六角侵入七顛八起
軽率にゴキが増殖し、軽率に隕石が落ちてくるカードゲームがあるってマジ?
『全員散開!! 敵の船の中でまた会おう!!』
誰かは知らないが、リーダーぶった声を合図にプレイヤー達の駆る宙域戦闘用小型宇宙艇が一斉に出撃した。NPCの戦闘機なども混ざっているが、メインはプレイヤーを満載した五隻の輸送船だ。
「見ろよ、五万円だ」
「一ヶ月の食費とイコールだよあの光……」
聞けば現在ギャラトラにて最高火力を誇る最強兵器に威力でこそ劣るものの、被害で言えばトップを争うという究極兵器がアレだ。簡単に言うと物理防御を貫通する、イかれてるぜ。
だが向こうも当然対策は立てていたらしい、双丘の大艦隊総旗艦をかばうように前に出た円盤……いや、缶詰みたいな形をした宇宙戦艦から光が放たれる。あくまでもゲームなので実際のビッグクランチに忠実ではないだろうがそれでも「光線に触れたオブジェクトを圧縮してフィールドから消失させる」というど畜生レーザーに対して展開されたフィールドは、破滅のハーフアンドハーフの直撃に晒されて尚、己と盟主を守り切った。
「嘘だろ無傷!?」
「いや違うわね、他の船団がカンヅメよりも前に出た。多分真珠の円匣もエネルギーを使い切ったのよ」
「ガゼル! こりゃチャンスだろっ!! カンヅメに乗り込もうぜ!!」
いいや違う、それは愚策だ。確かにカンヅメ……真珠の円匣旗艦が行動不能になっているがもう一隻ある二番艦は無事だ、つまりカンヅメさんは自衛できる。その上で他の船が前に出てきたって事は庇うためじゃない、これは……!!
「全員シートベルト締めて口開けとけ! 地獄の音ゲーの始まりだっ!!!」
かつて地球から秘密裏に宇宙へと旅立ち、一大勢力となったゲルマノイド第三帝国の極悪防衛兵器! 金属の箱に生卵を詰めてレンジにかけたらどうなる? それこそがゲルマノイドの禁断兵器、超荷電子拡散パルス……通称「ゲルマンレンジ」! やはりプレイヤーも使えるようになっていたか……っ!!
一応ドイツの方々に弁明すると「粘液人間」なのでジャーマニーは関係ないぞ! フィクションだからリアルとはなんの関係もないのだ。
「ひええっ! 視界一面埋まってるぅ!!」
「戦艦級複数による面制圧……っ!!」
「ねぇガゼルさん、詰んだ?」
「バカ言え! 課金輸送船はちゃーんと対策装備があんだよ!!」
くらえ前面防御シールド! 耐久はゴミだがパルス系なら確定で一発耐える地味に便利な紙装甲!!
バチィン!! とビンタを何千倍にもしたような快音が響いてシールドが弾け飛ぶ、一枚目は通過した……だが複数の戦艦がミルフィーユ構造でぶちかまして来た即死攻撃の多重構造はまだまだ第二波第三波を控えている。
バチィン!! バチィン!!
「し、心臓に悪い……」
「おや、乗客ウルフ氏はああなりたいのか?」
「いやパイロットガゼルは前向いてて!?」
俺が操り彼らが乗る輸送船がビンタを食らっているとしたら、右上の方で派手に爆散した輸送船はさしずめパワーボムでも食らったのかな? ハハハ、十数人くらいが一撃で地球に強制里帰りだ。
「ご注目ください、良い知らせと悪い知らせと悪い知らせパート2、どれから聞きたい?」
「前を見れば全部分かる、行けるのかガゼル。わざわざ輸送機を選ぶ辺り相当自信があるようだが……」
「安心しろ、さっきチュートリアルは済ませた」
「そうか…………待て、今何て」
「行くぞ! 音ゲーの次は弾幕ゲーだ!!」
良い知らせはゲルマンレンジが終わった事、悪い知らせは戦艦十数隻による弾幕を漢防御で受け切らないといけないってことだ。
「面制圧で俺を捉えられるかよ……!!」
「普通に被弾してるんだよなァ!?」
「よく見ろ間抜け! 撃墜されない限り実質無傷!!」
技術の進歩って素晴らしい、ユニストの頃は物理エンジンを悪用してやってたドリフトをプレイヤーの任意操作で出来るってだけでも素晴らしいのに、デブリにわざと直撃しなくてもバレルロールができるなんて!!
「タマヒュンの連続かよぉ……」
「ほんそれねぇ」
「パイソン、墓穴じゃないのか?」
「哲学的タマヒュンの話だから、虚数の金玉よ」
「存在しない前提で存在する睾丸……?」
「玉って……なんだっけ?」
「未来」
「おいやめろ馬鹿! 俺が笑うだろうが!!」
クールキャラ気取ってるのにギャグにはしっかりノッてんじゃないよフォックス! ええい手元が、手元が狂う!
だが行ける。輸送機は小回りが利かない、と事前に聞いていたが俺からすればとんでもない。急ブレーキとドリフト、推進器の暴発でモーションキャンセルができるってだけでも自由度の塊だぜ。
「ガゼルっ! 向こうが陣形を変え始めた!!」
「見れば分かるよ! クソ、適正対応数に気づいたな……!?」
至高のA大船団は総旗艦「愛の地平線」から始まり二番艦「凪いだ水平線」、三番艦「グレートウォール」、四番艦「パラレルライン」、五番艦「ヒューストン」、六番艦「ファントムボイン」の六隻のテラトン級戦艦に加えて随伴のギガトン級戦艦四隻で構成された個人で保有する規模としては最大の単独大所帯だ。戦艦のネーミングがどんどんおっさん臭くなるのは無視、重要なのは向こうのテラトン級戦艦の総数は十二隻あるって事だ。
現在は互いに一隻ずつ機能停止で戦闘から実質離脱して五対十一、愛板氏が戦闘特化にしたテラトン級に対して向こうは同じくテラトン級をぶつける事で殲滅を狙っているようだが……ここで拮抗できるのは一重に愛板氏のプレイ方針がド脳筋だったからだろう。一隻で二隻分は戦って見せると豪語しただけあって鬼のように消費されていく弾薬によって形成された弾幕は戦況をイーブンで食い止めていた。
だがここで問題。
テラトン級戦艦に対して基本的にギガトン級は戦艦は無力ですが、その場合双丘の大艦隊が擁するギガトン級戦艦は何を狙うでしょうか?
