ダブルクロス・ロンリーガール・デジタルヘッド
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「……っし、エンジンあったまってきた」
ぱしん、と掌に拳をぶつけながらも俺は手近な建物を登って街全体を見渡す。
マップ確認ではない、トライアングル・トリニティは三角形マップで固定されている。それぞれの角からスタートするこの対戦で確認すべきは……
「UFO無し、牙の塔無し、機械群か……」
トライアングル・トリニティは3on3on3、俺とアメリア・サリヴァンだけではなくもう一つ勢力が存在する。
このゲームオリジナルの敵性エネミーであるそれらは一試合ごとに三種類の中からランダムに選出されるわけだが……どれもこれも厄介な奴らだ。
空から降臨し、NPC市民をキャトりながら暴れる「侵略者」
地中より屹立し、街中にばら撒かれたトカゲを兵器恐竜として進化させて暴れさせる「再古代」
そして地上に陣を張り、電子機器を機械兵士に改造させて進軍する「機械群」。
侵略者はNPCを攫うので後半になる程ゲージが稼ぎづらくなるし、再古代はどこから敵が出てくるのか察知するのは不可能に近く、そして機械群はそこら中から発生する可能性がある為気が抜けない。
それを止める方法はただ一つ、プレイヤー陣営とは異なり三体同時に出現する「ターゲットエネミー」を撃破すればいい。
ターゲットエネミーを破壊すれば撃破したプレイヤーに特典が付与される、だが全ての陣営が敵対関係な以上はどう立ち回るか考える必要がある……中々どうして面白い。
「メカニタンのターゲットエネミーは確か……」
チッ、ここだとカメラに映る。
アメリア・サリヴァンの一番手は現在環境トップに君臨するクソテレビだ、電子機器……特に監視カメラなんかに映りこむのはデメリットでしかない。
建物から降り、ビルとビルの隙間に身を潜めつつ思考を続ける。
「思い出した」
機械群のターゲットエネミーは「戦乙女」「大佐」「総帥」の三体、それぞれが固有の性能を持っていた筈だ。
「狙うなら「大佐」からにすべきか? いやだが、確か「戦乙女」は追い詰められるほど強化される……」
奴らは一人で倒すとなると面倒で二人で倒せば危なげない、と言う絶妙なパワーバランスに設定されている。忌々しく思う反面、バランス調整いいぞと褒めたくもなるが野良と違ってアメリア・サリヴァン相手に協力路線が張れるとは考えづらい。
「どうしたもんか……」
俺が今操作しているロングコートに目と鼻の部分だけに穴の空いた簡素な覆面を付けたキャラ「ダスト」はちと面倒なシステムを搭載している。
クソテレビの分類はヴィラン……というか向こう全部ヴィランか、だとすりゃヒーロー路線でいいかな。
キャラクター「ダスト」。
原典はうろ覚えだが、所謂ダークヒーロー的立ち位置のキャラクターであり、アップデートで追加されたこのキャラは極めて特殊なシステムを持っている。
本来ヒロイックかヴィラニックどちらか一本しかないはずのゲージが二本あるのだ。正確には通常どちらか100%のところをヒロイック・ヴィラニック各50%ずつで両方のゲージを溜めなければ超必殺を使うことが出来ない。
さらに「弾丸」の補充もそれに関係しているため、ポテンシャルは高いが使う為には高いテクニックも要求される。
「とりあえず……そうだな」
丁度いいところにポップしてるじゃないか、力を借りるか。
隠れんぼしてる訳じゃねーんだ、どちらにせよアメリア・サリヴァンとの遭遇は大前提ならそれまでが遅かれ早かれ迷う時間はロスでしかない。
「銀行なら警察を呼ぶ為のボタン的なものがあるだろうし」
無駄弾を撃つつもりはないが、NPCへの威嚇として二丁の拳銃を抜き構えながら銀行の扉を蹴り開ける。
「ホールドアップ! 携帯電話を持っていなくてな! 警察に連絡してく………」
おっと今になって思い出した。
機械群に限った話ではないが、基本的にNPC勢力は大ボスを除いた二体は……
「Battle mode……」
ランダムポップだ。
女性を模した機械、という点ではシャンフロの征服人形に共通しているが、サイナと比べると明らかにお肌が頑丈過ぎる鎧の女……否、女の鎧が俺へと突撃槍とミサイルランチャーを合体させたような武器を構え、眼光を俺の額へと照射する。
「お取り込み中? 邪魔なら失礼させてもらうが……」
右の銃が火を噴くのと、ミサイルが放たれたのは同時であった。
「うおおおお!?」
ヘッショ! 小怯み! 焼け石に水ぅ!!
