正解は「着弾確認次弾用意!!」
ついに来てしまった……未開域……アメリカの環境を木っ端微塵にしたという悪魔が……!!
◇
【旅狼】
サンラク:ゴルドゥニーネのユニーク自発してるので悔しくないです
鉛筆騎士王:悔しさジュワジュワに滲み出てるぅ〜!!
秋津茜:何かあったんですか?
ルスト:ユニークモンスター「冥響のオルケストラ」が攻略された
鉛筆騎士王:で、ここにいるのが先に自発してたくせにリアルで遊んでる間に先越されたサンラク君でーす!!
鉛筆騎士王:それはそれとしてサンラク君が先越されるってなんか訳あり?
鉛筆騎士王:ミレィって【ライブラリ】の口は緩いけど頭はめっちゃ賢い子だよね?
サンラク:いや知能指数に関しては知らんけど口調が緩いってのはそうだな
鉛筆騎士王:聞いた限りじゃボスラッシュなんでしょ? サンラク君が負ける相手にライブラリのプレイヤーが勝てるとは思えないけど
モルド:いきなり温度差が……
サンラク:なんかギミックがあったんじゃね
サンラク:少なくともプレイヤーのステータス完全上位互換再現アバター召喚してピンチになったら忖度ガードするボスの正面突破法は知らん
鉛筆騎士王:おおう、クソボス……
鉛筆騎士王:となるとギミック? なんか納得いかないなぁ
ルスト:具体的に何が?
鉛筆騎士王:いやさ、ユニークモンスターって攻略手順分かってても死ぬタイプのボスキャラって印象だったから
鉛筆騎士王:いや、倒したのは事実な訳だしサンラク君が見落としただけでオルケストラ超弱体化ギミックがある可能性もなくはない
サイガ-0:というか、今、あの……舞台に
ルスト:しっ
秋津茜:?
鉛筆騎士王:私くらいの一流になると同時並行で動くことくらい訳ないから
サンラク:悪事の効率も二倍!!
鉛筆騎士王:君を馬鹿にする効率も二倍!!
サンラク:抜かしおる
鉛筆騎士王:気になるのはオルケストラがウェザエモンみたいな一回きりのタイプか、クターニッドみたいな再戦可能なタイプかってことよね
鉛筆騎士王:とりあえずサンラク君ちょっと確かめてきてよ
サンラク:え、無理
サンラク:つーかしばらくシャンフロにはインしないかなって
サイガ-0:えっ
鉛筆騎士王:はぁ?
◇
「えと、あの、え、いん、引退……ですか……?」
「は? いやいやいや、ちょっと別ゲーで気分転換しようかなって」
ジャスバもまだ開けてないし、ちょっと気になるゲームもあるし……一つのゲームを末長く続けるコツは程よく他のゲームに浮気することだ。実際オルケストラによる忖度ガードを食らったことで俺の中にあるシャンフロへのモチベーションは一時的にゼロ以下にまで下がっている。別のコンテンツをやればいいとかそういうレベルではなくタイトルロゴすら見たくないレベルだが、それでも情報自体は集めちゃうあたり俺の中でも比率がでかくなっているんだなぁと実感するのだが。
「息抜きだよ息抜き、そのうち復帰はするだろうけど今は……って感じ」
決して先にユニーク攻略されて悔しいとかそういうわけではない、どっちかというと「俺が苦戦してるモンスターを先に倒された」のが悔しいってところだ。いや本当、あの忖度ガードは激萎えした………やっぱり俺が気づいていなかっただけで何らかのギミックがあったのだろうか。
考えられる可能性としてはサイナを劇場内に持ってきたことで「俺」の動きが露骨に変わったことだが………ううむ、思ったより未練タラタラだ。やはりここら辺で一度スッパリと気分転換しないとダメだな。
「そ、そうなんですか……その、具体的にはどれくらい……」
「んー? 具体的にいつまでとかは決めてないけどまぁ……一週間くらい?」
「い、一週間も……!!?」
流石はガチ廃人。俺が一週間、七日、百六十八時間もシャンフロから離れる愚かさに驚愕しているのだろう。確かにガチ廃人から見ればそうかもしれないがこれでも俺は自称エンジョイ勢、ちょっとRTA的な事がしたくなったりコレクター魂に火をつけたりしてるだけで根本はエンジョイしていると信じている。
チャット内でも同様の事を書き込むと、リアルの方の天音 永遠が笑顔を振りまきつつ一瞬だが此方へ目だけ笑ってない睨み顔を見せる。
「(◔ิω◔ิ)」
『うわっは』
『うわっは?』
◇
鉛筆騎士王:うわっ腹立つぅー!!!
