凶星が引き寄せた決着
あれ? 結局普通に更新してね?(寝不足)(引っ越し二日前)(積み上げられたゴミ)(お前がやらずに誰がやる)(求:サイコキネシスの技マシン)
無敵モード中なのに殴る意味はあったのか?……答えはノー
態々面倒な踵落としを選んだメリットはあるのか?……答えは部分的にイエス
では、この一連の別ゲー再現は本当に必要だったのか?
たとえ敗北の未来を予知していたとしても、俺はこれを妥協するつもりはなかった……答えは、永劫にイエスだ。
◆◆◆
「っしゃああああああ!!」
ご照覧あれカフェインの神よ! 今ここに俺は乱数の女神による試練に打ち克って「星天」を成功させましたぞ!! 愛してるぜエナジードリンク! 俺が死んだら遺灰はライオットブラッドの礎にしてくれぇーっ!!
「ハァーッハッハッハァー! 見たか! どうだ! 値千金の大成功だぜ!!」
「───あぁ、認めるよ。だがなァ……」
空中からの踵落としによって爆ぜるように粉砕されたアスファルトは煙幕の如き土煙を生み出していた。
その土煙のカーテンを突き破り、俺の首を掴み上げる肉塊……ゼノセルグス。
「勝ちは、私が貰う」
その残り体力は……三割。
対してこちらの体力は贔屓目に見ても一割とちょっと、軽く顔面をドラミングされるだけでお陀仏するだろう。向こうの無敵時間的に多分最後の踵落とししかダメージに貢献していない、むしろそれで三割まで削れた事を驚くべきか?
だが、
「悪い、な……」
ここまで脳味噌が加速しちまったら、ハイ負けました残念賞じゃ止まれねーんだわ。
「………」
くたり、と身体から力を抜いた俺にゼノセルグスの顔が凶悪さを増す。やることやって満足した、とでも思っているのだろう。
「一回力抜かなきゃ……力み直せねーだろっ!!」
土煙に紛れて飛んできた黒い金属片に「拘束」された右腕でゼノセルグスの腕を掴んで笑う。
そして呪鎧が全身を拘束するよりも先に全身に込めた力のままに首を掴まれたまま奴の腕に関節技を仕掛ける。
「時間通り、クソッタレだぜ模範囚!!」
「ぐ、ぅううお……!?」
デフォルト状態に戻ったとはいえ重量級を片手で支えるのは困難、ぐらついて姿勢を崩したゼノセルグスの拘束から抜け出しながら姿勢制御、若干の危なげはあったものの土をペロることなく着地する。
「…………」
「…………」
互いに僅かに遠い間合いを挟んで静止。カースドプリズンは周囲に取り込めるものがなく、ゼノセルグスは悠長に五秒も視線を外せない。
互いに強みを活かせない状況、頼れるものは己の身体のみって事だ……!
「……ふっ!!」
「くっ」
野郎、さっきまでのチンピラムーブはどこへやら……いやに冷静だ。組み技希望の接近がやけに多い、レスリングか? チッ、体力有利を取られてる所為でボクシングスタイルじゃダメージ交換覚悟で詰められて死ぬ。
「だが!!」
ここで安全策を取ったところでグダるだけだ、アドレナリンとカフェインを脳漿でカクテルしてるこのメンタリティなら前に進むべきだ。
インファイトこそが格ゲーの華! 持ち堪えてくれ現実の俺ボディ! 倍速でカフェインを燃やせ!!
「っしゃあああ!!」
「くっ、近ェんだよ!!」
限界まで身体を屈めて肉薄、ジャブ二発からのアッパーに繋げんとするも顔面を目掛けて近づいてくる膝をガードする為にアッパー用の右腕は封じられた。
攻撃ターンを強制的に止められた事でゼノセルグスへターンが回ってしまった。俺の身体を捕らえんとする二つの掌を同様に掌で迎撃し、ガッチリと組み合ってギリギリと力比べ……クソっ、若干負けてね?
「「っ!!」」
互いにケンカキック、無理な姿勢だったので致命傷にはならなかったが遂に体力が一割を切りつつも再び二メートル程の間合いが開く。
「ジリ貧、か…………ん?」
アレは……! いや待て落ち着け、気取られるな。
丁度ゼノセルグスの背後、土煙と瓦礫で見えづらいが……あの不可思議光彩は、間違いなくウルトクリスタルだ。
「………」
「どうした、カウンター狙いかパンプキン」
どうする? ここで「脱獄」できれば確実に勝てる、勝てる……が……怪しい。
アメリア・サリヴァンは本当にアレに気づいていないのか? ウルトクリスタルが蹴り落とされたのは奴も知っている情報だ、クリスタルに足が生えて勝手に動く訳じゃないんだから落ちた場所は大体予測が出来る。
実際その予測からそこまで離れていない瓦礫の中にあるわけだが……最悪のパターンは向こうもウルトクリスタルに気づいている上で罠として放置している場合だ。
ウルトクリスタルはプレイアブルキャラが直接叩くなり握り潰すなりで破壊しなければ効果を発揮しない。つまりどれだけ効率的に壊すにしても腕か足の一本を使わないといけないって事だ、ここに来てハードな二択だ……おおカフェインの神よ、迷えるエナドリユーザーに啓示を……
───汝、恐れを捨てよ。カフェインの導きに従うのだ(幻聴)(幻覚)(妄想)
「よぉぉぉっしゃぁぁぁあ!!」
勝ったらエナジードリンクで祝杯だぁ!!
