あなたの為のオーケストラ 其の十八
Macの充電器から煙出てきたの面白すぎでしょ(錯乱)(笑い事じゃない)(充電手段、無し!)(データ残ってる?)
新調したなら使いたくなるのが人というもの、ついでに手っ取り早く今の俺の最適解を見ることができるという事でまたしても路線変更をしてオルケストラが潜むドールベースへと戻ったわけだが……
「なんじゃこりゃ」
黒板? なんでこんなものが……
「やぁ」
「エセ幼女?」
「人は咄嗟の反応に本音の断片を見せるというが……身も蓋もないね」
天地がひっくり返ってもそんなド低音の幼女はいねーよ。征服人形達の本拠地であるドールベースの一角に……そう、それはまさしく「教室」と言うべきスペースが組み上がっていたのだ。
そこでは武器こそ立派だが何故か浮いてる印象が拭えないプレイヤー達がなんと言うか、こう、知的な感じに盛り上がっていた。
「これまでに確認された再現体は六種類、やはりランダム選出なのでは?」
「いや、完全ランダムではないだろう。それなら旧大陸のエリアボスがもっと出てもおかしくはない」
「ラビリタウロスが出てユザーパードラゴンが出ないのも妙な話だけどね、強さ的にはユザーパードラゴンの方が強敵でしょ?」
「単純に強い順ってわけでもなさそうよね……オルケストラの「歌」に何か秘密がありそうだけれど」
「……ただ強いだけでは選ばれない。なぁ、ミレィってユザーパードラゴンを初めて倒した時って確か検証が終わったあとだったよな? 面倒だからってフルメンバーでボコした」
「そうか、苦戦したモンスターか! それなら説明がつく、オルケストが歌の題材にするだけの激闘が条件か!!」
「検証が必要だな、ミレィちゃんを"緋色の傷"と戦わせてみるのはどうだろう?」
「結果が敗北の戦いも反映されるのか? 現時点で非ユニークモンスターとはいえリュカオーンより倒し方が分かってない相手に時間を取るくらいならもっと試行回数を増やすべきだ」
「第一、再現体にアレが追加されたらミレィちゃん泣くでしょ」
「それよりも「招待状」持ちの数を増やすのが急務でしょうに。リヴァイアサンが解放された時点でオルケストラに挑めるプレイヤーももっといるはずでしょう?」
「バカ言え、そもそも征服人形との契約条件が半分フィーリングなんだぞ? ギャルゲー畑の検証班ですら苦戦してる中、偶然契約できたのがミレィだけなんだ」
「で、そのミレィさんと契約したレミィさんは何処に?」
「嗜好品として定義される飲料を破壊してくるって」
「………………ティーブレイク?」
「あのキャラ的にだらけに行くのをそれっぽく言い直しただけだな」
「やっぱ英語圏なんだよなぁ……」
エセ幼女ことキョージュがいることから薄々は気づいていたが、そこに広がっていたのは考察議論で盛り上がる【ライブラリ】の面々だった。
「もう追いついたのか」
「いやなに、メンバーの中にも征服人形と契約できた者がいてね」
……チッ、つまりライブラリに情報を流した時点で決定打になってたってことかよ。だが封雷の撃鉄・災による加速がある俺より先んじて到着するのは流石に無理だった、と。
「……で? この様子だと攻略は難航ってところで?」
「いやはや全く、君が苦戦しているだけのことはあるが……まぁ、我々の目的は単純に勝てばいいと言うわけでもないからね。自然、話が盛り上がってしまうのだよ……是非とも君の意見も聞かせて欲しいんだけどね?」
………どうする? 別にここで【ライブラリ】を殲滅してまでオルケストラを独占したいってわけじゃない。
それにオルケストラのシナリオ構造は極めてシンプルだ、だったらいっそ協力してしまうのも手か?
