龍よ、龍よ! 其の十三
更新が遅れて申し訳ない、ちょっとナイアガラの風を浴びて来まして……(旅先更新)
小竜の思考AIは、どうやら単純にキルスコアの多寡で決まるというものではないらしい。
助けた何人から話を聞いたところ、どうやら「ブライレイニェゴ本体のヘイトを稼ぐほど小竜が多く寄ってくるのでは」という仮説が立てられているらしい。
つまり、あの場で小竜に袋叩きにされかけていたのは白竜ブライレイニェゴの目から見て「目立つ」人物であったようで、それを横から助太刀した俺もまたヘイトを集めるには充分であったようだ。
そりゃそうだ、何せ……
「おいっ! 聞いているのか!」
「聞いてる聞いてる、ウサギのように耳を傾けてる」
「そうか! ならばよし! ……ではなく! その剣! その剣だ!!」
そのブライレイニェゴから熱い視線を貰っていた奴が俺についてくるのだから。
「貴様、まさかそれは……アラドヴァル、なのか!?」
「いやいや、アラドヴァルは槍だろ? これは剣じゃないか」
「む? あぁ、そうだな……だが英傑ドルダナはかつて槍を振るう隙間もないほどの包囲にて自ら握りを折って剣とした、という臨機応変な頭脳を感じさせる逸話があって…………」
二秒沈黙。その隙を逃さないとばかりに突っ込んで来た小竜の内、人間サイズの二体を俺が斬り伏せ、巨人サイズの一体を俺にさっきからついてくる女が叩き斬る。
「いや、剣じゃないか!」
「せやな!!」
なんだこの巨人女、明らかになんか凄そうな剣を使ってるから巨人族の中でもヴァッシュとかシークルゥみたいな上位のNPCだとは思っていたが、クッソいじりやすさも上位ってか?
「なんで貴様が持ってるんだ!」
「逆になんでだと思う?」
「え? えーと……?」
おっとスリーマンセルか、悪いが「盾・台・跳」式天誅でもなけりゃ俺の不意は突けねぇよ。どんな天誅か? 読んで字の如く。
「やはり間違いない、竜を滅ぼす煌々たる劫火の刃……分かったぞ、拾ったんだな!?」
「正解! 凄いじゃん! よく分かったねぇ! ところで名前は?」
「むっ、あぁ……私は無双の双剣のフィオネ……だっ!」
おお、三メートルくらいあるタッパで戦うとやはり見栄えするなぁ。
「モラ・ベガルタ?」
「なんだ知らないのか? 我らが父祖オディヌが振るいし対なる二刃……これはその片割れたる情熱剣ベガルタなのだ!」
「すっごーい!」
同時に振るわれた二本の剣が小竜を斬りとばす。成る程、対の剣の片割れ……と。となるとモラ・ベガルタという名前的にもう一本モラルタもありそうだな。
「ふふん、私はこのベガルタに生まれながらにして認められ、モラルタ を持つ姉さんと共に竜を討つべく…………いやそうではなく!!」
「あ、ちょっと待って着替える」
もう八分経ちそうな気がする。体内時計なので厳密な時間は分からないがこういうのは危機感を抱いた時には動くくらいじゃないとな。
漆黒の水晶を取り出し、片手でアラドヴァルを振り抜いて一体撃破。
さらに膝を叩き込んだ上で後ろ飛び蹴り。
吹き飛び倒れたそいつを踏み付け、そのまま地に縫い止めるようにアラドヴァルを突き立て……
「変身!」
あっやべっ、素で変身って言っちゃった。勇輝の晶剣使ってた辺りからテンション引きずってたかな。
女帝至宝装シリーズが弾け飛び、一瞬だけ半裸……いや、頭装備も腰装備も弾けたから実質全裸……? 全裸状態の俺(女)が露わになる。
だが心配ご無用、これは魔法少女式の変身なので大事な部分は見えない仕様だ。
弾け飛んだ真紅の宝石、今は砕け散ったそれはキラキラと宙を舞っていたが……突如としてそれらの光が闇色に染まる。
