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あなたの為のレクイエム 前編

さて、土古戦場か……(身体が闘争を求める)

ドルダナ is 誰。


アラドヴァル君には申し訳ないが俺がドルダナ氏へ抱く印象は「属性相性ミスって死んだ推定オッサン」である。最後に何をして死んだのか、はアラドヴァルが突き刺さっていた状況からなんとなく察せられるが……ここはひとつカマをかけてみよう。


「巨人族諸君、勇猛な竜狩りの戦士諸君、武器と共に生きる諸君。諸君らはドルダナについてどれ程知っている?」


「それはもう、オディヌに匹敵する英雄ぞ!」


「おう、鎮護のオディヌと放浪のドルダナ、二人の物語を知らぬ巨人族はおらぬだろうよ!!」


「晩年は穏やかに過ごしていたと聞くが……」


「未曾有の災禍に立ち向かい消える……まさに誉れよ!!」


うーん、参考にならねぇ。ただゴルドゥニーネに挑む直前は隠居状態ってのは分かった。よし構築し(でっちあげ)ていこうか。


「アラドヴァルのドルダナ、その勇名もかつての話……彼は晩年、アラドヴァルを携えながらも穏やかに暮らしていた……」


正直この中にドルダナと同年代の奴がいたら詰みなのだが……推定不老不死なヴァッシュの古い友人、なら相当古い世代であるはず。


「だが奴は現れた、諸君らは奴を知っているか!!」


ここで大声を上げる。ボスキャラの登場だ、プレイヤー相手ならシュールな描写でもいいかもしれないがNPC……メタ視点を持たない連中相手なら物語上の重要人物は大々的に描くべきなのだ。


「その名はゴルドゥニーネ、あらゆる命を憎悪し、毒を呪いを撒き散らす白蛇の者!」


「ワシは知っておるぞ、西果(さいは)ての悪夢!」


「西果ての悪夢……頭が四つある怪物と聞いたが」


ここで差し込む!


「いいや違うぞ、その正体は四体の龍蛇ナーガを従えた女だ。この身体と同じ程度の人の姿をしている」


「何故そんなことを知っているんだ?」


「おいおいフィオネ……俺がどこからアラドヴァルを引き抜いてきたと思ってんだ? 戦ってきたんだよ」


まぁ結果だけ見るとボコボコにされた形だが……実質勝ちみたいなところあるからセーフ。

だが俺がゴルドゥニーネと戦ってきた、という事実は巨人族達の視線に敬意を混ぜるくらいには力があるらしい。良いぞ良いぞ、もっと褒め称えろ。


「この剣はある場所に深く深く突き立てられていた、それこそがドルダナ最期の戦いを証明する何よりの証拠だ」


視線を集める、雑談が消えて全ての巨人族が俺を見たのを見計らい……吟遊再開。


「このアラドヴァルは龍蛇の一体、その胴に深く深く突き刺さっていたものだ。では諸君、勇猛果敢なる諸君らが老いて尚生き延びていたとして、その身が軋み情けないほどに身体が動かなくなったとして……己が故郷に山河を抉り大地を削る龍蛇が牙を剥いて現れたならば、どうする諸君?」


「無論戦うぞ!」


「おう! 拳砕け刃欠けるまで!」


「それこそが巨人族(ギガント)の栄光!!」


「そうだ! その通りだ諸君!! アラドヴァルのドルダナは立ち上がったのだ!!」


アラドヴァル・リビルドの切っ先を天に向けて掲げれば、おおおおお! と巨人族達が喝采を上げる。


「山河喰らいの蛇など何するものぞ! 竜狩りの英雄が恐るるには翼も爪も足りぬではないか!!」


ガンガン! ガンゴン!! と興奮した巨人族が己の相棒を床に叩きつけて高揚を表現する。ちなみに二発目はディルナディアのお仕置き拳骨が落ちた音である。床にヒビ入れたらあかんよ。


「軋む身体に喝を入れ、とうに消え果てた情熱を、心の炉に入れ再び燃やす! アラドヴァルもまた主に応える! 煌々と燃え上がる炎こそが何よりの証左!!」


「おお! 我らが英雄!!」


「竜を焼く英雄の炎!!」


「ええい酒もってこい!!!」


ポップコーンとコーラにしとけ、でもキャラメル味と炭酸のコンボを決めると尿意へのカウントダウンが爆速になるから注意な。そもそもポップコーンが口の中から水分を奪っていくからジュースの減りが加速するわけで………おっといけない。


