あなたの為のオーケストラ 其の十一
平成最後に地獄の風古戦場!!!!!!!
五時間経過時点で前回のボーダーの二倍ってどういう事なんですか!!!!!!!!!!!
10ポチ1召喚で2000万な私にどうしろってんですか!!!!!!!!!!
あ、はい、逃げてないです。魔物さんが休憩中なので、はい、はい
ディルモントン流。
奥義「轟響掌」……対モンスターを想定しているので不適切。
アグロッソ流。
奥義「ボルテクス」……対人想定の投げ技だが単刀直入に言うと「大時化」の下位互換、不適切。
無刀身刃流。
奥義「阿修羅連斬手」……連続手刀、非常に強力ではあるが背後に回られると絶望的に無防備、残念ながら不適切。
流星翔脚流。
奥義「流星の一撃」……プレイヤーが創始した流派、ということで興味深かったが蓋を開けたら単なるシルヴィア・ゴールドバーグのフォロワーだった、強いてコメントするならあの怪物が特定の動きに固執するなら俺もカッツォもアメリア・サリヴァンも苦戦しない。必殺技を必殺たらしめるから奴はリアルミーティアスなのだ、不適切。
バットで殴れば大体勝てる流。
奥義「フクロダタキ」……同じくプレイヤー創始、ある種の真理ではあるが泣く泣く断念、大振りすぎなんだよ……不適切。
王国騎士格闘術。
奥義「甲冑組手」……興味深い、鎧を装着した前提で組手術という点でもしやと思ったがカウンター特化な上に動きが遅すぎた。しかしながら対武器を想定したカウンター戦法は役立ちそうなので見様見真似の候補とするのはアリ、不適切(※)。
三神教僧拳流
奥義「七色混合【虹彩迫撃】」……カッツォと被るの嫌だからボツ。
………………
…………
……
「くそー……」
どの流派も弱いってわけじゃないんだ、俺が求める限定的状況にピッタリ嵌るものがない、似た形だが嵌り込まないジグソーパズルみたいなものだ。あと一つ、何か足りないそれが埋まれば……
「そうだよなエムル」
「サンラクサン、そうやってすーぐ自分の中で完結してから質問するですわ……」
「また世界から抜きん出てしまったか……」
「……はみ出し者の間違いじゃないですわ? ほびょびょびょびょびょ!!!」
このやろー、その頰をハムスター並に広げてやろうかこのやろー。
ぐにぐにと頭に乗せたエムルの頬を捏ねて伸ばしつつ、俺は眼科で繰り広げられる光景に目を細める。
「いやしかし……すごいなアレ、無双ゲーじゃん」
ここはサードレマ、ある意味今新大陸で最もホットな最前線と化した城塞都市の外壁だ。
─── 彷徨う大疫青。
旧大陸側の「青」を担うレイドモンスターであり、出現と同時に遭遇したプレイヤーを軒並み秒殺……否、病殺しながらサードレマへと単騎駆けで侵攻する痩せこけた馬。
最大参加数1000という馬鹿げた定員数は、単純に膂力があるとかそういうわけではなくあの特殊すぎる戦闘ギミックに起因している。
「見ろよエムル、あれ装備からして結構高レベルだぞ」
「なんかやけに自信満々ですわ?」
多分、毒耐性とか高めてるんだろうな……なんか装備の見た目がそれっぽい。ここからだと遠すぎてステータスや名前は見えないがやけに自信満々な姿は俺達こそが英雄になると言わんばかりの様子だ。
「ゴルゴーバジリスクの装備ですね、あれは通常の毒だけではなく石化などの特殊な状態異常も封じますから……」
「石化あんの?」
「本当に石になるわけではなく、筋肉が硬直するタイプですね。ある程度検証しましたが電磁波のようなものを飛ばしてるんじゃないかとは言われてます」
……で、誰だこの人。
「……あー、そっか顔知ってるのは一方通行か。どうも、【ライブラリ】です」
「あ、どうも」
軽く会釈、なんでこんなところに最前線のクランメンバーがいるのかなんて考えるだけ無駄だしいけに、もとい勇者君達の勇姿に視線を戻す。
対策装備に身を包んだ五人のプレイヤーがずんずんと前へ進み、痩せた青馬はそれに対して大きく敵意を見せるわけでもなくカッポカッポと進んで……
「あ、「範囲」に入りましたね」
「体力の上限が削れるんだっけ?」
「ですねー、レベル99で大体五秒……彼らだと八秒くらい?」
そう、彷徨う大疫青が持つ最大の特徴こそがそれ。対象のレベルに応じて減少量及び減少速度が増加する、体力そのものではなく体力の上限値を削る「病」だ。
何が厄介って上限、例えるならバケツそのもののサイズを小さくされているわけだから回復手段が存在しない事だ。
「しかも近づけば近づくほど併発していくという……」
「あ、一人崩れた」
「症状的に肺がやられましたかねアレ、フルマラソン後くらいの息苦しさで噎せるらしいですよ」
「地味に嫌だなそれ……」
地面に崩れ落ち、激しく咳き込みながら消えていった一人を引いて残り四人、大疫青まで残り二十メートルくらい?
