爆釣!クソゲーを喰らう魚!!
古戦場から逃げるな
戦え……戦え……
場違いでも肉は稼げる
かかってこいと啖呵を切れ
らしく振る舞う度胸
逃げたいなんて思いは捨てろ
げんかいを超えてポチれ
るっ、は神漫画
ないても勝てない
「くたばれオラーッ!!」
「やんのかコラーッ!!」
「はいはい漫才はそんくらいにしてね」
オイカッツォと俺、互いにメンチを切り合っていたのを中止しつつ、様々なアイテムが星の如く宙を浮いて流れる空間で俺たち四人は相対する。
「んー……スルーするにはちょっと個性的すぎるかな?」
「問題ありません、この当機のインテリジェンスで解決可能です」
「キャラ濃ゆいなー……まぁ裏は取れてるけどサンラクと契約? した征服人形だよね?」
「肯定:当機は契約者をインテリジェンス・アシストする征服人形、エルマ=317です」
「サンラク君、契約のコツとか聞いていい? めっちゃ楽しそうなんだけど」
「割と俺も条件分かってないんだなこれが、そこんとこどうなの?」
四人目……しれっと格納空間内部にパーソナルスペースを作ってやがったサイナがペンシルゴンを指差しながら言葉を続ける。
「契約の基準は状況によりますが、征服人形は型ごとに契約者の適性が存在します。貴女であればリリエル型などが相性的に良いのでは?」
「リリエル……? あー、あのあざとい感じの」
「よく覚えてるね」
「一応私、人に顔見せて人の顔見る仕事してるからねー。ゲームみたいなキャラが立ってる顔なら大抵覚えてるよ」
その点から言うと逆に俺はいろんなゲームで似たような記号を見るから覚えるの苦手なんだよなぁ……
「あ、そうだ話変わるけどペンシルゴン、やっぱ参加は無理そう?」
「参加? あーあれかぁ……テレビユーガッタって首都圏じゃん? 私その日ちょっと関西の方に行かなきゃだから」
「真逆かー、流石に無理か……」
やはり妙だ、なんだってこいつはその放送とやらにここまで力を入れているんだ? そりゃGGCで暴れた正体不明の助っ人二人を呼び込めるとなれば取れ高としては十分かもしれないが……
どうやらペンシルゴンも同じことを考えたらしく、半目でオイカッツォを睨みつけながら問いかける。
「カッツォ君さぁ……なぁんか隠してない? 意図的に情報を隠してるっていうかぁ……」
「いやいや、いやいやいや……そなことなですよ」
…………怪しい。
「おうキリキリ吐けや鶏ガラボーイ、場合によっちゃ当日に外せない予定が生えてくるぞ」
「ぐ……………実は、ですね……シルヴィアとアメリアの二人がどうしても出演したいと、ハイ」
「アメリア…………ダイナスカルの猛禽?」
なんだそのかっこいい二つ名は、ていうかそれは実在人物を指すのか?
「ゲーマーとしては私もそこまでは知らないよ、ただ身長190オーバーでちょっとばかしがっしりしてるけど、マッシブすぎないモデル体型の怪物だからねぇ……お仕事的に知ってる感じです」
写真集の売り上げだけなら全米一を超えてるらしいからねぇ、とケラケラ笑いながらもペンシルゴンはそのアメリア何某について話を続ける。
「そっかー、アメリア来るなら私もちょっと行きたくなってきたなー……んで? にわか知識の私でもアメリア・サリヴァンの「負けず嫌い」は知ってるけど……あぁ、だからか」
「何がだよ」
答えたのはペンシルゴンではなく、オイカッツォ。
「アメリア・サリヴァン。全米ランキング二位、ダイナスカルの猛禽、重量級キャラでただ一人の例外を除いてあらゆる高機動キャラを叩き落としてきたプロゲーマー……そして、」
───今年の夏まで、最も「リアル・カースドプリズン」に近かった女。
「さて問題です、彗星の如く現れた謎の不審者がGGCという大舞台で全米一位相手にカースドプリズンでエクストララウンドまで持ち込みました。プライドが高すぎて日本に殴り込んできたプロゲーマーは何がお望みでしょうか」
「初黒星を叩きつけた日本人プロゲーマー」
「もう200試合くらいしてるよ、勝率はあっちが六割」
ボコられてんじゃんウケる。
「ちなみに最近中国拳法をインストールしたシルヴィアは勝率100%」
ボコってんじゃん怖……。
しれっと怪物の基礎スペックが鬼強化されてる事実に背筋が震える。中国拳法はダメでしょ……フィクション的な発勁とかマジでやるだろあの全米一。
だがようやく合点がいった、この野郎ろくに詳細を話すこともなく俺を怪物の巣窟に叩き落とそうとしてやがったな……!