「よし分かった、俺の方もいくらか協力しよう」
「重畳……皆! 貴重な情報提供者が来てくれたぞ!」
ぞわ、と一斉に向けられた視線に背筋に震えが走る。オルケストラを思い出す、あれもなんか途中から視線を向けられる感じがするんだよな。
だがここでイニシアチブを取られるとまずい気がする、一気に情報を開示してマウントを取る!
「あー………クターニッド、ジークヴルム、レイドモンスター貪る大赤依の出現は確認した。オルケストラの楽章はプレイヤーが戦った強敵の再現であり、そしてその攻略法は行動の再現だ」
だが俺は勘違いしていた。鯉の群がる池に餌を放り込んだらどうなるか……ゾンビもの苦手な人って鯉も苦手らしいね、俺もそうなりそうだ。
「ユニークモンスターも対象なのか!?」
「ジークヴルムって……マジでジークヴルム?」
「やっぱりレイドモンスター倒したの君じゃないか!」
「あの変身アイテムについて詳しく!」
「今はオルケストラだろ! で、何回トライしたんだ?」
「ジークヴルムの再現……撃破ではない?」
「だから言っただろ! オルケストラはゲーム的というよりも吟遊的なんだよ!」
「となると敗北の結果でも再現の必要性が出てくる、のか?」
「じゃあ仮にモンスターAを倒す際に持っていた武器を喪失していた場合は? 激闘が条件なら今は雑魚のボスも出てくるかもしれない、当時のスキルが残ってないケースもあるはずだ」
「いや待て待て、オルケストラもレイドモンスターも需要だが彼は前線拠点でリヴァイアサンから最初に出てきたプレイヤーだぞ? どう考えても出現にも関わってるんじゃないか?」
「そうだ! 「勇魚」なるナビゲーターに問い詰めたが特殊なビーコンが必要だって!!」
「それをくれとは言わないけど、どこで手に入れたのかは是非とも聞きたいわね」
「いやそれよりもレイドモンスターだ! 新大陸側のレイドモンスターについて我々はあまりに無知だ!!」
「いやいや待て待て、ユニークモンスターについて聞くべきだ。どう考えても彼は七体目の情報を掴んでいる!」
「どうでもいいけど一瞬噂になったメジェド様ってやっぱ君なの?」
「私、ライブラリで海洋メインなんだけどアラバ様が言ってた深海の帝王について知りたーい!」
「いーや! あの炎の槍みたいな魔剣について!!」
「遺機装メインで考察してます! 何か一言!!」
「あ、それ私もきになる!!」
「古匠と繋がりがあるんですよね!?」
「レイド───」
「ユニーク───」
「武器───」
よし、逃げよう。
驚く程すとんと胸に収まった結論に従って、もはや無意識で正確に左胸の起動トリガーの為に必要な打撃点を狙えるようになった右親指を……
がしっ
「今しばらくお待ちを、教授の「授業」が始まりますので」
「お前は……」
だが、逃走のために動いた右腕を掴んで抑える人物……確か、セートとかいうプレイヤーがそう告げる。
「クラン外の方には異様に見えるかもしれませんが、ウチはこれで通常運転なんですよ」
「蠱毒の壺かよ……」
「ふふ、であるなら厳選された考察を扱えるのもあの人だけですよ」
ぱしん、と乾いた音がやけにはっきりと響く。日曜日の朝とかにいそうな姿をした幼子が、幼子が見せる顔ではない……年季と知性に満ちた笑みを見せながら口を開く。
「静粛に、静粛に生徒諸君。君達の言葉はそのまま私の代弁でもあるが……折角オルケストラのお膝元にいるんだ、帰ってきた彼女も含めて……攻略を始めようじゃないか」
「いやぁ、負けました負けました。でも最終楽章まで………あれ、ミスタードラッグカー?」
「止まれねーし曲がれねーってか、喧嘩売ってんのか……って、あ」
こいつ、確かサードレマにいた……!!
人これを「身から出た錆」と言う




