表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
574/949

斎賀流護身術「骨抜」

あつがなつい

顔を伝った黒い液体が顎から滴る、やけに冷たい、どうやら頭からコーヒーをぶっかけられたらしい。コン、と頭頂部にぶつけられた缶がやけに小気味のいい音を立てた。


「…………」


「何カッコつけてんだよ、ヒーロー気取りか? あ?」


成る程、成る程成る程成る程…………ああ、そうですか。

いや確かに俺も悪かったかもしれない、いくらナンパマンだろうと初対面の人間にやっていい態度じゃなかったしそもそもクソゲーをリアルに出すなんてクソゲーマニアとして褒められた行いではなかったかもしれない。まぁそこらへんは兼ね合いなので厳密には武田氏に聞いた方がいいのだろうか? とりあえず頭がやけに涼しくなったせいか驚くほどに冷静だそう冷静ソー冷静ソークール、カフェインって皮膚からでも吸収できるもんなのかな? 頭にかけられたから脳みそに素早く届いてそうだが頭蓋骨も貫通してんのか? いやというかまぁ落ち着けこの程度リスキルや死体撃ちに比べたらよっぽど生ぬるいじゃないかコーヒーは冷たいけどなハハハハハハハハ


「これ何か分かるか?」


「は?」


お前の目を潰すための人差し指と中指だよ、いや違う。


「ピースサインだよ、俺はすぐにおててが出ちゃうお前と違って平和主義なんでなぁ? 笑って許せるんだよ、笑って許すんだよ」


頭ポカポカしてきたがこんなものは慣れたものだ、たかがコーヒーぶっかけられたくらいであーもう服シミだらけかよ………ちょっとだけなら、いやいやダメダメ、後で憂さ晴らし天誅すればいいだけだろ。


「気は済んだかチンパンジー? だったらさっさと動物園に帰れよ。ここは人間の交通機関だ、脱走した脳みそチンパンジーが来るところじゃない。なんならお土産にバナナを買ってやるよ」


「こ、このっ……!」


やんのかコラ、髪の毛毟って散切り頭にして文明開化の音響かせてやろうかァ!? だが残念だったな俺は今顔から火が出そうだが注目を集めまくったおかげで駅員さんがこちらへと向かってきている。真の平和主義者は拳なんて使わない、法で殴るのだ。つまり六法全書は武器。

眉間に寄りそうなシワを無理やり固めた笑顔で消し去り、今にも理性の鍋から吹き零れそうな沸騰する感情を宥める為に煽るようにナンパマンへと語りかける。この際一発くらい殴られることも覚悟してやる、エア六法全書を装備した俺は攻撃力が高いからな。


「おいおい顔真っ赤だぞ、猿が赤くするのは尻だろ? 汚ねぇブリーフを脱いでみろよ、警察に通報しながらケツの色を見てやるぜ」


「ブッこ」


振りかぶられた拳、こちらは既に頬で受ける覚悟を決めた。だが、事態はすぐ真横にいた人物によって力づくの終わりを迎える。


「───正当防衛です」


「ぼぎゃが!?」


ゴギョギョッ!! とでも形容できそうなあまり聞きたくない音が響く。あまりにも最適化され過ぎて玲さんがナンパマンの背後に回り込んだことにこっちの理解が及ばなかったくらいだ。

玲さんがナンパマンの振り上げた拳を捻るように掴んで、肩にもう一方の手を当て、ちょっとヤバめの方向に捻り上げたことで奴の腕が伸びた? ように見える。そしてそれはどうやら当たらずとも遠からずといった様子で……


「お、折れっ、骨がぁあ!!」


「折れただなんて、大げさな方ですね」


普段の姿からは想像もできない冷ややかな声と、玲さんの姉二人を思わせる鋭い眼差しが右腕を抑えてのたうち回るナンパマンへと向けられる。いやゲーム廃人の方の斎賀姉の素顔は知らないけど、フルダイブのアバターってリアルと違う顔にしても中身は一緒だから印象そのものはあまり変わらなかったりするんだよな……一番極端な例は秋津茜。


「関節を外しただけです、私は今とても冷静ですから……念のため左腕も外しておきましょうか」


「ひっ」


「あー……もういいよ玲さん。タイムリミットだ」


肩、肘、手首の三箇所が面白いくらいプラプラしているナンパマンを見ていたらこっちもいつのまにか溜飲が下がっていた。それに関節を外されたナンパマンの様子に駅員さん達も駆け足でこちらへと来てくれた。


「良かったな、今日は警察と熱い一夜を過ごせそうだな」


「こ、このっ」


「はい大人しくしてねー、とりあえずこっち来て話聞かせてもらえる?」


「いだだだだ! 折れぇっ! 触んなぁ!!」


だから折れてないのに……と玲さんがポツリと呟いたのが聞こえたが、いや三箇所同時脱臼は普通に痛いと思うんだが……まぁいいや。とはいえ俺たちも当事者ではあるのでナンパマンを拘束している駅員さんとはまた別の人がこちらへと話しかけてきた。


「あー、君達も一応お話聞かせてもらえる?」


「え? それは構わないですけど、出来ればアレとは別の場所だと嬉しい、です。あとそろそろリニアが……」


「ん、そうだねちょっと名前とか書くだけだからすぐに済ませますんで。じゃあこっちに」


大丈夫だよね? 高校生活に波及しないよね?





十分後。




「あーもしもし? うん、多分電話きたと思うけど厄介なのに絡まれてさ。え? あー俺は手は出してないよ、頭からコーヒーぶっかけられたけど慰謝料っつーか洗濯代は貰ったから……あん? 瑠美に代わるって? え、何? シミは速やかに洗濯しろ? いや洗濯っつったってさ……は? 銭湯行け? え、最近の銭湯ってコインランドリーと融合してんの……!?」


「……はい、はい。少々護身の類は使いましたが……あ、違います姉さん砕惨(さいざん)じゃないです骨抜(こつばつ)の方です……はい、それでその、少し遅くなるので電話を……え? 泊まってもいい? いやあの明日も学校ありますし………え、ラッっ!!? 姉さん! ラブでもカブでもそんなところには泊まりません!!!」


互いに電話を切ったのはほぼ同時のタイミングだったらしく、背中合わせに別々の相手と電話していた俺達の視線がぶつかる。


「えと、そのですね……」


「あー、玲さん。俺ちょっといも……身内に脅されちゃって、ちょっと寄り道しないといけなくなったから……」


「あ、いえっ! 元を辿れば、その、私が引っかかったせい、ですし……それに、その手を出しちゃったせいでこんな、大ごとに………」


「んー、そこに関してはむしろちょっと感謝してると言うか……まぁ、大声じゃ言えないけど見ててスカッとしたのは事実だし、ありがとうと言うかなんというか……」


「いえ、あの、その……こちらこそ、間に入っていただいて……」


沈黙が続く。このままだと謝罪と感謝で無限ループしそうなので無理やり話を進めることにする。


「そう、で、話を戻すんだけど俺ちょっと今から銭湯に洗濯しに行けと言われちゃってさ……玲さん、別に先に帰っても……」


「え、あう、あの、その……わ、私も! ご一緒してよろしいで、しょうか!?」


「へ?」


何やら、おかしな流れになってきたぞ?

まさかのエクストラターン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
俺に手ぇ出すとウチの玲さんが黙ってねぇぞ!分かってんのかアァ!?
玲ちゃんすき
一度に3箇所脱臼させれるのやばい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