「ちょっと当日風邪と腹痛になる予定が……」
「最速便で胃薬と風邪薬送りつけてやろうか? ん? いやマジで勘弁して、元々キミ一人呼ぶつもりだったんだけどどこから漏れたのかシルヴィア経由でバレて……」
「ちなみにサンラク君がドタキャンしたらどうなるの?」
「全米一位二位のドリームタッグvs俺一人の地獄絵図が世界に配信される」
「超見たい」
「ちょっと当日風邪になるイメトレするわ」
「やめれ!!」
ガチの声だった、というか手が震えていた。お前、今日に至るまでに一体何が……いや、見なかったことにしよう。覗いちゃいけない穴ってのはどの世界にも存在するものだ。
「……ふ、ふふふ」
「どうしようサンラク君、カッツォ君が壊れちゃった」
「修理に出す?」
「ふふふ……だが、だがしかしだよサンラクぅ……俺は君のテンションを上げる手を用意してるのさ……」
あ?
何やら不気味に笑うオイカッツォはゆっくりと口を開くと、その言葉を口にした……
「Justice Versus日本語訳パッケージ第一版を報酬に出す」
「なっ………!!?」
ジャスバの第一版だと!?
「何それ」
「海外のレトロゲーだよ、一応今のVRシステムでもプレイはできるけど世代的にはフルダイブVR以前のVRカテゴリのゲーム」
「……冗談だろ? 第二版の間違いだろ? パケ版のVer.1とか博物館に寄贈するレベルだぞ……」
「顔隠しの釣り餌になるって言ったらアメリアが簡単に取り寄せてくれたよ。かかった金額……聞く?」
「…………」
何か言おうとするが、俺の口は動くことなく沈黙する。
Justice Versus、確か世に出たのは十数年前……フルダイブVRの普及で駆逐され尽くしたコントローラー操作の格ゲー最後の世代……まごう事なきレトロゲーだ。
発売された時点で既にフルダイブVRは数こそ少ないが普及しつつあった、そんな中で古き良きコントローラー操作をあえて選んだこのゲームのキャッチコピーは「前人未到を無限大に」というものだった。
フルダイブVRはゲームの歴史を語る上で絶対に外せない技術革新だ。プレイヤーとキャラクターの共感、同一視、シンクロ、その究極系と言っていい完全フルダイブはある観点からコントローラーでキャラクターを動かすゲームに劣る点がある。
簡単な話だ。プレイヤーはどう足掻いても人間であって、人に出来ない動きは出来ないし人の身体に存在しないパーツの動かし方なんて知らない。
ジャスティスバーサス、ジャスバはコントローラー操作型の格ゲーとしてのそのアドバンテージを限界まで突き詰めた名作だ。
往年の格ゲーの本質はカードゲームに似ている。キャラクターの出す技はどれほどの威力でどれほどの範囲でどんな効果であるのかが最初から決まっている。
プレイヤーは小パンからゲージ技に至るまでのカードを複数枚積んだ手札を互いにぶつけ合って勝敗を競っている。
フルダイブVRはその「手札」が緩く、狭い。プレイヤーが実際に身体を動かすからこそプレイヤー自身のスペックに依存する面がある。
当たり前だ、少なくとも当時の技術でズブの素人にCQCの動きをさせようとすれば身体が自分の意思に関係なく勝手に動くようなものになる。
むしろたった十年でシャンフロみたいな直感的に「できる」と思わせるゲームが生まれたのがおかしいんだ。まだ主流はモーションアシストだぞ。
ではジャスバの何が凄いのかといえば、そのカスタマイズ性にこそ───いや、今はそこはどうでもいいか。
「マジ……なんだな?」
「マジだよ、毎日毎日アメリアから対戦と催促のメールが飛んでくる生活を終わらせたいんだ……だからサンラク、リアルミーティアスを追い詰めたあの時くらいカッ飛んで欲しいのさ」
最高に情けない心情を吐露しつつも、オイカッツォはニィ、と笑みを浮かべていた……
古戦場を2ターン周回しながら、しかして作者の脳内では現実逃避による高速設定生成が行われていた……っ!!
アメリア編はGH:Cで行きます




