真打一張羅
いーきーてーるーぞー(三月中旬くらいまでスケジュールガッタガタなだけ)
やはりリアルタイムな通知のシステムが必要なんですかね……?
リスが冬眠に際して食糧を溜め込むように。
犬がお気に入りの骨を地面に埋めて隠すように。
結局のところ、ダストがクソテレビを撃破してカースドプリズンに撃破されるまでの空白の時間、アメリア・サリヴァンが機械群の装備を取り込む事を優先したがために生まれたフリータイムこそが今この瞬間、この場所に繋がっている。
贅沢を言えばティンクル・ピクシーでリソースの食い合いになる相手側のカースドプリズンを倒しておきたかったが、そこは向こうの方が一枚上手だったと認めよう。
だがティンクル・ピクシーはカースドプリズンを瀕死にまで追い込み、十中八九あの場から撤退させることに成功した。ダストが最初にスポーンした場所の近くに今の俺が現れた事で、逆説的に相手の座標も分かるというもの。
「さーて……一張羅を引っ張り出しますか」
カースドプリズンのバトルスタイルは大きく分けて二つ、アメリア・サリヴァンが様々な装備を適宜使い分けると言うのなら、今日の俺は最強の一張羅を見せるだけ。真のおしゃれ番長は素材から厳選する───
俺が選んだ編成は全キャラクターを戦闘メインキャラで固めたオールファイター……脳筋? いいや違うね、コンボを決めるのは性能じゃない、行動さ。
「厳重すぎて逆にバレそうだったからなぁ……」
Ms.プレイ・ディスプレイの厄介な点は街の各所に設置されたカメラを使って視覚的に遠見を出来る点だ。この場所の性質上、クソテレビだけは迅速に倒す必要があった……それこそ超必殺を切ってでも、な。
「銀行の金庫、最高級のロッカー……ってな」
重厚な扉をカースドプリズンの膂力で無理やりにこじ開ければ、ダストの遺産がカースドプリズンを出迎える。
それはかつて人が道具として生み出したものだった、それは機械群の軍門に下って異形と成り果てたものだった、そしてそれは……ダストによって撃破され必要なパーツのみを吟味してこの銀行の最奥に溜め込まれていたものだった。
「ふふ………覗くなよ?」
この街を俯瞰視点よりもさらに遠いところから見ているだろう不特定多数へと語りかけるように呟いて、ずいぶんキザな事をしてしまったと内心照れつつ金庫の扉を閉める。
そして…………
◇◇
アメリア・サリヴァンというプロゲーマーにとって、ゲームとは仕事であり趣味である。
その両方の面から見ても「勝利する」という結果に対して人生を賭けるだけの価値がある、そしてそれ以上にシルヴィア・ゴールドバーグという存在は大きいものだった。
全米最強、ひいては全世界の頂点に君臨し続ける存在……そのシルヴィア・ゴールドバーグが敗北した。アメリアとて己こそが無敗故に純白の流星に黒星をつけんと挑み続けた者、それ故に驚愕し………そしてGGCの動画を視聴した上でケイ・ウオミの勝利は「必然」ではなかったのだと断定した。
あれはケイが実力で勝ったと言うよりも、その前の試合でシルヴィアが無意識的に満足していた、というのが最大の理由だろう。無論、大前提としてシルヴィアに食らいつけるだけの実力があるのは事実だろうが、それでもきっと「奴」が実に4ラウンドもの間激闘を繰り広げていなければ、ケイ・ウオミが前人未到の大金星を挙げることは出来なかっただろう。
───リアルカースドプリズン
その対義語が頂点に存在するが故に空白の座は作られ、数多のゲーマーが挑み……その悉くはリアルミーティアスによって撃破されていた。
それ故にリアルカースドプリズンの称号とはいつしか「カースドプリズンでシルヴィア・ゴールドバーグに勝てる者」というイメージばかりが目立つようになっていた。
だがあの夏の日、新たな戦場に降り立った一人のプレイヤーが「リアルカースドプリズンとはなんぞや」という疑問の答えを提示してみせた。
強欲で、傲慢で、己を貫き通す力が人の形をしているかのような、あの振る舞い。成る程、あれがリアルカースドプリズンかとアメリアとて思わず納得した程だった。
だがそれと同時、プロゲーマーとしてのアメリアは幾度となくシルヴィアvs顔隠しの戦いを見直していく中である結論に至っていた。
顔隠しはシルヴィアと同じメンタリティがプレイヤースキルに直結しており、その実力にはムラがあるタイプであると。
あるいはそれこそがリアルカースドプリズンと呼ばれるにあたっての最低条件であったのかもしれない、だからこそアメリアは己の心に浮かんだシンプルな疑問を顔隠しに、シルヴィアに、大衆に問わんとしていた。
───リアルカースドプリズンが彼だとしても、リアルカースドプリズンになれなかった自分は「顔隠し」に劣っているのか?
