思い切りと決断となぜかいる鳥の影
親知らずァエイ!!!!!(今の心境を一言で表す叫び)
「ありがとう、マチョヶ峰君……」
逃げ傷のない雄々しい背中を見せ、その前面を弾丸とレーザーの嵐でズタボロにしたバトロイドがゆっくりと消えていく。結果として短期決着という結末になったとはいえ、プレイヤー程度なら一分で百人くらい消し飛ばせそうな弾幕の暴力が僅かでも振るわれたのは事実だ。
その役目故に動けないパイソンを守って命を燃やし尽くしたマチョヶ峰君が消えていくのを誰一人欠けていない五人で見送りながら、俺達は機能を停止した三機の怪物ロボットへと視線を向ける。
「有線接続で助かった……」
「というか向こうさん、詰め込みすぎて身動き取れなくなってなかった……?」
「……お陰でマチョヶ峰君だけが狙われ続けたがな」
コンセプト的には分からんでもないが、悲しきかなマチョヶ峰君という盾があったことでデメリットの方が大きくなってしまったな。タンクがヘイトを集めてる間に攻撃担当が迂回して有線ケーブル破壊して終わり……うーん、UIだけで処理して実際に見たら大惨事になる感じだ。
危牧あるある、対災獣用レーダーを設置してこれ安心と目を離していたらレーダーを無効化する災獣に畑を荒らされてリセット。やっぱり最後にモノを言うのはプレイヤー自身の直接確認だな……いや今でも納得してねーぞなんなんだレーダーを無効化するステルスイノシシって。畑を破壊することに特化してる災獣は時に直接的な被害をプレイヤーにもたらす犬以上に厄介だ……そう、ちゃんと確認しないとなった五人のプレイヤーにテラトン級戦艦を乗っ取られてしまうのだ。
「……ま、お陰でこちらが上手く回せたんだ。この船の元持ち主に感謝の言葉でも考えておいてやろう」
『はっはっはっ、でかしたぞ君達。最高のタイミングで紳士協定期間だ、今のうちに六角御殿の主導権を完全に奪取する』
紳士協定期間は一切の攻撃的行動を取ることはできない、だがそれ以外の行動まで禁止されたわけではない。例えば損傷の修復や翌日用の弾薬生産、NPCの慰労などなど……そういった裏方作業であれば認められているわけだが。
現在六角御殿は戦争期間終了一分前に愛板氏が叩き込んだ渾身の乗っ取りによってコアとなる中枢艦の所有権をこちら側に一時移譲している。
『ふふふロッカクめ、国内ナンバーワンシェアに胡座をかく悪癖を直さないからこうなるのだよ。変革に対して腰が重すぎるなら乗っ取られても文句は言えないのさ……』
「うわー……」
「ウルフ、ここから先は私たちの踏み込めない世界よ」
「資本主義かぁ……」
「……で? 明日はどうするんだ雇用主殿」
『明日? ああそうだ明日だ、そうだまだ二日目だ、ロッカクの奴にメールを送ることに意識が向きすぎたないけないいけない』
そこは戦艦改造に意識を向けて欲しかった……だがテラトン級の離反ははしゃいでも仕方ないくらいの大ごとだ。戦況は5:5愛板氏若干不利から5:5愛板氏若干有利になったと考えていいだろうし、向こうも当初の計画を変更せざるを得ないだろう。これはもう勝ったと言っていいのでは?
