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『お任せください、我々は常に完璧な仕事を致します』

うちのブローディアちゃん、脱いでくれないんだ……身持ちが固いのも可愛いね………

知ってるか? バカは風邪を引かない、ってのは厳密にはバカは風邪を引いたことに気づかないということらしい。

俺もゲームバカという点ではバカなので状態異常:風邪を無効化することができるのだ。

冷蔵庫の奥に秘密裏に保存しておいた(忘れていたとも言う)ライオットブラッドをこっそりストローで吸い上げながら、俺はVRシステムの電源を入れる。システムのスロットからシャンフロのソフトキューブを取り出し、代わりにギャラクシートラベラーのキューブをセット。静かではあるがほんの僅かな駆動音を立てながら読み込みを開始したのを確認しつつ飲み終えたライオットブラッド(無印)をゴミ箱に放り投げる………ホールインワン、実質健康体といって過言ではないだろう。


「さてと、始めますか」


ギャラクシートラベラー、ゲームにログインしてない間も時間が進行するからそのまま放置しておくとほぼ確実にNPCが暴動を起こしてゲームオーバーになっている。なのでNPC全員をコールドスリープさせてから安全地帯でセーブするのが基本、最後にプレイした時の俺もそうしていたはずだ……


「あ、バドゥガモス…………いや、やめとこう」


流石に昼寝して割と回復傾向にあるとはいえ、風邪でまだぼんやりした頭であの出どころ不明なライオットブラッド仕様のMR対応ヘルメットを装着する勇気はない。オカルトに怯える姿は滑稽かもしれないが、ことライオットブラッドに関してはオカルトでもジンクスでも信じた方が健全に楽しめるというのが暴徒の総意だ。

日和ったとも言うが、それでも正しい決断をしたと信じつつプラチナを除く通常、シルバー、ゴールド、ダイヤモンドのバドゥガモス君達を棚に並べておく。宇宙メタルクラゲが並ぶ姿は壮絶にシュールだが、あのダイヤモンドバドゥガモス君は見る度にお爺ちゃんの立てた五本指を思い出すのでそっと目をそらす。未練は心の隅に留めおくものであって、人生の真ん中に陣取っちゃいけないんだよ………


「っっし!!! 気を取り直せ! いざや懐かしき茫漠の宇宙へ!!」











と、意気込んだは良いがログインした俺を待っていたのはプレイヤー:サンラクの所有する宇宙船の船内ではなく、大型アップデートによる様々な変更を告げるウィンドウと特典諸々を知らせるウィンドウ、ウィンドウ、ウィンドウ………結果的にこれら全てに軽く目を通しつつ消化しきるまでに十分近くかかってしまった。だが流し見であったとしても目を通しただけあってアプデ後のギャラトラについては大体分かった。


とりあえず大型アップデートによって最も変更が加えられた項目は三つ。

まず一つ目はプレイヤーの家であり武器であり船であり………なにより資産である宇宙船について。アプデ前は失くしたら終わりの性能微妙なポンコツ宇宙船という評価だったが、アップデートを経たことで宇宙海賊に強気の反撃に出ることができるくらいにはテコ入れされている。武装に関して大幅な強化が加えられたのが大きいな、こっちの最高火力で相手を一撃のもとに屠ることができるようになっただけで感動ものだ…………アプデ前は最高火力で辛うじて装甲を貫通できる「だけ」とかザラだったからな………宇宙海賊艦隊とかもはや身辺整理を始めるレベルだ。


次に二つ目、船員であり宇宙船を運営するにあたっての血液であるNPCについて。従来の節約のために食事から一品取り除くだけで一斉蜂起するようなクソ船員から、多少は我慢してくれるようになっただけでも大きいが注目すべきはアンドロイドクルー……つまりはロボット船員の追加だ。こいつは不満やストライキを一切起こさない代わりに通常の船員よりも資材や金を食う……つまりコストが重くなった代わりに従来のようなご機嫌取りをしなくてもよくなった。個人的には船外に叩き出しても回収できるのが嬉しい、船外装備じゃない人間NPCだと即死だからな……