───否、それはただ「カースドプリズンの扱いが一番らしい」というだけのこと。
───だが「カースドプリズン」というキャラクターが傲岸不遜に呪いを纏いながらも己を通すヴィランキャラであるというのなら。
───お前はアメリア・サリヴァンより強いのか?
嫉妬、ではない。強いて言うならば好奇心。
己ですら取り逃がした称号に至った人物、顔を隠し在野に無名のまま埋もれていた謎の男に己の全力をぶつけてみたくなった………ただ、それだけの話なのだ。
「やりゃあできるもんだな……」
ティンクル・ピクシーが倒れてからおよそ五分。ゲームシステム的に後から選出されたが為、2Pカラーになっているだろうカースドプリズンが姿を現すことはなく、果たして最初にこの街へ現れたカースドプリズンは生き残っていた。
ターゲットエネミー「総帥」
「機械群」の中核であり、最上位存在であるこのターゲットエネミーはゲーム開始と同時にマップに出現する要塞の最奥にポップする。
このエネミーに関連する特徴は主に三つ。
要塞は「戦乙女」あるいは「大佐」のどちらかが撃破されない限りそもそも中に入ることができない。
ランダム生成される施設内マップを攻略しなければならない。
そして指導者エネミーが倒された時点でNPC勢力はそれ以上の数を増やさなくなる。
本来は1Pと2Pが敵対しつつも同じ目的のために攻略する……などと言ったシチュエーションを発生させるためのものだが、限定的な条件下でのみ単独かつ容易な攻略が可能になる。
その一つが「機械群」に対するカースドプリズン、ターゲットエネミー「大佐」を装備として身に纏うことで要塞内ギミックの完全スルーを可能とする裏技である。
そして、カースドプリズンのミラーマッチを成立させる、その目的を達成する為にたった一撃でも食らえば瞬間に体力が尽きる限界状況の中で機巧の帥へと挑み……果たして、カースドプリズンは体力を三割ほどにまで回復させた上で「総帥」と「大佐」を鎧として身に纏い立っていた。
「やってみるもんだな……」
アメリアは自身がシルヴィアや顔隠しのようにテンションを上げて力量を上げるタイプではないことを自覚している。そして余程心をかき乱されない限りは常に最高のパフォーマンスを実行できることを自認している。
そのアメリアをして分の悪い賭けであると考えていた「総帥」のノーダメージ討伐……アメリアは熱心な宗教家というわけではないが、それでも次のミサには出席しようと心に決めた。
「……あん?」
と、その時だった。
「ひぐっ、えぐっ……」
アメリアのものにしてはか細過ぎで、顔隠しのものにしては高音すぎる。即ちそのどちらでもない第三者の小さな泣き声がアメリアの……カースドプリズンの耳に届いた。
「チッ……」
幼子、泣き声、三番手……カースドプリズンというキャラクターに子供を助ける理由はないが、WΔを戦うアメリア・サリヴァンにはそれに対処しなければならない理由があった。
「おいクソガキ」
「ひっ」
なお、アメリア・サリヴァンは子供の相手をする事が大の苦手である事をここに記しておく。
「あー………死にたくなかったら失せろ」
「あ………ぅ………」
「……?」
ふと、違和感のような既視感のような疑問がアメリアの脳裏に浮かぶ。
(……このNPC、どこかで見た気が)
GH:CにおいてNPCはマップが切り替わっても流用される。それは「ケイオースシティの住人」という形で混沌意思カオスが生み出しているという設定だから、と言えばそれまでだがアメリアは何故かこのNPCに見覚えがあった。
いや違う、このNPCに関係しているのはアメリア・サリヴァンではなく……………
「よう猛禽類、テメーじゃ役者が違ぇだろコラ。退け」
「来……がっ!!?」
接近する轟音とそれに伴った声。獰猛な笑みを浮かべて振り向いた瞬間、アメリアの顔面を貫かんばかりに加速した一撃が想定外の速度で襲う。
「ひっ」
「ようガキンチョ、乱数を信じるわけじゃねーけどつくづく縁があるな」
「おじちゃん、誰……?」
「俺? そうだな………」
それはどこまでも傲慢で、根拠など無用とばかりの絶対の自信と、堂々たる威風を漲らせた簡潔な一言。
轟々と爆炎の鬣を靡かせ、二体のターゲットエネミーを纏ったカースドプリズンをも上回る超重量の装甲と、それを支える奇妙な形状をした四脚の異形。
複数の装甲を纏わせ固めた機鎚を担ぎ、その者は高らかに宣言する。
「───俺が、カースドプリズンだ」
サンラクカスプリの今の状態はキマリストルーパー的な感じです(なお初期グシオン並の重装甲)




