きつける!
だが、
「お、ご、もぉあっ!!?」
「サンラクサン!?」
「カスダメだ気にすんな!」
ダメだ、推進力が違いすぎる。マトモに打ち合ったら考えるまでもなく負ける、ギリギリで受け流しに切り替えたのはマジで正解だったしクリティカルが出たのは幸運だった。
「これは厄介だぞ……」
飛んでる限り近接攻撃手段が自滅と隣り合わせだ、あの質量だけで驚異足り得る。というか大型モンスターはだいたい質量が怖い、サイボーグカブトも例外ではないというだけだ。
だが大抵の大型モンスターは単なる物理質量だけに留まらないのがシャンフロのみならずアクションゲーの常。
「警告:高密度魔力反応……砲撃かと」
「本格的にサイボーグしやがって……!!」
次の瞬間、発達した上のツノから放たれたレーザービームが隠れ家の内壁をぶち抜いた。やめろーっ! 敷金礼金がーっ!!
いや家賃ゼロで蠍に無許可で住んでるから敷金礼金もクソもないけど。
なおフォッシル・マイナーズですが別にトラブルらしいトラブルもなくメンバーも増えて今日も元気に新大陸で化石掘ってます




