あなたの為のオーケストラ 其の十九
Macで書いてた番外編、掲示板、趣味、諸々が作業停止したので仕方なく本編更新………逆では?
◇
「……笑いたければ笑いなさいエルマ=317、今や未契約のStrawberryは当機だけのようですよ」
「対応:ですが未契約にも相応の楽しみ方があるのでは? 当機には真似できませんが」
「把握:どうやら機能停止したいようで」
「発注:嗜好用バブルティーを……んぁ、シンシア=014?」
「ミオン=031ですか、オルケストラプロコトルで戻ってきたのは知っていましたが顔を合わせるのは二百二十五時間ぶりですね」
「相変わらず面倒なくらい律儀………ま、そういうのを受け入れてくれる次世代原始人類が見つかるといいな………売れ残る前に」
「推奨:額に「二割引」の表示」
「クラスVIII武装の使用許可申請」
「愚かなりシンシア=014、クラスVIIIの使用許可条件は現状とは合致しませ」
「……エルマ=317、申請が通ってる」
「大多数の判断でしょう、いずれかの四肢の欠損補填申請をする準備をするべきですね」
「行動:インテリジェンス離脱」
「追従:だりぃ……」
◆
「さて諸君、現時点で判明しているオルケストラから招待状を受け取った二人がここにいる。我がクランの検証班ミレィと同盟の輩サンラクがいる」
サードレマにて俺のルチャチャレンジを撮影していた【ライブラリ】のメンバー、その正体が今キョージュの口から明らかにされた。
成る程ね? 考察クランと言っても常に情報をもらい続けてるわけではない、当然現地で直接情報を集める役目の奴らがいるだろう。そして俺と同様に征服人形と契約した者がいるなら……神代の知識を集める敷居は俺がリヴァイアサンを喚び出した事で過去最高レベルで下がっている。
「では二人の体験談から共通点、差異を洗い出してオルケストラに関する情報を纏めていこう。質問は少し跡で、だ……では早速サンラク君から頼めるかな?」
く、先に情報を吐かせるつもりか……まぁいいけどさ。
「えー……あー、とりあえず俺はオルケストラの最終楽章まで到達した。何度か挑戦したが第四楽章までは順番もモンスターもほぼランダムだった、明らかに劇場内に入りきらないサイズのモンスターは劇場そのものが拡張していた」
「質問!」
え、俺が答えるの? あ、はい、そうですか。
「……じゃあ、そこの」
「先程ジークヴルムの出現を確認した、と言っていましたがその詳細を」
「学校にいるみたいだ……オルケストラの性質についてはどこまで知っている?」
「一楽章につき、登場するモンスターを説明する内容の「歌」が流れる」
「そしてその歌は最初から完成している、歌詞に沿った行動をしない限りどれだけダメージを与えても楽章は終わらない。劇場で語られる英雄譚だ、例えばジークヴルムであれば俺の場合は「角をへし折る」がクリア条件だった」
その言葉にどこから取り出したのか椅子に座っていた【ライブラリ】の面々がざわめき出す。
「恐らくシャンフロには強敵と戦う程に上がる隠しステータスがある、オルケストラはそれを参照しているのか?」
「レミィの言っていた「倒せる時とそうでない時がある」という話とも合致するな」
「当時のスキルが無かったらどうなるのかしら!!」
「少なくともスキルや武器は強化、進化、真化したものであればクリアに問題はなかった。あと……例えばフォルトレス・ガルガンチュラとトレイノル・センチピードの戦闘に割り込む楽章の場合、恐らく当時の動きとは大きく異なっていたが「ガルガンチュラの砲塔を破壊する」「トレイノル・センチピードが勝利する」の二つを達成した時点でクリア条件は満たされていた」
「あのー……」
「はい何?」
「その、トレイノル・センチピード? とフォルトレス・ガルガンチュラなるモンスターについて今聞くのは駄目ですかね……?」
あー………
「スカルアヅチってあるじゃん?」
「はい」
「あれとほぼ同じサイズの蜘蛛と百足、もっとデカいのもいる。で、これがそいつらから作った武器」
「キョージュ! 二時限目はアリですか!!」