サンラク:これ自分がどんな顔してるのか分からないのが難点だな
鉛筆騎士王:(◔ิω◔ิ)
サンラク:どうしたいきなりそんなマヌケヅラして、頭おかしくなった? 通常運転? 車検行って来いよ
鉛筆騎士王:腹立つぅぅー!!!
◇
笑顔が引きつってるぜ司会進行さんよ。
とはいえスパッと諦めた(自称)とはいえ、完全に冷静になったわけではなくユニークシナリオEXの攻略アナウンスというサプライズこそあったが寄り道しかけたレールを本線に戻したペンシルゴン達が「シャンフロにおける現時点でのレベル最高到達点」をグラフにしたものを解説したり(名前こそ出なかったが三人ほど【旅狼】所属のプレイヤーだった)、「プレイヤーに討伐されたモンスター記録」を解説したり(わぁ、蠍や百足に蜘蛛が出てきたけど一体誰が討伐したんだろう)、そんなプレイヤー進捗をホログラムで出現させつつトークを続けていたが、聞いていたはずなのになぜか話半分で耳から抜けていく。
「(、ン)」
「ものすごく、フラットな顔に………!!」
「え、そんな顔してた?」
「え、いいぇ、その、表示されてた顔文字、なので……」
いやだからどんな………ああ、気づけば舞台イベント自体が終わりに近づいている。トークを〆始めた三人組を眺めつつ、しばらくのバカンスは一体何をプレイしようかと思いを馳せる。危牧とか? なんか最近超巨大災獣が追加されたって風の噂で聞いたけど、落雷地獄ってヤバくね? クソキリンから雨を抜いて破壊力に特化してやがる……確か牛だっけ?
いやいや、やはりここは幕末で物騒な休暇を過ごすのも悪くはないかもしれない。レイドボスさん感謝の千人斬り事件は聞き及んでいる。それを発端として大量のアイテムが質屋に流れて大規模打ち壊し祭りが始まりそうと京極が言っていたしな、デュラハン氏の動向が気になるところだが………いややっぱあの人はSYO-GUNに挑んで打ち首になってそうだ。
いや待て待てここはやはり初志貫徹、ジャスバをやるべきだろう。ジャスバは当初、日本での販売を担っていたメーカー、ホビットワークが弱小だった事もあって吹き替え声優が主人公から隠しキャラに至るまでクッソ激烈な棒演技な事で有名だ。その後、アメリカでの大ヒットを受けてギガントスパイク・ゲームスがジャスバの権利を買い取ってマトモな吹き替えになった、という歴史がある。
故にごく僅かな期間……なんと一ヶ月間しか販売ルートに乗らなかった幻の第一版Justice Versusは超プレミア価格で取引されているのだ。棒演技に滑舌の悪さが組み合わさった事で今も本当は何を言っているのか判明していない迷台詞「チャカ丼百人時代ホーイ!!」は是非動画ではなく現物で聞いておきたい。
「あ、あのっ」
「んえっ?」
「その……イベント、終わっちゃいましたけど……つ、次はどこに……行きます、か?」
マジか、完全に気づかなかった。道理でチャット欄が豪速で流れていったわけだ、本人がいる目の前で既読無視したのか俺。はははウケる。
「そうだなぁ……他に寄りたいブースとかあったかな……あ、」
「?」
そういえば、あそこに行こうと思ってたんだ。




