とりまドリンクバー
武器の設定考えてるだけで半日潰れるのでマジでやばい
俺を誰だと思っている? ダチの球技大会に備品として参加すること数えきれず、あらゆる体勢で地面に叩きつけられてきたこの俺がっ!!
「こんな優しいスローで着地をミスるかよ……っ! サイナァ! アラバを抱えて着地しろ!!」
「了解:」
「どぁあ!?」
サイナは飛ぶ、とまでは行かないがブースターで跳ぶ事は出来る。NPCとはいえ多少死にかける程度で済むなら安上がりというもの。
さて問題は俺の方だが……フッ、不安定の極みみたいな水晶巣崖やシグモニア前線渓谷と比べりゃ、ブロックを積んで並べたようなオブジェクト配置はヌルすぎて風邪引くレベルだぜ。
「第一着地!!」
積み上げられたコンテナのような足場に着地、ゴリっとHPが削れるが許容範囲だ。そこから跳んで……からの!!
「おっぐ……第二着地!!」
ガン!!! と跳躍した先、迷宮を形成する壁の一面に両手両足で触れて蛙のように着壁。慣性を打ち消しながらも両手両足に力を込めて宙に身を踊らせる。
「元気一発……ラスト着地!!」
空中で回復ポーションをキメつつ地面へと降り立つ。プラスマイナスゼロコンマワン、体力の九割が削れたが確かに生きて立っている……ふふふ
「十点、十点、十点」
「判定:客観主観共に赤点かと」
「死んでないから満点なんだよ」
部位欠損有りのゲームだと割とポンポン腕やら足やらが捥げる、ので五体満足で安全圏まで逃げきれた時点ででかいアドバンテージを得たに等しい。鯖癌とかサンドバッグにするにせよモンスターへの餌にするにせよ、まず足を潰すのが定石だからな……φ鯖とかプレイヤーがほとんど素手なもんだからやり口がいちいち生々しかった。折るな、潰すな、引っ張るな。
「全員生きてるな? アラバはネレイスを踏み折ってないだろうな?」
「さ、流石にそんなヘマはしない!」
「ルルイアスデ、無クシタ癖ニ」
「うぐぅっ」
「自分の武器は大切にしろよ、全く……」
アラバがものすごい目で俺を見ているが……はて? 全く、これっぽっちも、欠片も心当たりが無いなァ!!
「とりあえず情報を纏めるぞ、とりあえずビンタはしないでやるから出てこいよ勇魚」
『ホログラムなんで物質的干渉は出来ないんですけどねー。というか私も混ざるんですか? 一応私、立ち位置的に敵側というか……あぁいえ、この身もリヴァイアサンの末端区画に至るまで人類の味方ではあるのですがそれはそれ、これはこれというか』
「チュートリアルなんざ鬱陶しいくらい親身なもんだろ、いいからいいから。明かせる情報だけ吐けばいい」
『そうですね……そう、ですね? まぁいいでしょう。あ、少しお待ちを…………はい、ここから少し進んだ場所に中継ステーションが ありますので、そこなら接敵の心配も御座いません!』
あ、やっぱり途中休憩できる場所あったか。無い可能性も視野に入れてたから朗報っちゃ朗報だ。
そんなわけで網膜投射なる微妙に怖い技術で表示されたロケーターに導かれるままに進めばちょうど前線拠点を思わせる広さの開けた場所に出た。
ご丁寧にベッドやらなんやらが並んでいるが……え、これまさかIH焚火?
『ちょっと待ってくださいねー、今机と椅子を作りますので』
「なんと、面妖な……」
金属の地面にラインが走り、分解された机と椅子を2Dで表示したような……要するに設計図が床に描かれ、その形のままに隆起した金属塊がひとりでに組み上がっていく。
『ささ、どうぞどうぞ』
「刀用の椅子……?」
「ゴ丁寧ニドウモ」
しれっと自分用とネレイス用の席も用意している勇魚がホログラム越しに座るモーションを見せ、見てくれ的に人間、魚人、精霊、人形、AIというなんとも言えない混合パーティが円卓に並ぶ。
『あ、嗜好品及び食糧はあちらで補充できますよ!』
「ドリンクバー……」
福利厚生が万全すぎるぞこのダンジョン。それはそれとして興味があるので駆けつけ一杯。
「なにこの急速精製10000%トロピカルジュースって」
押してみる。
『そちら、保存された果実種子を十秒で急速成長させたものを原子分解して圧縮、液状化した飲料で御座います!』
「重っ!」
え、何これつまり果肉も皮も全部液状化したのをさらに圧縮してコップ一杯に押し込んでるの? 水で薄めるタイプの原液じゃねーのこれ。
「ズ、ズズゾ、ズゾゾゴボボボ……」
鮭頭なのでコップに口をつけられない、自然ストローを使うわけだが……ストローで吸い上げるリキッドが物理的に重い、という珍妙な体験……ゲームならでは、ということか。あと味は濃い目のフルーツジュースだった、薄める用の水ない?
「凄いぞサンラク! 鮮魚が出てきた!!」
「征服人形用のエネルギー補給飲料……成る程、知的飲料ですね」
あははうふふ……………………
「いやファミレスか!!!」
ドリンクバーの全メニューを混ぜたものを作っていたところで正気に戻る。くっ、単純に娯楽施設として面白すぎるんだよ……!!
