クライマックス・バーニング
十二日くらいまで更新は無理かな……(遠い目)(身を削る勇気)(睡魔には勝てなかったよ)
ハンマーは捨てた、この戦いについて来れそうにないからな。
「海老は良いぞ……」
一体何を元として変形したのかさっぱりわからないが、蝦蛄の機械群を見つけたのは幸運だった。
「そっちだとロブスターとかの方がメジャーなのか?」
「知るか、私は殻の着いた虫もどきは好きじゃねぇ」
「甲殻類なめんじゃねーぞ」
ずごん!! とアスファルトを容易く踏み抜いた巨大な肉塊が唸り声のエフェクトを混じらせながら俺の問いに答える。
ゼノセルグス、GH:C全キャラクターの中でも最重量級と言ってもいいスーパーヘビーファイター……回避コマンドを設定段階でゴミ箱に叩き込んでいる肉達磨だ。
遅く、重く……そして尋常ではなくタフい。
通常のキューブありのルールでは低ティアーに甘んじているものの、勝利条件を「相手をノックアウトする」に限定した場合においてはその凶悪性は上位ティアーにまで繰り上がると聞く。
「最終ラウンドだ、言い残すことがあるなら聞くぜ?」
「なら一つだけ聞いておく……テメェ、それだけの実力があってなんで在野に隠れてやがった?」
なんで? なんで、って………
「趣味に人生捧げられるほど好き勝手できる年齢じゃねー……そんだけ」
「そうか」
機巧の残骸を纏ってホバーで浮遊する呪鎧と、鈍重な巨躯を支え暴れるだけの筋肉を搭載した四肢を持つ怪物がゆっくりと距離を詰める。
ちりっ、とカースドプリズンのサブレッグに備えられたブースターが火花を散らす。
ぐぐ、とゼノセルグスの全身の筋肉が膨れ上がるように力が充填されていく。
どこかで爆発音。
「「死ねオラァ!!!」」
スタートは全く同時、互いに拳を用いた一撃。状況と行動は互角同等のイーブン、だが舐めてもらっちゃ困るぜ。
数多のにわか釣り人の指をへし折ってきたシャコパンチをなぁ!!
手首と肩、肘の三点を繋ぐ拳銃の撃鉄にも似たジャッキ……言うなればハンマージャッキがギチギチと軋み唸る。爆発する寸前の爆弾が如き力みの蓄積を続ける「腕」は「目」と「頭」からの情報を今か今かと待ちわび……
「射程圏内だ」
超速ジャブ、その鼻っ面を叩き折ってやるよ肉達磨ァ!!
ハンマージャッキを固定していたロックが外れ、凄まじいエネルギーの蓄積が一気に解放される。
バギン!! と鋭い金属の音が響くと同時、先端の手が霞む程の速度で伸ばされた拳がゼノセルグスの鼻っ柱へと叩き込まれる。
「ぶぐぉっ……!!」
「今度はちゃんと弾丸のようなワンツーだぜ?」
「……効くかよンなもんがよォ!!」
「ぼぐぁっ!?」
左のこめかみに衝撃、視界に火花が散る。そりゃそうだ、互いに巨漢の重量級……タッパはゼノセルグスの方がデカイものの誤差の範囲、であれば射程距離は同一という事……
となれば、戦いは乱打戦となる!!
「ふんっ!!」
ハンマージャッキを再固定、こちらへと襲い来る拳をアッパーでカチ上げつつ顔面に一発入れる。しかし再度ジャッキを固定する前に奴からの攻撃が飛んでくる。上等だコラ顔面ガード!!
「ぐぶっ!」
ジャッキ再セット! シャコパンチ……ファイア!!