煙の幕へ自ら飛び込み、微かな光へと一目散に駆けていく。だが、
「───気づいてるに決まってんだろ」
影が差す、それは鈍重な癖に跳躍力がやけに優れているゼノセルグスがバック宙返りでウルトクリスタルと俺との間へと最短で回り込んでいる証拠であり、地の利と先手を取られたということであり、まんまと俺が罠に引っかかったという事であり……
エナドリ缶を一気飲みしてヤバい目をしている女神様の顔が別のものに………お前、乱数の女神じゃね?
「きゃあああああああああっ!!」
幼く、甲高い、涙混じりの悲鳴。
「な、にぃぃぃ!!?」
ゼノセルグスの身体が不自然に硬直する、その凶相に浮かぶは正真正銘の驚愕。
その時、一陣の風が吹き込んだ。風は土煙を容易く晴らし……土煙によって隠されていたその光景を露わにする。
瓦礫に突き刺さるように埋もれているのは確かにウルトクリスタルだった、だがさらにその向こうに二つの人影。
片方は恐怖と絶望で立ち上がれないのだろう幼い少女、そしてもう片方は……今にも全身爆裂寸前と言わんばかりの「戦乙女」!!
生きとったんかテメー、とかなんで逃げてねーんだテメー、とか言いたいことは盛り沢山だが………今この瞬間、乱数の女神が振ったサイコロの目とカフェインの女神が齎した高速思考が最後のブーストをかけた。
ウルトクリスタル、栗きんとん、「戦乙女」、ゼノセルグス、ゲージ、超必殺、距離………全てが繋がった、後は駆け抜けるだけ!!
「っしゃあ!!!」
硬直したゼノセルグスを追い越し、瓦礫に埋まったウルトクリスタルをクソゲーサッカーゲーム仕込みの殺人シュートで蹴り飛ばす!!
世が世なら相手ゴールキーパーの肋骨を粉砕していただろう魔球がまだ僅かに漂う土煙をブチ抜いて「戦乙女」の胸部に激突する。
ウルトクリスタルはプレイアブルキャラにしか破壊することができない、逆に言えばコツさえ掴めば破壊不可の弾丸として使える! 掬い上げて足の甲で投擲する感覚ぅーっ!!
「俺の手は……勝利を掴む!!」
弾かれたウルトクリスタルと「戦乙女」が一列に並んだ瞬間、全身の捻りと全霊の熱を込めたカースドプリズンの掌をウルトクリスタルを掴んだ上で「戦乙女」の胸部へと叩き込む。
砕け散るクリスタル、全身全霊の一撃は結晶の破壊のみに留まることなく、機械群最後の乙女の胸を穿ち、背を貫き……「戦乙女」の心臓部たる動力核を鷲掴みにしていた。
「くっ……おおおおお!!」
背後から重い足音、「脱獄」したとしてもプリズンブレイカーはゼノセルグスの「超細胞」と違って普通にダメージを受ける。ダメージを恐れずトドメを刺しに来たか……だが!!
「集えゴミ共!!!」
「超必殺じゃねェだと!?」
そう、俺がこの最終局面で選んだのは周囲に鎧の欠片を撒き散らす「脱獄」ではなく………カースドプリズンのゲージ技、周囲の取り込み可能なオブジェクトを自身へと引き寄せる「凶星引力」!!
普段は立ち回りの邪魔になるからほとんど使わないゲージ技を、ウルトクリスタルの力で満タンになったヴィラニックゲージを消費して行使する。
ひん曲がった道路標識や半壊した車が浮遊して引き寄せられる中で……目当てのものが虚空を切り裂いて飛んでくる。爆発で屋上から落ちてるのは見えていた、今は俺が主人だ!
ガチン、ガシャンと物言わぬ屍に成り果てた「戦乙女」の身体が分解され、俺の右腕へと装備されていく。
そして最後に凶星が帯びる引力によって引き寄せられた「戦乙女」の突撃槍が動力核を握る右手と一体化───
「………!!」
「………!!」
振り向いた先に肉達磨。
言葉はなく、それでも交わした視線が互いの考えていることが一致していることを伝えてきた。
───GG。
「槍よ、仇を討て!!」
右肩に戦う乙女の意匠が施された腕から、意思を込めた槍が火を噴く。
装備の際に構造が組み変わった突撃槍はミサイルを推進力に射出され、真っ直ぐにゼノセルグスの心臓部に突き刺さってそのまま前へ前へと飛翔。
半壊したビルのエントランスに突っ込んで、そして──────
「実力で勝った、とは誇れねーな」
くるりと背を向けた瞬間、大爆発が何もかもを終わらせた。
カースドプリズンvsゼノセルグス……カースドプリズンの勝利。
これによりマスクド般若は持ちキャラ三体全てが撃破され……激闘の決着がついた。
トライアングル・トリニティ……勝者、顔隠し。
Q.主人公勝たせたいけど普通に実力で凌駕しちゃったらパワーバランスが……
(エナドリを飲んで瞳を得る)
A.運ゲーでよくね?