「本題! 本題に戻るぞ!!」
「サンラク! このショーユとかいうの凄いぞ! 革命的だな!!」
「───そうか、この緑のペーストも一緒に食え。ピリッとした辛味で刺身の味を引き締めるんだ、そうそうたっぷり使えよ」
「そうか! それはまた新感かぐばはぁぁぁあああああああ!!?!!?」
鼻を抑えて椅子から転げ落ちたアラバを冷たい目(魚)で見下ろしながら作戦会議を開始する。
「とりあえず分かったことは三つ、この第一殻層には重力ギミックが存在するってことだ」
「肯定:」
関西弁Modでも入ってんのかこのポンコツ、まぁいいや。
この重力ギミックの厄介な点は自身が関与していない別の場所で起きた影響がこっちに降りかかってくる事だ……物理的に。
「次に重力ギミックは床にダメージを与えることで任意で暴走させられる。勇魚、あの床は基本的にダメージで「逆向き」にベクトルが向くと認識していいのか?」
『部分的にノーと回答します。重力制御システムは床以外にも設置されています、過度な衝撃で暴走した場合、斥力的作用を「露出面側」に対して行使します』
床以外……あぁ、壁とかオブジェクトにも仕込まれてんのか。
『さらに補足しますと、第一殻層「迎門」を構築する重力制御システムは2×2メートル四方で区画分けされています』
ブロック構造か、目測だが通路の横幅は四メートルくらいだったはず。つまり横幅2ブロックで構築されていると考えていいだろう。
「重力床は勢いがある状態で踏めばその方向に吹っ飛ぶ、接触が絶対条件か?」
『斥力的作用は重力制御システムへの衝撃に比例します。元々スペースデブリ……あぁ、星のカケラを弾く為の鎧を転用したものですから。接触に関してはノーです、上記の条件を加味した上で一定値以上の斥力的作用は接近でも影響を与えます』
言い直さなくても現代人たる俺は理解できるのだが深くは指摘すまい。何でもかんでもメタな視点で見ればいいってものでもないだろう。
「は、鼻が……」
「ワサビは適量嗜むもんなんだよバーカ、話聞いてるか?」
「聞いてる、聞いてるぞ……聞いてる上でさっぱり分からんぞ」
素直でよろしい。
「要するにアレだ、強くぶっ叩く程「吹っ飛ばす力」も強くなるって事だ」
「なるほど……」
少なくともブースター吹かしたハンマーで思いっきりぶっ叩けば、複数人を数百メートル吹き飛ばすだけの出力は出せるのは実証されてるわけだ。
「そして三つ目、重力床は敵味方を問わず作用する。手動で使えるなら悪巧みできるぜ?」
具体的にはそうだな、さっきから気になりまくってたからこの際聞いちまうか。
「なぁ勇魚さんよう、あそこの自販機で気軽に並んでるアレ……重力制御システムを暴走させるだけの「火力」はあるのか?」
『───素晴らしい。次世代原始人類、貴方はアレの用途を正確に理解しているのですね』
「その気になりゃパンツァーファウストで空対空もできるぜ」
二度見した上で目を疑ったからな、何せドリンクバーの隣にハンドガンやらライフルやらが自販機で売られてたんだから。
他メニュー
・家畜調整人工肉ステーキ(冷凍保存した遺伝子を成長させたもの、生き物ですらない最初から最後までただの肉)
・超圧縮10,000キロカロリークッキー(クッキー1枚に含まれるカロリーはクッキー1枚分だぜ! なお二枚食べるとボウリングの球を飲み込んだみたいな胸焼けを起こす)
・気分タブレット「カレー味」(ナノマシンが摂取者の舌に干渉してカレーの味だけを味覚に伝える、もはや食べ物ですらない)
・合成抹茶ラテ(厳密には抹茶じゃないし牛乳も使われてない、じゃあなんなんだよこれ)
・哲学ココア(限りなくリアルに再現された材料を正しい手順で加工したこの飲料は厳密にはココアではないが、正しいココアを飲んだことがないリヴァイアサンの住人にとってこの飲料こそがココアとして定義されるものであり、であるならばこれはココアであるが同音異義語としてのいやしかし概念的役割はココアと遜色ないものであり………と科学者たちが謎の哲学に目覚め、最終的にリヴァイアサン全体で五年間ガチ討論が繰り広げられた曰く付きのココアもどき。最終的にエドワードがキレた)
・玉手箱ワイン(五秒で十年物のワインが出来上がる)
・謎水(ラベンダー色、何故か「勇魚」の判断で生産禁止にされている……)
・ライオットブラッド・フィクション(特定コマンドを入力すると出てくるラベンダー色の合法エナジードリンク。「実装した覚えがない」byりっちゃん)
・あろまおぞん天然水(やーがてー星が降るー)
流石にライオットブラッド以降は冗談です
・空対空パンツァーファウスト
戦闘機の後部座席からジャンプしてすれ違った敵戦闘機に空中でパンツァーファウストをぶち込むサンラク式テクニック。
ちなみにこのテクニックを応用したものがGH:C編におけるヘリダンクに活かされている