横っ跳びに回避した俺のすぐ隣を通過したミサイルが開けっ放しのドアから外へと飛び出し、対面のビルに当たって爆発する。
「通常攻撃がゲージ技並とか勘弁して欲しいぜ……!!」
そのくせプレイヤーが使おうとしてもただの槍、兵器としてすこぶる優秀で何よりですね! ペッ!!
どうする? 銃弾の補充を考えるとNPC相手にフルバーストなんぞしてられない。だが逃げるにせよ応戦するにせよ弾の消費は避けられない。
ダストは善悪二つのゲージを持っている、それは原作におけるダストの立ち位置が「地獄から遣わされた断罪の悪魔が憑依した男」というものであるからだ、故に二丁の拳銃は「善の弾丸」と「悪の弾丸」を装填し、発砲する。
ゲーム的に言えば別枠ゲージ、良いことをすれば善の弾丸が溜まり、悪いことをすれば悪の弾丸が溜まる。
善の弾丸はヴィランに効きやすく、悪の弾丸はヒーローに有効。
クソテレビはヴィラン、「戦乙女」は行動的にヴィラン。つまりアメリア・サリヴァンを見据えるなら善の弾丸を温存しておきたい。
「チッ!!」
右の引き金を連続で引き、漆黒の弾丸が「戦乙女」目掛けて殺到する。だが顔面狙いの三発はその全てが機械仕掛けの女鎧が左手で振るった剣によって叩き落される。
格ゲーにあるまじきクソ迎撃力に見えるが、あれ判定的にはガード行動らしい。ガード崩し系の攻撃でさえなければ大砲の弾すら一刀両断するからなぁ……ガードしていると分かっていてもなんかこう、無力感を覚える。
「く、ぉ! ぬぁっ!?」
ターン制って訳じゃない、当然向こうだって攻勢に出るし俺のターンが回ってくると保証されているわけでもない。
ミサイル内蔵の突撃槍を軽々と振り回す「戦乙女」が一気に距離を詰めてくる。クソが、初手でターゲットエネミーとかち合うと分かっていたならティンクルピクシーを初手に持ってきていた。
だが現実は分からないまま今に至る、だとすればダストでどうにかしなければならない。
ダストは遠距離主体のキャラではあるが近距離戦が出来ないわけじゃない、だが近距離に強いかと聞かれれば弱い部類なので絶妙にインファイターを届かせない突撃槍の射程を持つ「戦乙女」相手では圧倒的不利と言わざるを得ない。
「だが、ちっとばかし挙動が素直過ぎだな」
ミサイルにホーミング性能は無く、物理的な攻撃も普通に殴るかエフェクト付きで加速して殴るかの二者択一。
片手で巨大な突撃槍を振り回すのは脅威だが、もう片方の手は基本的に剣しか使わないしその剣も剣で「盾」なので実際は突撃槍と盾で武装したエネミーと言えるだろう。つまり持っているのは突撃槍ではあるが大体はオーソドックスな騎士タイプってことだ。
「格ゲーNPCだもんな、ガードと攻撃は両立できんだろうよ……っ!」
ただ撃つだけではガードされる、ならフルダイブVRである点を存分に活かして回避しながら撃つ!
GH:Cはシャンフロと同じくシチュエーションがゲームシステムへダイレクトに影響する。ヒーローキャラが街を破壊する機械群と戦っているというだけでヒロイックゲージは蓄積する。それと同時に発砲消費した弾丸も再装填されていく。
第一段階の「戦乙女」はぶっちゃけそこまで強くはない、時間をかければ善の弾丸だけで倒すこともできるだろう。
だがこれはトライアングル・トリニティ、こんなオフィス街で暴れれば当然カメラに映る……そして、ゲーム開始時点であれば最大マップの八割をサーチできるあのクソテレビ(プロゲーマー内蔵)が居眠りをしている筈もなく。
「よォ……会いたかったぜぇ、リアルカースドプリズゥン……!!」
「君さっきと口調違くない?」
「死力を尽くして戦えよな……!!」
「はッ! 途中でくたばるんじゃねぇぜ……!!」
例のリアルタイム翻訳システム「バベル」によって暴かれた奴本来の口調で、頭がテレビにすげ替えられたヴィランがビルの上から飛び掛かって来た───!!