だがさらにもう一人脱落した、抑えてる場所は胸……あっ、もしかしなくても
「心停止ですねー、女性プレイヤーの方から聞きましたけど左胸だけサイズが違うブラジャー付けてるみたいな息苦しさらしいです」
「男には基本理解できない例えだな……」
「私女だけどちょっと理解できないですねー」
沈黙。
ここで選択肢ミスると何かとてもひどいことになりそうなのでパスを選択する。
「お、中距離職の射程に入った」
「あー……魔法職……」
「何か不都合でも?」
まさか魔法耐性でもあるのか。そんな考えが頭をよぎる中、見下ろした先の魔法使いが魔法を詠唱し……爆発した。
「ん?」
「あの人達マジであの装備だけで対策したつもりだったんですねぇ……「発症」した者が使う魔法は暴走状態で発露するんですよアレ」
「実質魔法封じかよ」
「いやそーでもないですね、低レベル帯のプレイヤーなら単純な火力強化ですし。まぁ、多少の自傷ダメージは入りますけど」
あと二人、大疫青まではあと五メートル。残ったのはタンクが二人だけ、VITの高さか? 確かこのゲーム、病気への免疫とかもVIT依存だった気がする。
「近距離の射程に入ったけど……」
「まぁ、レイドモンスターですからねぇ……」
参加定員千人、実際に一騎当千の怪物というわけでもなさそうだが少なくともプレイヤー二人で削りきれる体力でもあるまい。
一人が大疫青が口から履いた青黒い瘴気に直撃して痙攣しながら倒れ、もう一人が頭を丸ごと大疫青に噛み掴まれて……あそーれびたーん、びたーん……
「はい」
「いやはい、じゃないが」
「レベル50以上が足手まといになる逆方向の足切りですし、五人で突っ込んだ時点で結果は割と見えてましたよねっていう」
「軽く五人死んでるけど開拓者の人らはそこらへん乾いてるですわ……」
プレイヤーの命の単価はNPCの命と比較しても一割以下だからな、しゃーない切り替えていけ。
「やっぱ最適解は袋叩きなのか?」
「ですねー、理想はレベル30くらいのプレイヤーで千人固めて屍を踏み越えさせる感じで」
「血生臭いし泥臭すぎる絵面だ……」
雑魚でも戦えるレイドモンスター、その実情は塵も積もれば山となるを文字通りの意味で突きつけてくるってわけだ。うーん、このクソモンス。
「ただヤバいんですよねー今」
「何が?」
「最初に彷徨う大疫青が出現したのはもっと遠くなんですよね、そっから存在が判明して何人か突っ込んで検証して……もうここから姿形がはっきり見えるくらい近づかれてます」
「……もしかしなくても、拠点防衛的にまずい?」
「首筋にナイフくらいにはまずいですよねぇ、あっはっは」
世間一般にそれは詰みなのでは……このゲームの運営ならマジで滅ぼすぞサードレマ。
「まー意思統一が出来ないこと出来ないこと、始めたばかりだから仕方ないのは分かるんですけどねー……皆好き勝手に突っ込む上にログイン時間的にもムラがあるからスケジュール穴だらけっていう……」
あー、レイドモンスターなんて基本大縄跳びだもんな……歯抜け虫食い穴空きはつれーわ。んー……
「なぁ、あれってさ……あーいや、こう言った方がいいかな」
「何です?」
「【最大速度】込みの検証やってみない?」
「いいですねぇ!!」
流石は考察クラン、ノリがいい………さて? ちょっと憂さ晴らしにつきあってくれよな、彷徨う大疫青。
・彷徨う大疫青
旧大陸側のレイドモンスターにしてライト・ブルー。直接的戦闘力で言えば左方の青、皆んな大好き狂える大群青には遥かに劣るものの、アイテールの「免疫器官」の役割を果たす眷族たる大疫青はマナ粒子を介してあらゆる生物のマナへの免疫を変動させる。
それは封臓の機能不全という形で発症し、一号と二号に属する生命は様々な形で悪影響を受ける。
───嗤う馬の吐息は、神代の人々が全てを賭して成し遂げた偉業をいとも容易く踏み躙る。