……
…………
………………
そう考えていた時期が俺達にもあったんだ、あったんだよ…………
………………
…………
……
「わぁー………見てよ皆、十数万円が宇宙の藻屑になってるよ」
「……なかなかお目にかかれない光景ではあるな」
「十数万円分の価値あるかァ? これ」
「あっけなさにこそ侘び寂びがあるんだろう、俺には理解できないけど」
「じゃあこれからあっけなく押しつぶされそうな私達にも侘び寂びがあるのかしらね?」
三日目。乗っ取った六角御殿からディアホーンの本拠地「女王玉座」へと転送された俺達が見たものは、初日の初手を彷彿とさせるこちら側から放たれた極太レーザーが六角御殿に直撃する光景だった…………そして振り向けば、今度は人間NPCもちらほら含まれた女王玉座のセキュリティアンドロイド達がこちらへと迫ってくる光景………侘び寂びがなんだ山葵がなんだ、外見て呆けてる暇はないようだ。
「半日経ったとはいえ即処分に踏み切るとは!!」
「見事に中枢艦を打ち抜かれたわね!!」
「おうおうおう勢いやべェぞ! どっか逃げ道探さねェと!!」
「くっそー! 人間NPCの方も上等な装備しやがってーっ!」
「……パイソン、マップデータは!」
「悪い知らせがあるけど聞きたい? この船、各ブロックが転移ゲート方式で完全隔離されてる型だから今だとどこにどう出るのか分からない!」
だとしてもここで戦うのは無理ゲーってもんだ、ちくしょうマチョヶ峰君カムバーック!! 彼さえいてくれればと考えずにはいられないが……ないものをねだっても虚しくなるだけだ、飛び込むしかないっ!!
「行け行け行け! ライノが潰れる前に!!」
「いやそろそろ潰れそうだぜこれ!!」
ハリアーップ!!!
……
…………
………………
……………………
◆
【旅狼】
鉛筆騎士王:で、まーだ戻ってこないんですかサンラクくーん
サンラク:何を企んでいる
モルド:諸々のプロセスを一切飛ばして疑いに帰結してる……
鉛筆騎士王:いやちょっと王様の首を……こう、ね?
サンラク:鉄砲玉じゃねーか! お前またなんかやらかそうとしてんのかよ?
鉛筆騎士王:いやいやいや、流石に今回は爆破しないよ
モルド:爆破……?
鉛筆騎士王:モルド君は気にしなくていいんだよー、遠い遠い思い出だから
サンラク: 思い出って言うかトラウマ寄りの悪しき歴史の間違いだろ
鉛筆騎士王:当時のメンバー集まってます
サンラク:当時の………
サンラク:は?
鉛筆騎士王:サンラク君、基本的に他ゲーやってる時って情報遮断するタイプでしょ
鉛筆騎士王:この私が盛大に盛り上げてるって言うのにさぁ!
モルド:まさかサードレマのレジスタンスイベントって
鉛筆騎士王:私のことはサードレマ特別相談役アーサー・ペンシルゴンと呼んでもらおうか
サンラク:断頭台へレッツゴー!
鉛筆騎士王:イエス! 司法取引!
サンラク:腐り切った法に価値なんてなかった
鉛筆騎士王:私が法だ
モルド:な、流れが早い……
サンラク:慣れて欲しくないけど慣れろとしか言えない……
鉛筆騎士王:そういえばルストちゃんは?
モルド:リヴァイアサンに篭ってるよ。なんでも借金するとジョッキーになれる? らしくて
サンラク:言ってる意味が欠片も理解できねぇ
鉛筆騎士王:ま、そこらへんは自分の目で見て確かめなよサンラク君
オイカッツォ:彷徨う大疫青討滅
サンラク:いやどっちにせよあと数日はこっちのイベントだし……
鉛筆騎士王:ちょっと待って今なんて言った?
モルド:大青疫ってなんだっけ、名前的にレイドモンスターだよね?
オイカッツォ:父さんな、レイドモンスターで食っていこうと思うんだ
サンラク:ああ、ユニーク自発できないから闇堕ちしたのか……父さんユニーク自発まだー?
鉛筆騎士王:ユニーク自発できないマンの成れの果て、か………パパン、軍資金ちょーだい!
鉛筆騎士王:いや待ってマジじゃん速報流れてきてる! うーわ、計画調整しないと!
オイカッツォ:報酬について聞きたい?
サンラク:いや、俺も大疫青に一発入れてるから貰えるだろうし別に
オイカッツォ:………………
鉛筆騎士王:うーんこのマウントに対するリバーブロー
ユニークシナリオ自発できなさすぎてキレたオイカッツォ氏、レイドハンターに転職する
なおオイカッツォ氏、大疫青君を倒すために例の魔薬に再び手を出した模様