「勝てぬ事は百も承知、全盛の頃とて決死は必定……ならば老いた英雄は賢く逃げるのか?」


「否!!!」


「そうだとも! ドルダナは逃げなかった!! 己よりも遥かに巨大! 己よりも遥かに悪辣! すなわち巨悪と相対して尚、英雄の誉れに陰りは無い!!」


王道とは真っ直ぐブレないお約束だ、奇をてらう必要はないのだ。

こっちが引くくらい盛り上がってきた巨人族達にはよ続きを、と見つめられては吟遊ロールも捗るというもの。


「灯せ情熱! 猛れ熱血! 老いたる英傑は果敢に立ち向かった! 恐るる事はない、ドルダナとアラドヴァルが共にあれば、千の竜とて討ち取ってみせよう!!!」


───だが。


そう、ここから先は「だが」で始まる。

過去編特有の暗い展開だ、属性相性をロクに調べず突っ込んでくたばったというしょーもない結末を、悲しくも雄々しく、苦しくも清々しく……デコレーションしてトッピングしてカスタマイズしてお客に出せるものにしてやらねばならんのだ。


「だが諸君、既に薄々なりとも感づいているだろう諸君……アラドヴァルは今、我が手にある。ドルダナの手より離れたアラドヴァルは……悲しい程に朽ち果てていた」


その言葉を告げた瞬間、巨人族たちの喧騒がぴたりと止んだ。そうだろう、どれだけ脚色盛り合わせにしたって結末だけは変えられない。だからせめて餞に名誉を盛ってやるのさ。


「おお忌まわしき龍蛇(ナーガ)。空を飛ばず、爪で切り裂かず、足で踏ん張ることもできない…………それ故に、彼奴らは竜ではなく、蛇だった……」


ああっ! と巨人族の一人が悲痛な声を上げる。見た目は綺麗な女性でもサイズがでかすぎて一々ビビるんだよなぁ。くしゃみの風圧で吹っ飛ばされそうな怖さがある。


「アラドヴァルは竜を滅ぼす炎。さりとて他の敵に無力というわけでもない……だが、だが……龍蛇を焼くには、力及ばず……ドルダナの身体は、取り返しのつかないほどに傷ついていく」


少なくとも最後にぶっ刺すくらいの体力はあったっぽいしここからの描写は頭を使わないといけないな。


「俺は龍蛇をこの目で見た。あまりに巨大、あまりに長大……おお、その時俺は直感的に理解した! ドルダナもきっと、あの恐ろしき牙に屈したのだと」


悲痛な雰囲気が「大使館」に広がる、なにせここから先はドルダナが敗北し死に至るまでの過程だ。ここに関しては十割脚色というか想像だが、まぁおおよそ間違ってはないだろう。


「片腕を食い千切られた、脇腹を抉られた、邪悪な毒が身体を巡り、錆び軋む身体が絶叫を上げる」


「おお、そんな……」


「覆せぬ死の毒が身体を巡る痛みを知っているか? 己が命の足掻きを組み伏せ、動かなくなるまで痛めつけるかのような、身体以上に心を蝕む激痛を………」


このゲームをプレイしてる中で毒を食らって死んだケースは蠍の消化毒も含めたら指一本を10と定義しても片手じゃ数え切れないくらいだが、少なくともゴルドゥニーネの毒に直撃すると実際どうなるのかとかよく分からないんだよね。

いや、ラビッツ防衛線のヴォーパルバニーの様子的に身体にヒビが入る感じでデバフが付くんだろうけど。


「ゴルドゥニーネは亀裂を刻む、蝕む毒は命を砕く。命よ滅べ、その身の爪先に至るまで砕け散れ……如何程の憎しみがその毒を生み出すのか、俺には分からない」


ユニークシナリオEXを進めてないからな、あとウィンプがウィンプ(・・・・)なので参考にならないってのもある。引きこもりのコミュ障が外に出るのを嫌がる系の嫌悪だからなアイツの人嫌い。さしずめ俺は飯を運ぶ親か、叩き出したろかあんにゃろー。


おおドルダナ、お前は一体どんな風にくたばった?

龍蛇四体にあの(・・)ゴルドゥニーネだ、野晒しならマシだろう。喰われたが、踏まれてすり潰されたか……


きっと巨人族達もその光景が目に浮かんだのだろう、瞑目し反応を見せないディルナディアを除いて彼らのテンションは最低値まで下がりきっている。





「だが、アラドヴァルの炎は消えてなどいなかった」


だが安心しろドルダナ、(はなむけ)と言っただろう。現在を語る上で無為じゃないからこそ過去編には価値がある、需要がある!

ここからがクライマックスだ、九十九割増しで盛り上げてやる!!


Q.なんでサンラクこんなに吟遊ロールできるの?

A.一時期ペンシルゴンがTRPGにどハマりしてたので巻き添えでカッツォもサンラクもロールプレイしまくってた時期がある

邪悪なロールプレイとしてディプスロという前例もあったので感情を込める「点」が直感的に分かる




それと吟遊天誅

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― 新着の感想 ―
盛り上げうま過ぎる! あと吟遊天誅何!?
吟遊天誅....?
男女が分からん時は『彼』ではなく『彼の者』と言った方が誤魔化しやすいかも
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