大岡兎裁き
リアル忙しいせいで書きたいことだけが蓄積していく
メタグロスってかげぶんしん覚えましたっけ????
理屈じゃない、本能的に気にくわないキャラってやつはどうしても存在するもんだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとは言うが、誰かを好きになる事に理屈がいらないと言うなら、誰かにムカつく事にも理屈はいらない。
端的に言えばなんかこうよく分からないけどイラッと来た! 放っておくと周囲から主導権奪い取って我を通しそうな感じがなんかムカつく!
「オイオイオイ、これに関しちゃ当事者は俺だぜ? 傭兵だかプー太郎だか知らないが、俺の沙汰なく話を進めるのは筋が通らねーだろ? ん?」
ダルニャータは俺が知りうる中では唯一の宝石匠、つまり商品価値があると言う事だ。
このままの流れで指でも詰めるような事になれば、俺は最上位アクセサリー生産職のツテを失う事になる。
「あァ? んだコラ、なにガン飛ばしてんだ、あァ?」
「筋を通せっつってんだよダボが、俺がこいつらの手癖を知らずに渡したと思ってんのか? 十も二十も用意して貰うために馬鹿正直に宝石の山を渡したと?」
ゼスチャーというものは時に言葉よりも雄弁に相手の感情を喚起する。何せボディーランゲージは英語すら凌駕する全世界共通言語だ、少なくとも指一本で一人称から三人称までを完全網羅する完全言語と言ってもいい。バベルの塔が崩壊しようが人は生きていけるんだよ残念だったな。
そして言葉がないからこそ「言っても理解できないお前でもこれくらいなら分かるだろ?」という最上級の煽り足り得るのだ。武田氏曰く、古き良き非フルダイブのゲームではゼスチャーこそが煽りに使われていたとも聞く。
「思考しろよ、頭を使って……なぁイーヴェル君? 全ては俺の掌の上さ」
己の頭を指でコンコンと叩き、わざわざしゃがんで視線を合わせる必殺コンボが炸裂する。ククク……怒れ怒れ、この場にはヴァッシュがいる、そんな場所で感がなしの暴力を振るえばお前のあだ名は未来永劫「シャバ僧」だ。
だが、イーヴェルの口の端が吊り上がった瞬間、俺はまだ決着などついていないことを悟る。
「ハッ、鳥の人だなんだとイキったところで所詮は居候ってェことか、えぇ?」
「あ゛ァ?」
負け惜しみじゃない、なんらかの根拠あっての反論だ。
「テメェの掌がどうした? 手形なんぞに興味はねぇよ。この"シャバ僧"がやった事はラビッツの看板に泥を塗ったって事だろうがよ」
「む」
チッ……痛いところを突かれたな、こいつの言う通り今の俺は食客とはいえラビッツに属している。つまり俺への不義理はそのままラビッツへの不義理と言ってもいい。
どうする? ラビッツという国の政治面から見た場合エードワードはあちらに付いてもおかしくはない、だがこちらはケット・シーの性質について俺に教えたビィラックは引き込める。
いやダメだ、この場にヴァッシュがいるってのが痛すぎる。この場で大岡裁きが出来る以上は完膚なきまでの論破以外の決着ではマウントが取れない……っ!
「なんでいきなり喧嘩し始めてるんですわ……全く理解できんですわ……」
俺もイーヴェルもエムルの呟きは無視した。理屈じゃないんだよ、自分だけが使ってると思ってたものを別のやつが全く同じレシピで使ってたのを見たときのモヤモヤ感を五倍にしたくらいの感情が常に渦巻いてる感じなんだよ。
だがこのゲームにポーズボタンは存在しない、動き出した歯車は止まらないのだ。
「それでケジメってか?」
「おうよ、手癖の悪い手が悪さをするってんなら、シメるしかねぇだろうがよ」
「フッ……浅はかなり」
馬鹿め隙を晒したな! お前の言葉から言質は取ってるんだよ!!
