明日晴れるやウサを晴らすや
古戦場の一角から愛を込めて
そうだ、リヴァイアサンクリアしよう。
上位ティアーに踏み込んだところで八連敗し、速攻で中位ティアーに叩き落とされた俺の脳内にふとそんな言葉が思い浮かんだ。
「そもそもね、三時間レートに潜りっぱなしってのがね、うんメンタルの健康的に良くなかったわ」
はー暫くクソテレビの面は見たくねーわ!!
「アラバ、今日でここからおさらばするぞ」
「お、起きて直ぐに何を言い出すんだお前は……」
「ええい黙らっしゃい!俺はテレビのない中世世界に帰るんだよ!!」
「普段に増して何言ってるか分からんぞ!」
無理に理解しなくていい、ただ感覚で行動しろ。
「サイナ!」
「指示を」
「話が早くて何よりだ、奴に会いに行くぞ!!」
クソみたいに広いこのエリアで、移動手段が徒歩か重力ジャンプだけってのは妙だとは思っていた。
どこかに乗り物か何かがあるのかと探していたが……迷路内に打ち捨てられているわけでもなければ中継の休憩所にも無い。勇魚に聞いてもなんかムカつく笑顔を向けられるだけ……だが今なら分かる。
「つくづく世界観からのアプローチがお好きなゲームだことで……」
この第一殻層に出現するエネミーは二種類、新世代型のゴーレム「テクノマギジェルス」と旧式のゴーレムの二種類……だがどれだけ歩いても戦っても狩り尽くしても、テクノマギジェルスしか出てこないとなれば流石に妙だと気づく。
ここで重要なことは、シャンフロというゲームがともすればプレイヤーが快適にゲームをプレイするという大前提を後回しにしてでも世界観を突き詰めるケがあるゲームという点だ。
兎にも角にも作り込みが異常なこのゲームは、ただの花にすらフレーバーテキストがあるという。であれば旧式のゴーレムとやらが出現しないのはレアエネミーだから、というよりも……なんらかの条件を満たしていないのでは、という事だ。
「重力ジャンプを早期に見つけたのも今思えば悪手だったのかもな」
あれは徒歩と比べると文字通り飛躍的に距離を稼げるが、それ故に「条件」を後方遥か彼方に見落としていた。
「修復派遣ゴーレム「アンツ」……出現条件は迷宮の破損……!!」
「補足:そしてこの第一殻層において広範囲を移動する手段を唯一保有するゴーレムですね」
サイナと俺の手によって破壊の限りが尽くされた迷路の一角にどこからか飛来した奇妙な形のゴーレムが着地する。
それは大型バイクと蟻を合体させたような奇妙な形をしたゴーレムであり……その組み合わせの性質上「操縦席」を持ったこのエリア攻略の鍵だ。
『ご明察です! 「アンツ」は本来、宇宙空間における船外活動用のゴーレムでしたが、この星に移住した際もその堅実な設計から無重力圏内活動装備を重力圏内用に換装して現在も修理用に使用されています。ですが現在は無人操作状態……乗ったところで操縦はできませんよ?』
「悪いな、この手のクイズは得意分野でな……!!」
なにせ異世界の知識を持っているもので、あからさま過ぎるくらい「これが制御装置です!!」と言わんばかりのアピールが激しいパーツを見れば何をすればいいかくらい直ぐに分かる。
「こっから狙えるかな……」
アグアカーテを構え、狙いを定めて…………発砲。
「外れてないか?」
「提案:接近攻撃による該当装置の破壊」
「………」
インベントリアから両手で抱えたまま動けるギリギリのサイズな狙撃銃「プエーロ」を取り出しスコープを覗き込む姿勢を取る。
その瞬間網膜に直接「拡大画面」が投影され、肉眼で狙いを定めるよりもより精密な狙いをつけて……スナイプ。
バギャッ!
「はいよゆー」
……なんだその目は! ほら! さらに連続で二発命中! つまり最初の外した分を合わせても命中率75%……欠片も信用できない命中率じゃねーか! ゴミかよ!!
ま、まぁ? 追加で購入したスナイパーライフルの性能を試しただけだし? これも計画の内と言うか? ただ正面切って戦わないとヴォーパル魂下がる予感があるんだよなぁ……しょっぱい戦法取ると露骨にヴォーパル魂下がるからな、罠師涙目。
「操作方法は……バイクと一緒か? いや三次元的に動くなら上下の操作があるはず……」
「どわぁぁぁあぁあぁあぁあ……!!?」
勝手に「アンツ」に乗って勝手に操作して勝手に上へ吹っ飛んでいったアホ魚類は無視、二分ほどかけて操作方法に一通りの見当を付けた俺とサイナは安全運転で「アンツ」を操縦。
上空でデンジャラスロデオ(蟻)を楽しんでるアラバの救出に向かうのだった……
ええい! 何故手を離せと言ってるのに全力でアクセルを入れるんだてめーは!!
………………
…………
……
「成る程! これは中々に楽しいな!」
「こ、こやつぅ……!」
「推奨:教導的打撃」
まぁ落ち着けサイナ、実際中々に楽しいから俺も人のことは言えん。
地上に降りてから一発入れよう。
それはそれとして、三次元的バイクとでも言うべき「アンツ」の操作は中々に楽しい。
バイク的ハンドルを左右に傾けるだけではなく、前後に押し引きすることで上昇と下降を行うらしいこの蟻バイクは迅速、修復、何れもマッハで終わらせる意識高い系の蟻だ。物理的に俺の意識も高い場所に運んでくれる辺り、リヴァイアサンの外にも持ち帰りたいくらいだが……残念ながらエネミー判定、お土産には出来ないらしい。
「警告:残存エネルギーの著しい消費が確認できます」
「無尽蔵に乗り回せるってわけじゃあないらしいな。だが十分だ……アラバ! サイナ! 壁側の重力に着地する! ヘマ打って落ちるんじゃねーぞ!!」
第一殻層はリヴァイアサンの裏側、つまりざっくり言ってしまえば巨大な箱の裏側にびっしりと地上が敷き詰められているようなものだ。
だから徒歩ならともかく飛んでいる状態で「底」から「壁」、あるいは「天井」の重力圏に捕まれば……
だがそれでも、「空」に居座るアドバンテージは地を這う以上に大きい。
「見えたぜボスエリア……っ!!」
俯瞰とは一歩引かなきゃ見えないものだ、マジでどこからスタートさせられてたんだ? 地上からじゃ全く見えなかったぞ……
『第一殻層統括試練対象に挑戦する前に最終休憩所は如何ですか?』
「いいね、セーブは無しだが寄ってはおこう……!」
よし、降り「緊急事態! 緊急事態!!」サイナお前…………
『あ………と、突発的な重力雨にご注意下さーい……』
さすがに仕方ないとは言え、真下から吹っ飛んできたテクノマギジェルスが直撃して墜落するサイナを救出しつつ、いざボス前へ!
サンラクが陥った状況を作者は「普段使ってないブキで運良く勝って「あれこれ実はこのブキ自分に合ってる?」と使用続行した結果ボロ負けしてウデマエ溶かす現象」と呼んでます




