散り行く輝きの中で
とてもシャンフロが書きたい
───とある通信記録
『やぁ、やぁ。景気良く爆ぜたようだけど調子はどうだい?』
『やってくれたな家電王……成る程、確かに結果を急いた我々のミスかもしれないが……それにしたって想像以上に厄介な虫を買ったようで』
『ハエ程度の価値があれば上々と思っていたのだがね、いやはやミツバチを通り越してスズメバチの如き働きを見せてくれるとはね……』
『うむ、まさに予想外の結果だ。これからは傭兵に特化した無課金プレイヤーという役割が重要になるやもしれないね、これは』
『ご恩奉公、まさか技術が進んで文化が巻き戻るとは思わなかった』
『さて……わざわざプライベート通信を使ってきたということは、良い返事を期待して良いのかな?』
『ああ……それに関してなのだがね、本当にすまないと思っている。この通信は……死刑宣告なんだ。ムネ肉』
『ほぉ?』
『缶詰も宿場も大した敵じゃない、だが君はダメだ。中心核はここで潰す、一度初心からやり直してみてはどうかな?』
『………言ってくれるぜ、もう勝ったつもりなら遠慮なく覆させてもらうが?』
『若造がよく吠える、末期の瞬間にもう一度遺言を聞きにきてやろう』
通信途絶───
※別に不仲ではない
◆
ここは戦場、伏魔殿の最奥、地獄の一等地に作られた大迷宮。俺たちのようなテラトン級を持たず、自前の宇宙船では戦力にならないプレイヤーは自分の命を賭け皿に何度もベットするしかない。それ故に、分かってはいたし覚悟もできていたが……
「フォックスが死んだか」
パーティを組んでいることを示すメンバー欄からフォックスの名前そのものが消失している。このテラトン級の中では通信こそ使えないがこれはゲームシステム側の表示だ、つまり偽りのない事実としてこの船の中からフォックスというプレイヤーが消失した事実を指し示している。
「あばよ隊長、俺たちの青き故郷でまた会えると良いな」
とはいえこちらも余裕ぶっこいてばかりはいられない。六角御殿や女王玉座と比べても明らかにNPCの練度が高い、基本的にNPCは消耗品扱いなのでここまでの練度を保ったNPCを保持し続けているというのはそのままGカップムネ肉氏のプレイヤースキルの高さを示している。
序盤はこのモンスターバイクで突っ込めば何とかなっていたが……今ではワイヤートラップを仕掛けてこちらの転倒を狙うところまでAIが学習しやがった。
「猪口才な!」
ハンドルのグリップを捻り跳躍機動、さらに滞空中にブースターを起動して180度回転……ここで重力制御発動! 天井に張り付いてワイヤートラップ諸共敵を飛び越える!!
……引っ掛かれば床に擦り下ろされかねないデストラップを回避したわけだが、俺としてはそこまで余裕綽々というわけでもない。
「アステリオス」は重力制御で縦横無尽の走行を可能としている……が、それは要求技能値を満たしている場合だ。俺はそれを若干満たしていないので細かな操作をマニュアルで動かさなければならないからだ。技能値が完全であれば両手を離していても勝手に走ってくれるらしいが、俺はセルフで動かさなければならない。
「くっそ、いつまで彷徨えば……つーかあれだよなぁ! 紛れもなくなぁ!!」
何度か転移している中でちらちらと見かけた閉ざされた巨大ゲート、物理的に封鎖されきっているわけではなく何重にも重ねられたセキュリティと単純にオブジェクトサイズが規格外という点において侵入者を阻む最後の壁………猿でもわかる、あれこそがボス前最後の関門だ。
ここに来るまではフォックスがセキュリティを担当していたが、他のメンツも苦手というだけでセキュリティであるパズルゲームができないわけじゃない。ただフォックスが一番正答率が高かったし………何より、回答者を他のメンツが守っていたからこそなんとかなっていた面もある。つまり単独だとちょっとつらい。
いや、出来ないわけじゃないんだ。それを承知で全員女王玉座から持ってきたアイテムがあるし、多分それを使えば突破できるが…………あー、うん。要するに自爆なんだよね。戦艦外壁をブチ抜く携行型指向性衝撃爆弾はそのアイテムとしての性質上、両手で抱えてインパクトのベクトルを人力制御しないといけない。率先して死ねと申すかギャラトラ運営、と思ったが健全なプレイヤーならNPCに持たせるよな普通、プレイヤーが持ってる俺らがマイノリティか……いやでもクールぶってたフォックスすらやる気満々の満場一致で全員持って行ったからなこれ、バカしかいないんですよ突入班。
「誰かが扉を開ければ誰かが先に進む、率先して地獄に行こうぜとは言ったものの……」
怖気付いたわけではない、予想よりも向こうのAI学習が早過ぎて振り切れないのだ。ここで呑気に起動準備をしていたら瞬く間に包囲されて袋叩きになるだろう、だがここに辿り着けたのも分散して暴れたからこそのセキュリティの薄さだし………切り札もあるし自爆はちょっと………いやしかしここで止まって他の連中にまで迷惑をかけるのも………くそッ、考えるの面倒になってきたから自爆行っとくか!?
「いざ、突げ───」
「うおおおおおおおおお!! そこどけガゼルゥゥゥゥあああああああ!!!!」
「おぉおお!?」
この声はライノか、そう気づいて振り返ればそこにはズタボロのパワードアーマーをオーバーヒート上等と言わんばかりに限界まで酷使してこちらに突っ込んでくる巨体の姿が。どうやら向こうも向こうで敵の数々を力ずくで突破してきたようだが……若干の逡巡を振りほどけなかった俺と違って最初から覚悟は決まっているらしい。堅牢なゲートを前にしてブレーキを踏むことを放棄したブーストと、アーマーがはげてプレイヤーのアバターが露出した左腕で抱えた衝撃爆弾を見れば奴がやりたいことは理解できる。なら俺がすべきはこういうことだろう!!
「受け取れライノ!!」
「おうよォ!! わりィがバイクごと逝かせてもらうぜェェェェェェェ!!!!」
ゲートから離れる俺とゲートへ突っ込むライノがすれ違う、その瞬間に俺が保有する衝撃爆弾をライノへと放り投げるように手渡す。なるほど流石はラガーマン、見事キャッチしてそのまま突っ込み…………
「タッチダウーーーーーーーーン!!!」
「いやそれアメフ」
大爆発、お前の犠牲は忘れないぜライノ………あとごめん、素で間違えたトライだったな、うん。
「あばよ盟友、確かに道は拓かれたぜ………っ!!」
バイクに関しては割と未練タラタラだがその場のノリはその後の利益よりも優先される。瞬間的達成感こそがゲームの醍醐味、後悔は後でするものだから今思いっきりやらかせるってもんだぜ。
「ウルフとパイソンはまだ生きてるようだが………先に行くか」
また一人ネームが消えたパーティメンバー欄をウィンドウごと閉じて、見据える先は本丸………この戦いを終わらせるために、俺は進むのだ。
巻きで