「真に組織の事を考えているなら希少な宝石匠を使いつぶすような真似などとてもとても……出来るはずがないよなぁ?」
「ぐ」
「技術は宝だぜ? 価値のわからない奴には勿体ない代物か……」
無罪放免ルートは不可能、であれば俺がすべきは減刑……即ちどれだけダルニャータへのケジメを軽く出来るかを突き詰めるべきだ。
そしてこのヤンキー兎にマウントをとってドヤ顔したい! 不思議な気分だ、シルヴィア相手に勝ちたいと思ったあの時と同じ気分だ……
「何か双方ともにイキイキしてないかい?」
「エードワードおにーちゃん、アレは水と油じゃなくて油と油なんですわ。どっちが格上かで争ってるだけですわ」
俺もイーヴェルもエムルの言葉は無視した。分かってんだよそんなことはよォーっ! さっきからずっとデジャヴ感じまくってんだよ! これはアレだ、FPSとかでちょっと自信のある兵種でマルチに潜ってたら自分と全く同じ兵種の別プレイヤーと味方同士でマッチングした時の感覚だよ!! 味方として共闘はするし困ってたら救援に行くけどそれはそれなんだよ!!!
たとえ味方同士だとしてもキルレという形で優劣は決まる、わぁ凄いですねグッドゲーム乙っしたー……で終わるとでも? たった1キルの差でも死ぬほど悔しいわ!!
「罪の清算はこと彼においては貢献にすべきだ、少なくとも被害者との示談という点ならとっくの昔に成立してるんだぜ! 俺が許してるんだからなァ!!」
「日和ってんじゃアねーぜ! 手に職ありゃあなんでも許されるなんざ、道理が通らねぇだろうが! 人じゃねェ、国だ!! ナメられたら終いだろうがよォ!!」
くっ、正論だ。だが道理はこちらとてある、俺の予想が正しければこと生産職の最上位は国宝級に相当する。懲役とかそういうパターンであったなら勝ち目はなかったかもしれないが……才能を潰すような刑罰を回避する為なら奴の役割は力になる。
奴は国のメンツメンツと言っているが、国への利益という観点から攻めていけば俺の勝ちは目前! マウント取って末代までドヤ顔かまして──────!!!
「おめぇさんらよう……落ち着けや、なぁ?」
物理的な破壊力があるわけではない、だが腹に重い一発が入ったかのような錯覚を覚えて俺もイーヴェルも動きを止める。
「おめぇさんらの言いてえことはよぉく分かった……だがなぁ、肝心な事をよう、忘れてるんじゃあねぇかい?」
「肝心な……」
「事?」
なんだ……賄賂か? いや、違うな……なんだ???
「ダルニャータ」
「は、はひぃっ!!」
「ここでおめぇさんよう……シケた嘘は吐くんじゃあ……ねぇぜ?」
「も、ももっ、もちろんでごじゃいますぅ!!」
ヴァッシュから向けられる威圧感の全てを受けているダルニャータは今にも倒れてしまいそうな様子だ、まぁ厳密にどういう関係なのかは分からないがヘマした平社員がCEO……いや、財団総帥の眼前に突き出されたようなものだろう。しかも文明的にその場で切り捨てられる可能性すらある。
弁護士と検事ごっこをしていた俺とイーヴェルなんかとは比べ物にならない絶対的審判者がゆっくりと、しかし簡潔に問いかける。
「───何故、そう動いたのかを……言いな」
「あ、えう、あう…………そ、その、それは………」
馬鹿な、ネコババにご大層な理由などあるもんか。出来心ですと正直に白状できる度胸があいつにあるとは思えない、どうする? どうフォローして……
「そ、その………っ、懐に、いれ、入れたことは、も、もも、申し開きもごじゃ、ございません……っ! し、しかし! しかし!! こ、この琥珀の中に、封じ込められ、られているものは………! あまりに、あまりに危険で……! と、鳥の人にま、万が一があっては、キャッツェリアの威信にかか、関わると………!」
一同、沈黙。
俺とイーヴェルはどちらが話しかけるでもなく互いに視線を交わすとやれやれと肩をすくめると………
「「先に言えやブッ飛ばすぞコラァ!!」」
「ひぃい!!?」
ご大層な理由あるじゃねーか!!
ちなみにヴァッシュは最初からダルニャータがネコババした理由を知ってたし(厳密には察してた)、エードワードはそれについて事前に説明を受けてたりする
つまりアホ二人は茶ば…いやなんでもないです




