あなたの為のオーケストラ 其の十五
虚空をクリックして寝たら平成31年5月1日に飛ばされていたので戻ってくるまで時間がかかりました、ゴメンナサイ
時間を金で買えた試しはない……(至言)
現物を持っていくのは流石にやめてほしい、との事でペンシルゴンから半ば無理やり持たされたスクショアイテムで地図を撮影する。
その上で改めて地図を精査、流石に地図記号やオススメ観光ルートが書かれている筈もないが、それでもこの世界、この大陸の大まかな環境を推し量る事はできる。
「東から南にかけてはほぼ樹海なのか……」
大陸中央部の右側は砂漠、蟲人族の住んでいるところだろう。
その少し下に灰色……あ、湿地帯か? 確か秋津茜がノワルリンドと遭遇した場所だ。
さらにその下は砂漠……あ、違うなこれ、規模がでかすぎるだけで海岸なのか?
「ヤバいな……これ見てるだけで時間潰せそう」
「そうか……時にアラドヴァルのサンラクよ」
「あん?」
「お前は……旅兎ヴァイスアッシュと、会える立場にあるのか?」
「んー……まぁ、そうだな」
意図的に遭遇を狙うならヴォーパル魂上げないといけないから蠍か百足蜘蛛コースなんだが、まぁ会えないってわけではないな。
「そうか………」
ディルナディアは何故か言い澱むように言葉を詰まらせていたが、意を決したように口を開いた。
「これは、ドルダナ本人が望んだものではない、と聞いている」
「………?」
「ドルダナが死出の戦いに赴く直前、村の者に遺した言葉があった。ドルダナはすぐに忘れてくれと言ったそうだが……その言葉は、今に至るまで受け継がれているのだ」
遺した言葉……即ち、遺言。
「ドルダナの意に反する事は承知している、だがそれでも……私は、伝えるべきだと、思った」
「………今の事は今の奴等が決める事さ、お前がそうしたいと思ったなら……な?」
「では……ヴァイスアッシュ殿に、この言葉を送り届けてほしい」
───死せど、離れど。
「…………」
「頼んだ」
たった七文字、そこにどれだけの感情が込められているのか。もしかしたら何か暗号のようなものなのかも? だが、うん、おおよそ俺が思っている意味で間違いはない気がする。
「確かに伝えよう」
さて、そろそろラビッツに戻るか。デカいお届けものまで預かってしまったしとりあえずヴォーパル魂が不安だから帰り道でどこか寄って稼ぐか………
「いやいやいやいや」
トウショノ・モクテーキ!!(1204〜1254)
危ねぇ、いきなり致命兎叙事詩の方に進路変更したせいで目的ごと忘却するところだった。
「ディルナディア、巨人族に伝わる武術とか……こう、流派的なものってあるのか?」
「流派?」
……
…………
いや知ってましたよ? そりゃ名前の前に武器の種類やら名前やら付けちゃう種族だもんな? そりゃ流派も武器前提だわな? それにやたらMP要求するっぽいからどちらにせよ無理だし? はーつっかえねぇ!!
「ワゴンの中から名作クソゲー見つけたけど目的のクソゲーは見つけられなかった気分だ」
ハイジャック・バレットスカイを見つけた時もそんな感じだったな、不死身の衛生兵やらなんやらゲームバランスはゴミだったけどフレと一緒にやるとどちゃくそに楽しいんだこれが……ゲームバランスはゴミだったけど。
あれは売り切り売り逃げで製作側がクソ対応だったのがいかんな、今のご時世アプデ一回で終わりとか信じられねぇ……後で調べたらCEOが変わってゲーム部門から無理やり撤退したんだっけ? ユートピアコンピュータエンターテイメントに張り合ってVRシステム開発競争という名のチキンレースで崖から落ちてちゃ世話ねーわ。
「まずいな……芯がブレてる」
やる事が……やる事が多すぎる……! そして優先度はほぼ拮抗してる状態……いや、天秤は既に傾きつつある。
片や未だ全貌の明らかになっていないEXシナリオ、片や再挑戦可能な事が判明しているEXシナリオ…………ぬぅ。
「ぬ、ぐ、むむむむむむ…………ええい!!」
人事尽くして天命を待つ! 天が命じたから俺に責任は生じないと書いて天命と読むのだ!! 人事を尽くしているかは別として伝統的裁定法を用いよう!!