そして最後に三つ目。これが俺をギャラトラへと呼び戻した最大の理由といって良いだろう。プレイヤーが船長の椅子から立ち上がることを許され、あまつさえいち戦闘員として出撃することすら可能になった。

具体的にはプレイヤー自身に船員NPCに設定するようなステータスが追加されている、どうやらここら辺は普通のアクションゲーに倣っているらしくアバターの「適正」を上げる事でそれぞれの行動に対するパラメータが上昇するようだ。一応これまでのプレイである程度ステータス振りされてる様子なので自由に使える分は全部近接戦闘と戦闘機操作につぎ込んで……っと。


「なんだこのハンドガン………あ、JGEの時のアレか」


この能力は………使う、のか? 宇宙に漂うのも忍びないし地球まで戻って保管しておくかな。地球にあるプレイヤー用のマイルームだけは何回死んでもそこに置いたものがロストすることはない。こういう記念品は保存するべきだが……問題は地球まで無事に帰れるかってことなんだが。


「NPCは………うわ、不満爆発寸前だ」


そういえば今現在、絶賛漂流中だったな……なにせ地図があっても定期的にデータが吹っ飛ぶから復旧させるまでに大抵迷う、それまでにうまく立ち回らないと遭難に加えて船員のストライキが起きるわけだ。そしてかつての俺はそれに失敗しかけていて、色々面倒臭くなってセーブしてゲームそのものから離れたわけだ………思い出してきた。


「……どうすっかこれ」


クルーがいないと船が動かせないが、こいつらを動かせば確実に内ゲバ別ゲーになる。手っ取り早い解決法は通りすがりの別プレイヤー、NPCからクルーをトレードして好感度をリセットする、とかだが……ん? 未確認の船舶から第三楽皇丸(俺が今乗ってる宇宙船)に商業通信?


「もしもし?」


『言語認証……こんにちは銀河の旅人、私はドロイドクルー・エージェンシー所属無人取引システム「SL:エーヴェ」です。当方は現在、有人性不和の解決一助として貴船舶のクルーとドロイドクルー・エージェンシーが自信をもってサービスするアンドロイド・クルーのトレードを提案いたします』


………人と、アンドロイドを、交換と。



五分後。



『この度は四十五機のアンドロイドと地球由縁生命体のトレードに応じていただき、誠にありがとうございます! お客様は一定数以上の取引を行ったため、こちら特別サービスとしてアンドロイド用艦内戦闘パックを今回トレードしたアンドロイド全機にお付けさせていただきます!』


「いやいやこちらこそいい買い物でした」


あばよコールドスリープ状態で集荷された不満タラタラのクルー達! SL:エーヴェ(AVE)って英語にすると隠すつもりないのかってレベルで不穏かつ物騒だけどてめーらの未来にお祈りしておくぜ!!


「それじゃこれからよろしくね! 優秀なアンドロイド諸君!!」


『お任せください、我々は常に完璧な仕事を致します』


『お任せください、我々は常に完璧な仕事を致します』


『お任せください、我々は常に完璧な仕事を致します』


『お任せください、我々は常に完璧な仕事を致します』


わーい、ディストピアの予感。

SL:エーヴェ

まぁ読んで文字の通り奴隷商人、売り渡されたNPCクルーの運命は推して知るべし

なおエーヴェが所属する組織と敵対しない限りは有能なアンドロイド・クルーなので利用しているプレイヤーは多い。というかアプデ特典で大量のマネーを手に入れた無課金プレイヤーの前にやたら現れるので運営が狙ってやってる


天上領域のプレイヤー達はそこら辺気にしない、だって艦隊運営してるから人手は肉だろうと鉄だろうと多い方がいいから

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― 新着の感想 ―
海賊船装甲を抜くのが精一杯の武装しかできない船で娯楽類が充実してるとはとても思えないのでほぼ唯一の楽しみだろう食事のランク下がってブチギレないのは逆に菩薩だろ
食品一個抜くだけでストライキ起こすとかどんだけ沸点低いんだよ
[気になる点] VRゲームはチップ形式と初期の方で描写あったと思うのですが、キューブ式に変更されたのでしょうか? シャンフロ内の記憶媒体(晴天流奥義書)がキューブ型なのでそちらと混同されたのかなと、気…
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