正解はこの致死圏を抜けた後っ!!!
「やばいやばいやばい! 輸送機さらに爆発! 俺たち含めて残り二隻!」
「戦闘機部隊は!!」
「あー、六割ゲルマンレンジで死んでるわね」
「ハエだってもうちょっと長生きするぞ……!!」
役立たずのモスキート共め、だが生き残った四割は最低限の仕事は果たすつもりらしい。弾幕を潜り抜けながら敵ギガトン級戦艦に肉薄した戦闘機がミサイルを叩き込んだ。よし道が拓けた、突っ込む!!
「ようし、行き先けってーい!!」
クソが、もう一機の輸送機に敵ドローンがまとわりついた……ありゃもうダメだ、はい爆散。
「悲しいお知らせだ、戦闘機選んだアホ共は敵船に着地できないのでなかったのは我々だけです」
「え、マジ? 戦闘機ダメなの?」
「敵船に着陸許可貰うのか? 表面って基本フィールド貼られてるから触れたら爆死だぞ」
「フォックスの言う通りね、それを踏まえてどうするのかしらぁ?」
まぁ見てろ、敵ドローンを引きつけて……
「ねぇガゼルさん!? 取り付かれたけど!!」
「いざ刮目せよ! 必殺・操縦可能操縦不能状態!!」
左右のブースターを真逆に噴射、さらに躊躇いなく最大まで舵を切る事で輸送船を横転させるように勢いよく回転させる!! ドローンを振り払いながらも周囲からあれはもう墜ちると思わせるのさ!
「おまっ、なぁぁあ!!?」
「うはははは! ここで行き先をお教えしよう! 当船舶は暴走挙動の後、強制退艦していただきプレイヤー:ディアホーンが運営するホーネッツネストの二番艦「六角御殿」で現地集合!!」
あきらかに制御不能な動きで吹き飛ぶ挙動を自演しながら、さも「制御不能になって偶然接近しました」な風を装いながら巨大な六角形を数百組み合わせたような六角御殿へと接近していく。ギガトン級なら迎撃されていただろうが、たかだか輸送船がぶつかった程度じゃあ1ダメージにもならないテラトン級なら?
「やはり無視したな……っ!」
そして巨大な船を運営する以上、いちいちNPCの雑兵に緻密なオーダーを出すとは考えづらい。つまりNPC戦闘機は死にかけの輸送機には目もくれず愛板氏の本隊へと向かって行くわけで。まぁ流石にこのまま輸送機で侵入したら対処されるだろうし、近づきながら悠長に侵入の準備なんてしていたら流石に狙われるのでこうする。
「宇宙空間で扉開くとどうなるか知ってるか?」
「は?」
「あ?」
「え?」
「何?」
「では現地集合! 背中についてるブースター使って気合いで発進ゲートまでたどり着け!! この輸送船は退艦後自爆するっ!!!」
ロッカだかハッカだか知らないが、内側からぶち壊してやるよ。それでは自爆する!!!
開け放たれたドアからメタルアニマル達が吹き飛ぶように出て行ったのを見送りながら、俺は輸送船の自爆スイッチを押してシートベルトを解除する。次の瞬間には俺の身体が空気とともに外へと吹き飛ばされ、宇宙空間に飛び出したことでアニマルヘルメットが表示する視界内に残存空気量を示すゲージが現れた………まぁ、想定通りだ。チュートリアルで見たからな。
これぞユニバースストームで一部の「運び屋」達のみが使えたとされる秘伝の奥義「偽装事故輸送」だ。宇宙空間という性質を利用した核爆弾強制排出テクニックは異なる世界でもやはり大いに役立ったようだ………なにせ、馬鹿正直に空挺作戦ならぬ宙挺作戦なんてやってたら即座に狙われるだけだからな、宇宙モノは自動的に文明レベルが高いのでホーミング武器とかザラなのだ。「え! ここで降りるの!?」とほかでもない乗客たちにすら思わせるアンブッシュこそが宇宙戦闘の要………
「レッツゴー!!」
ジタバタと暴れながらもなんとか六角御殿へとたどり着かんと動くプレイヤー達を上からゲラゲラ笑いながら見ていた俺も、背後で自爆した輸送船の衝撃波で加速して追いつくのだった。
双丘の大艦隊側のテラトン級戦艦保有事情
双丘の大艦隊:五隻
ホーネッツネスト:二隻
ホテルリクモガミ:三隻
真珠の円匣:二隻
基本的にテラトン級って戦う用じゃなくて一種のコロニーとしての運用が基本なんですよね
しかし愛板の場合、地球に変えることを前提として自給自足するのではなく地球で大量に食料やらなんやらを溜め込んで無くなりそうになったら戻るor略奪でテラトン級を運用しているため、他のテラトン級がコロニーとしての機能に割いている部分を全部戦闘特化にしているんです
つまり個人で言えばトップクラスの火力持ちであり、積極的に宇宙海賊やゲルマノイド第三帝国にも喧嘩を売って略奪行為をする超武闘派