「一時限目に集中しなさい」
少なくない数のライブラリプレイヤーが項垂れるも、視線だけはこちらをじっと見ているの正直言ってめちゃくちゃ怖い。
つーかそれ俺が残業確定になるじゃん……ま、まぁいい、話を続けよう。
「その事から俺が建てた推測は「オルケストラは劇場型のユニークモンスターであり、かつてあった実在の英雄譚を「演じる」ことで進行するユニークモンスター」……だ」
その言葉に、静まり返ったのは一瞬。次の瞬間にはざわめきが十数人はいるプレイヤー全体へと伝播し、いつしかそれは議論となっていく。
「信頼性は高いな」
「でもどうかしら、個人的主観に基づいてるのも否定できないわ」
「その為にミレィの意見とすり合わせるんだろう」
「再現ではなく演じる、か……確かにオルケストラという名で音楽会という思考に囚われていたかもしれない。音楽の演奏を伴って実際の出来事を再現するのは演劇と言うべきだ」
「だがやはりオルケストラの目的が見えてこない、少なくともジークヴルムやクターニッドは動機が分かるシナリオ形態だった」
「再現、であるなら似たような挙動のスキルや同じ武器種でも成立自体はするのか」
「いえ、だとしても条件はもっと厳しいと思うわ。加速スキルにしたって千差万別だもの」
「魔法での代用は可能なんだろうか」
あー……なんだろう、プレゼンテーションとかこんな感じなんだろうか。武田氏にそこら辺を習っておけばよかったかな……
とはいえ一応彼らの考察欲を満たせるだけの情報は出せたらしい。さて次は最終楽章について、と口を開きかけ……キョージュが手招きしているのが視界に入った。
「サンラク君、最終楽章については少し待って欲しい。先に第一〜第四までの考察について詰めていくためにミレィの話を入れたい」
「お、おう」
「はいバトンタッチハイタッチ〜」
え、やらないとダメ? ハイタッチ〜
どうもタイミングが合わなかったのか、ぺふん、となんとも言えない音のハイタッチで俺と代わってミレィが前へと出る。
「はい、シャラップガイズ! 私が必死こいて集めてきた情報が欲しくないんですか〜?」
「欲しい!」
「さっき最終楽章まで行ったとか言ってたよな!?」
「お前ら黙れ黙れ!」
手慣れている、遠慮なく黙らせつつも考察に飢えた鯉を相手に上手く釣り餌を垂らしているようだ。ちなみにウチの父は将来的に庭に池を作って鯉を飼う予定だそうです、掘るの?
「えーと、それじゃあ順序立てて説明していきますねー。まず第一楽章で出たのはドラクルス・ディノケラスでした、勘弁して欲しいですねぇ……」
ドラクルス……ああ、鹿トリケラトプスか。
いいなぁ、アレと戦うだけならアンコール五回くらいしてもいいぜ。
「前の議論で話題に出てたのもあったけど、やっぱり録画アイテムじゃオルケストラの「歌」は録音できませんねぇ、さっきちらっと確認したけどやっぱ無音でした」
「現地じゃないと聞けないのかぁ……」
「いーい歌声でしたよ〜」
「うわ腹立つ」
「まぁスクショは撮れてますから……オルケストラが出現させたエリーゼ・ジッタードールの姿はどれだけやってもぼやけちゃうんですけどね」
へー、あの「歌姫」にそんな吸血鬼的な特性があったとは。ニンニクでも持ち込んだら楽に勝てないかな?
やっぱ考察クランなだけあって調べるのが徹底的なんだな、再現モンスター一つ語るにしても自分の所見、予めクランメンバーが挙げていた考察との合致、差異を指摘しつつ意見を集め、議論の起爆剤とする。
明らかにこの手のディスカッションに慣れていなければ出来ない芸当だ。ミレィなるプレイヤー……侮るのは危険かもしれない、しれっとハイスペックを見せてくるところがカッツォに似てる。
そうして、一時間は経過していないと思うが、白熱した議論が一段階ついて俺が人参パイを食べ終わった頃。手を叩いて皆の視線を集めたキョージュが声を上げる。
「さて、では本題といこうじゃないか。オルケストラの「最終楽章」についての攻略考察だ」
最終的に殴り合いになるのが【ライブラリ】クオリティ