「出でよアラドヴァル!」
そして空にぶん投げる。刺さったら致命兎叙事詩! 転がったらあなたに捧ぐ旋律!
黒曜の刃がクルクルと円を描きながら地面に落ちて………
「よしエムル、方針が決まったぞ」
「み、耳がまだキンキンするですわ……」
「ラビッツに戻る……前に、ヴォーパル魂か。久し振りに水晶巣崖行くぞ!!」
「は、はいなっ!」
引き抜いたアラドヴァルを振って土を払い、インベントリアに戻しながら歩き出す。このままラビッツに直行してもいいがオルケストラの性質的に水晶群蠍関連について復習するのも悪かない。
「一旦流派巡りの旅は中断だ、この俺の華麗なる球技を見せてやろう……」
数多の苦難を乗り越えた今の俺は奴らですら予測不可能な動きで跳ね回る。そうそれ即ち……
今日はアメフトだ。
◇
「やぁミレィ、思っていたよりも早かったね」
「むしろ私的にはなんでキョージュ達の方が先に到着してるのか、って方が驚きなんですけどねー」
「リヴァイアサンの産物は中々に素晴らしいという事だね、急激な文明の発展は喜びと恐怖を半々で抱かせる。うん、稀有な体験だ」
「無免許だけど大丈夫ですかねぇ」
「リアルでも乗れる、と思い上がらなければ戦闘機だって乗り回せるのがVRというカテゴリなのだろう?」
「教授、やはり先に来ていたようです」
「うーむ……極まったプレイヤーが人間離れした身体能力を発揮することは承知しているが……樹海を踏破するとは」
「いやぁ、実はここに来る前に噂の彼を見てきたんですけど……あれは凄いですよ、リキャストを短縮する能力みたいなのありましたよね? あれと絡めたら空を飛んで大陸横断もできそうでしたよ」
「無論、撮影しているのだよね?」
「本人もノリノリなヤツがありますよキョージュ」
「さて……ミレィ君の仮説が正しければオルケストラはウェザエモンと同様の再挑戦が可能なタイプのユニークシナリオだ。現状「ライブラリ」で条件を満たしているのは君だけである以上……」
「承知してますよ図書館の長、私は「ライブラリ」じゃそっちが本業ですし」
「うむ、迷惑をかけるね……それでは諸君! 「冥響のオルケストラ」検証及び考察を始めよう!」
基本的に亜人種の流派はその種族の特性に依存してます
マナの吸収量が高く肉体の成長という形でマナを消費する巨人族は武器を肉体と定義してスキルを武器に干渉させる流派ですし、魚人族は水流に干渉する事で武器や自身への抵抗を軽減する流派なわけです
つまり何が言いたいか……原則的に「改宗」前提なんですよね、亜人流派
・ハイジャック・バレットスカイ
不死身の衛生兵によるお前がゾンビFPS、ついにその全貌が明らかになる(設定が固まったとも言う)
謎のバイオテロにより米国首脳陣のみならず国民全てを鏖殺してのけた「死せる日」……人類の制御を失い、AI操作により世界中の国境を無視して彷徨い続ける巨大飛行空母「エルヴィン」。
しかし、彷徨う空母の最奥に米国を滅ぼしたバイオ兵器の設計図が存在する事が明らかとなり、世界各国は空母エルヴィンの「鹵獲」を目論み動き出す……!!
なお現実は製作した会社が無理な舵取りをしたせいで轟沈し、有志の手によってかろうじてサーバーは残るもバグが修正されないせいで全身炎上しようが細菌兵器が充満する空間で深呼吸しようが至近距離でグレネードが直撃しようが「欠損描写がない」「体力がゼロになりアバターが消失するまでに行動可能な空白の時間がある」という要素が組み合わさった事で事実上不死身の衛生兵が死なずの泥試合を繰り広げる無限蠱毒が誕生した。
ちなみに衛生兵を唯一殺す方法は空中空母から叩き落とす(確定でリスポンするため)




