終末論未遂の残滓
更新時間ガッタガタで申し訳ない……
つまりなんだ? ローエンアンヴァ琥珀晶の中に入ってるものを見たダルニャータはそれが極上品質のものであると同時、封印されたそれのヤバさに気づいたと。
キャッツェリアに依頼を出したのはレベル99の頃だったか、新大陸の過酷な環境からすればビギナーってところだ。
無論、宝石である以上ダルニャータの手にかかれば最高のアクセサリーとして完成させることは容易い。だが最高とは即ち最大の効果を持つということ、万が一にも作ったアクセサリーで俺に害が生じるようなことになればシャレにならない。
その代わりに作ったのがお手軽壁のシミ体験装置であるのはどういうことなのかちょっと問い詰めたいが、まぁ今回は不問としよう。有用だったからな。
「だから使わなかった、と」
「は、はい……」
さてどうしたものか………ネコババした点は取り繕えないが、使わなかった理由に関してはヴァッシュのお墨付きがついてしまった。
ケジメという案件からは離れたものの、そうなると面子が立たないのはキャッツェリアの方だろう。
「おうニャイ、隠し立てなくダルニャータを連れてきたこたぁよう、俺等ぁ評価するぜぇ」
「ニ、ニャッ! ご子息には幾度となく世話になったニャ、それを裏切ることはできないニャ」
「だがなぁ……俺等ぁはよう、そいつが怖気付いた理由も分かるんでなぁ……」
くっ、ここだ! 解説を挟むことでダルニャータの行動が結果的に正しかった風にするテクニック!!
「兄貴、一体あの琥珀には何が封じ込められているんで? 兄貴ほどのお方が気にかけるならば並大抵のものではないようっスが」
「あぁ、あん中にはよう……「風」が入ってるのさぁ」
………風? ウィンド?
「懐かしいもんだぁな……それはよう、只の風じゃあねぇ。アガトレオの血肉ってぇシロモンよう」
「アガトレオの血肉……?」
ユニークモンスターの中にその名はなく、レイドモンスターは固有にして単一の名詞を持たない。となればユニークでもレイドでもない……そう、例えば"緋色の傷"のようなモンスターか? だが「血肉」と「風」がどうにも繋がらないと感じるのは俺だけか?
「そのアガトレオってェ野郎をオヤジは知ってるのかよ?」
「当たり前よう、奴を調伏したのは俺等ぁだぜ?」
む、ヴァッシュが一瞬こちらを見た。どういう意図だ? まだ俺が知るべきではない情報ってことか? いや、違うな……だとしたらアガトレオを自身が倒したって情報自体はぐらかせばいい。
「沙汰を言い渡そうかぁ………ダルニャータ」
「はイッ!!」
「そこのサンラクもそう大して気にしちゃあいねぇし、おめぇさんの危惧も分からねぇこともねぇ。だがその手癖の悪さはちったぁ反省すべきだな………ラビッツからも大口の仕事を出す、暫くは真面目に働くこったぁな」
「か、寛大なお心遣い、感謝いたしますぅぅ!!」
びたーん! と地面に狭い額を叩きつけながらダルニャータがこうべを垂れる。そしてヴァッシュは側に立っていた招き猫王に視線を向けると続けて口を開く。
「ニャイ、ただ俺等ぁの判断で手打ちにしたんじゃあ手前の面子が立たんだろうよう……………近く、嵐が起きる。ウチから手勢を貸してやらぁ」
「む………ありがたいニャ、ヴァイスアッシュ殿がそう仰るのであるニャら、戦う力は多い方が良いんだろうニャ」
嵐……レイドモンスターのことか? 確か貪る大赤依がジークヴルム撃破以降に再挑戦可能だったか、であれば他のレイドモンスターも同じタイミングで解放されている可能性は高い。キャッツェリア付近にレイドモンスターがいるってことか? いや、あるいは……
「あぁ、最後に……サンラク、今のおめぇさんならあの琥珀……使い熟せるだろうぜぇ」
「あ、マジでござる?」
よし使用許可が降りた、只では返さんぞドラ猫ォ……!!