そこからはもう作戦もへったくれもない、俺が奴の顎を打撃すれば次の瞬間には横からの衝撃に視界が明滅する。ジャッキの再固定が完了するまでの間に肩と頬に熱烈なパンチを貰ったのなら、プレゼントのお礼とばかりに奴の喉元に鋭く拳を刺す。
「おおおおおおおお!!」
「おおおおおおおお!!」
拳を通して相手とわかり合う、などという青臭い展開など存在しない。そこにあるのは闘志を根本とする敵意と、一秒毎に更新され続ける状況……そして、手を伸ばしても未だ届かぬ勝利の光だけだ。
互いに退けず退かずの殴り合い、拳の威力はこちらが上だが踏み込み……いや踏ん張りという点で向こうが先を行っている。そしてなにより……
「こんの、荒れ肌野郎が……!」
「はっはァ! 威勢が萎んでるぜパンプキン!!」
ゼノセルグスの特殊能力「変貌細胞」だ。奴は自身の肉体を五秒間視線で捕捉したオブジェクトと同質のものに変えることが出来る。ここに現れた時点で何かに変わっていたのかもしれないが、少なくとも今の奴は俺の纏う「機械群」をコピーしやがった!
割とノリで殴り合いなんぞしてしまったが、体力比は……
「5:7……ぐっ」
「避けたな」
あ、しまったつい───
後悔はいつだって未来で待ち構えている、むんずと首を掴まれた俺の身体がフワリと浮き上がりあまりにも雑なクラッチで腰を掴まれる……ブースターを蒸すよりも早く、ゼノセルグスのゲージ技「マテリアルスープレックス」が、逆さ、落ち……
「ごばぁっ!!?」
クリーンヒット、明らかにカスダメでは済まない痺れと虚脱感が全身を駆け巡って視界の端に見える己の命が一気に削れたのが見えた。
「これで終わりかァ!?」
「ンなわけ……………スペシャルゲストだ」
「あ゛?」
サブレッグは今のジャーマンスープレックスでへし折れてしまった、機動力は激減したが元より最後まで戦い抜けるとは思っちゃいない。間に合った事が大事なんだ。
全く……遅いぜレディ、俺ばっかり身体張らせやがって。それ、仇打ちの時間だ!!
次の瞬間、黒煙と炎が街全体に拡がりつつある中で……焔色の風が吹いた。
「ごっ……!?」
「ご存知だろうが紹介しよう、最後の一人……「戦乙女」殿だ」
「大佐」の時の礼だ、楽しい三つ巴を始めようぜ?
ターゲットエネミー「大佐」は戦死、「総帥」も討ち取られた。上官を失い、指揮官をも損なった今の彼女は己の全てを限界を超えて稼働させ、自壊しながら暴れ狂う文字通りの自暴自棄って奴だ。
全ステータスが上昇し、武装の制限が解除された事で今や突撃槍は振るだけで軽度の怯みを付与する衝撃波を撒き散らす。
「死に損ないのガラクタがァ……!」
「いい台詞だ、ヴィラニックゲージもうなぎ登りだな?」
「戦乙女」は言葉を発しない、だが女性を模した顔に走った亀裂から漏れ出す炎は無念の涙のようにも見える。
「機動力を捨ててまで殴りに来たのはこれが狙いかッ!」
「半分はノリだよノリ、だがクライマックスに役者をハブるのは良くねぇよなぁ?」
「戦乙女」は原則両プレイヤーを襲うが……ターゲットエネミーを撃破した数に応じてヘイトが加算される。つまり……一対一対一、されど狙いはお前一人に絞られるって事だ。
「行くぞコラァ!!」
「上等だッッ!!」
幸い、ハンマージャッキは無事だ。地に足ついて殴る分には何の問題もねぇ!!
踏み出した一歩がアスファルトに亀裂を入れる、合わせた訳ではないだろうが「戦乙女」もまたミサイルを発射した事でゼノセルグスは二つの脅威によって挟み撃ちされた形となる。
まずは体力比をイーブンのところまで削らせてもらう!!
・ラストスタンド
NPC勢力のターゲットエネミーの中には「最後の一体」になる事で性能が上昇するMobが存在する
どれくらい強いかというと、結構な確率でNPCに勝利をかっさらわれる事があるくらい。格ゲーとしてどうなのか、だって? 大丈夫? これシャンフロシステムだよ?




