人形劇を経て、音楽会
誰かあいつから弓を取り上げろ(魂の叫び)
二徹して尚あまりに勝てなさ過ぎて作品がエタりそうなので更新です。
ガスコインやマリア様クラスの奴が普通にそこらを歩いてる戦国怖過ぎない?
加速モード、それはサイナをインベントリアに収納した状態で俺がエムルを担いでひたすら走るモードである。
「ふ、ふふふ……ふははー! 見るですわっ! ピーツからパチってきた痺れ除けのお守りですわーっ!!」
「姉特権フル活用してんなお前」
もはやエムルさん、痺れる方が重要であって加速した状態でジェットコースターまがいの挙動で運ばれる事については気にしていないらしい。よよよ、涙が出るほど同情湧かないからせめて草葉の陰で鼻かんどくね……
「さて……星の位置からおおよその方角を割り出して走ってきたわけだが……」
はて、目印にした星はどこに行った? やはりなんちゃって星見とかするもんじゃないね。
「サイナ、あとどんくらい?」
「……インベントリアの座標から契約者の移動ルートを割り出しました」
うんうん、それで?
「恐ろしい程に直線の軌道で進んでいます」
まぁ、障害物とかあってないような感じで移動してたからな……こう、木々を飛び移る感じで。
「誘導: 事務所まで残り……200m」
結構近所だったわ、というか二百ならそろそろ見えるかと思ってたんだが……地下?
その答えは、近くに来てようやく分かった。
「あー、ご丁寧に木の高さで誤魔化してただけでここで一段下がってるのか」
今まで俺が走っていた場所からしばらく進んだところでただでさえ鬱陶しいくらいに茂っている大樹の高さが倍近くになっている。本来ならその全高で壁のように俺の前に立ち塞がるはずの大樹は、地形そのものが階段のように一段下がっている事で上段の木と背の高さを合わせているようだ。
はて、自然にこんな光景が出来るはずもなし。まさかここに来てついにゲーム的配慮……と思っていたら何やら追加武装で空高く舞い上がった征服人形が大太刀で育ちすぎた枝を切り落としていた。
なにその地形規模の庭師、時給いくら?
「こちらです」
「おお……これは中々」
ここに来る前にリヴァイアサンとか言う特大SFを見たせいで若干霞んでいる感は否めないが……成る程、地形の段差を利用して表面上は見えない感じに建物があるのか。
地形の段差を利用して壁面に埋まるようにして存在するその場所こそが征服人形達の本拠地……事務所と書いてドールフロントと読む施設であるらしい。
「ただ、こういう秘密基地感のある場所は規模を問わずワクワクしてしまう少年ハート……」
「秘密基地、という定義はあながち間違いではありません。我々の使命は次世代原始人類から秘匿すべきものであるのも事実ですので」
ふぅん………あ、これもしかしなくてもライブラリ案件か? いや今は展開を楽しんでいこう。
サイナの案内の元、切り立った崖の縁まで来た俺は謎浮力で浮かび上がった板が階段の形に成形されていくのを特に感情を動かすこともなく……いやこれはすげーだろ、いいねSFポイント稼いでくねぇ。
水晶質な螺旋階段を降り、どこか発着場のような気配を漂わせるひらけた空間に足をつけた俺+エムルはサイナの導きのままにドールフロントを進みながら……ある種ネタバレになるが故に聞きづらかったそれを遂に聞く。
「なぁ、何となく聞きづらかったがこの際聞くけど……オルケストラって、何?」
「前提説明から始めても?」
「構わんよ」
征服人形のほとんどが前線拠点の方へと行ったためか、広さの割に妙に数の少ない征服人形達に見られつつも、進む道のりはいつしか螺旋状に下へと続く緩やかな坂道へと変わっていた。
「───情報開示申請:契約者情報送信:第一認可、第二認可、第三認可……説明を開始します。我々は現在、3つのプロトコルを基礎として行動しています。一つは来たる危機に対して次世代原始人類をサポートする「再征服」計画……」
次に、とサイナは見てくれと言わんばかりにガラス張りの壁を指差す。
「次に、次世代原始人類の手に余る神代人類の遺産をあらかじめ確保、保管する「蒐集」計画」
たとえば戦闘機のような巨大な機械、たとえばヤシロバード辺りが真面目にガラス窓の破壊を目論みそうな携行式ガトリング。他にもまだまだあるファンタジーの「ファ」の字も感じさせないような科学技術の塊が、そこには保管されていた。
サイナの口振りからして、猿に銃を持たせるわけにはいかないとかそういう事だろうか?
「分不相応なアイテムの存在は無用な争いを生み出す……星の海に旅立つ前の神代人類が、厳密には我ら征服人形を生み出した創造主アンドリュー・ジッタードールが結論とした思想に基づき、我々は現在も回収作業を行なっています。尤も、リヴァイアサンが出現した時点でこの計画に意味はないのかもしれませんが」
そして最後に、とサイナは立ち止まる。気づけば長い通路は終点のようで、そこには巨大な……しかしながら、基本的に金属で形成されたドールフロント内部にはあまりに似つかわしくない木造の「門」がそこにはあった。
「……そして、プロトコル「オルケストラ」。これは「再征服」及び「蒐集」、二つのプロトコルを前提として征服人形とオルケストラとの間で定められた規定です」
「オルケストラ「と」……?」
いやそこまでおかしいわけではないだろう。少なくともこれまで遭遇してきたユニークモンスターの中で明らかに言葉が通じないのはリュカオーンだけだった。話が通じない、という意味ではウェザエモンやゴルドゥニーネ(ボスの方)も大概だが……オルケストラも言葉が通じるタイプのユニークモンスターなのか?
「この扉は、オルケストラによって変質させられたものと聞き及んでいます。元は金属製であったと」
「物質の改変?」
「否定:現実の「侵食」です。かつて神代を滅ぼしたマナの奇跡とも異なる………神代の一端を担う征服人形千基による並列分散リンクですら原理不明、正真正銘の「オカルト」ですよ」
「ふびゃっ!?」
「うおっ、どうしたエムル」
その時、頭の上に乗っていたエムルが突然弾き飛ばされた。ダメージが入った、というわけではないようだが……何が起きた?
「どうやら開演の時間のようです。契約者、オルケストラに会う事が出来るのは招待状を受け取った者のみなのです」
ぎぎぎ、と誰が触れているわけでもない木の門がひとりでに開き始める。
床に転がったエムルを雑に拾い上げてべしべしと埃を払いながらサイナは俺の目を真っ直ぐに見つめる。
「神代の象徴、三体のバハムートが太陽であるならば、あれらは星……契約者、貴方は数多の星を駆けてきた………それなら、」
意識が遠のく、先の見えない暗闇へと身体が勝手に引き込まれていく。待て待て会話イベント終わってねーぞ、スキップボタンを押した覚えはないしせめて事前に何か確認し………
「貴方は、当機の疑問にも解を出せるのでしょうか?」
そこで、プツリと意識が暗転した。
今ここに音楽会が始まる。
オルケストラ、開演