「てな訳だ、宴もたけなわ……ここらで御開きと行こうじゃあねぇか」
玉座から降りたヴァッシュがどこかへと去っていったのを合図に、その場にいた殆どの面子が肩から力を抜く。
「命拾いしたニャ、ダルニャータ。ヴァイスアッシュ殿の寛大な御心に感謝するニャ」
「は、はぃい……」
「しばらくこき使うから覚悟するのである」
「せ、せめて一日三食は保証していただきたく……」
「厚かましいニャっ!」
ゴッ! と丸々とした見た目からはあまり想像しづらいマッシブな音でダルニャータの頭に拳骨を落とすニャイ……何世だっけ? まぁ招き猫王の元へと向かう。
「おっと、ちょっといいかい猫の王様方」
「鳥の人」
「サンラクだ、あんたら的には曰く付きの代物かもしれないが兄貴のお墨付きがついた以上、宝石のまま飾るつもりもねぇ……今度こそ依頼を頼めるかい?」
足りない素材がある? 成る程、金に糸目はつけんぞぉ? 今の俺はスポンサー付きだから余程のレア素材じゃなけりゃ用立てられる。
そんなわけでいくつかの鉱石やらなんやらを渡しつつ、俺はポンとダルニャータの肩に手を置く。
「信頼って大事だよな? 俺は少なくとも大事だと思ってる。それと同時、今の俺は君に対する信頼をほぼプラスマイナスゼロの地点に置いている………言ってる意味がわかるな?」
「は、はひ」
「この仕事如何で君への信頼が確定するわけだ、あまり失望させてくれるなよ……?」
「ひぃっ!」
「ま、あと二つのアクセサリーの製作者の腕だけは疑ってないけどな! よろしく頼むぜダルニャータ君……?」
「さ、最高のものを作りますとも!!」
それは何より。
おや? なんか人知れず帰ろうとしてる奴がいますねぇ……
「おいイーヴェル」
「んだコラ、やんのか」
「まぁそんな喧嘩腰になんなよ、仲良くしようぜ?」
はい、握手を求めるポーズ。
「…………」
「…………」
「………ああ! ごめんごめん!! 俺の頭が高すぎたかァ! 悪いな俺の方がビッグスケールな視点で世界を見てて!!」
「おう、図体の割に頭が悪ぃと思ってたが、頭が頭……それも仕方ねェか。鳥頭だもんなァ?」
カチッ(頭の中でなんらかのスイッチが入る音)
「よーし喧嘩だ! 土ペロさせてやるから表出ろやオラァ!!」
「買ったァ!」
「なんで全面敵対してるのに妙なところで息ピッタリなんですわキィーック!!」
「おっぐ!!?」
だから……っ、レベル100ライン突破したお前の蹴りだと割とマジで命が危険になると……っ、何度言えば……っ!!
「はぁーっ! ザマァねぇなオイ!! 随分と頭が低くなっ」
「じゃかあしい!!」
「おぶぎゅっ!?」
「イーヴェル、まぁぁぁ……た武器を壊したらしいのう! 説教じゃ!!」
「あ、姉貴……後頭部は、事故る……生命的に、事故る……」
ビィラックのニードロップは効果抜群のようで、ゲームがゲームなら後頭部から煙かたんこぶでも出してそうな様子で悶絶するイーヴェルが引きずられていくのを見送りながら、俺はごりっと削れたHPの回復を図る。くっ、愚者ガチャホンマお前ェ……
はて、何か忘れているような?
そもそも息抜きのためにシャンフロにインした事を、そしてGH:Cの存在を完全に忘れていたことに気づいたのは朝日が昇ってからだった……
Xデーまで、残り二日。
猿でも分かる外道対外道と同族嫌悪の違い
外道対外道は基本的にキャッチボール、常に顔面狙いの豪速球ではあるものの基本的には投げ合い
同族嫌悪は双方同時にフルパワーでピッチング、キャッチして投げ返すという選択肢が最初から存在しないので相手のボールが着弾し次第乱闘が始まる