小さな宝石の粒が黒い煙のような靄に変換され、物理演算を無視した巻き戻しのような動きで俺の身体へと巻きつき、締め上げる。今俺、腰に手を当てた仁王立ちなんだけどもうちょっと少女趣味っぽいリアクションした方がいい? 需要ないか。
そして巻きついた靄はいつしか衣服の形を取り、黒一色のドレスと顔を隠すヴェールに包まれた俺は、地面に突き立てたアラドヴァルを引き抜いて構える。
「第二形態……今の俺は無制限だ」
「な、なんだ今のは! カッコいいな!」
「せやろ?」
なんだろうな、この……なんだろう? エムルをあしらうのともサイナをあしらうのとも違うこの感じ……どこかでこんな感じの対応をした覚えが……
「あっ」
分かった。これ、親戚のちっさい子供を相手する感じなんだ。こう、なんだ、言語的に説明できない何かが俺へとそう囁いている。
「まぁなんだ、ほら敵が来てるぞ話は後!」
ずごん、と地面に突き刺さった別離れなく死を憶ふを軽々と引き抜き、肩に乗せてアラドヴァル・リビルドとの二刀流フォーム。貪る大赤依の時もそうだったが割とこれ対竜戦の最適解っつーか……単純火力と特効火力の組み合わせをブン回せるからこれ以外の択が思いつかないっつーか。
「貴様、見た目の割に力が強いのか……?」
「女子力高めだからな」
「……?」
女子力は戦闘力とイコールであり、私の女子力は五十万を超えているとはペンシルゴンの言葉だ。今の俺は女子力高いから別離れなく死を憶ふも軽々振り回せちゃうのだ。
「契約者」
「サイナか」
「個体名称「エムル」の協力の元、該当次世代原始人類の捜索を行いましたが現時点では成果を出せていません」
「どこにもいないですわー」
むぅ、【昇滝】を纏ったロボが暴れていればルスト辺りなら釣れると思ったんだが……こりゃ本格的に別ドラゴンのところにいるのか?
だとしたらどうする? ここで別竜のところに行くのも手だが、なんか巨人族のフラグか何かを踏み抜いた臭いし……アラドヴァルの現所有者としてここで巨人族から目をそらすのはヴォーパル魂というかヴァッシュとの好感度的にもあまりよろしくない気がする。
「仕方ねぇ……サイナ、もっと目立とう。強化装甲が使用可能な全武装の使用を許可する」
「成る程……知性全開放ですね?」
てめーの知性は弾丸で出来てんのか。だが嫌いじゃないぜそういうの、火薬は叡智の塊だからな。
「エムル! お前に預けたあれそれはまだ使うなよ?」
「ふふん、分かってるですわ! あれそれはとっておきですわーっ!」
おうよ、俺の貯金箱から引き出した金と伝手で手に入れた有りっ丈だ。使うなら本命相手じゃないとな。
「フィオネだったか?」
「無双の双剣のフィオネだ、巨人族の名は己が武器と共にある」
「あぁ、フルネームで呼べってやつか……」
「うむ、貴様らには慣れぬ慣習であると聞いているが我らにとってはとても重要なことなのだ」
「ん?」
今何か頭に引っかかったような……いや、気のせいか?
「アラドヴァルを担う者よ、来るぞ!」
『おのれ! 忌々しい刃でよくも愛しき我が子をぉお……!!』
なんだ、俺にヘイト向けてんのか? 上等じゃねーか、テメーの情報を確認した時からずっと言いたいことがあったんだ。
「単一増殖してる時点で子供っつーか単なる自分じゃねーか! ままごとにこっちまで巻き込んでんじゃねーぞ!!」
『な、なんっ、なぁあ……!!』
一匹残らず粉砕してやるよオラァ!!
「サイナ!!」
「要請……規格外武装:撃槍型【ファランクス】、展開します」
「え、なんかアタシも構えた方がいいですわ?」
はい人参。
「わぁい」
灼熱と死の二刀流、情熱の剣、巨大な撃槍、そして人参……ふっ
「お前浮きすぎだろエムル」
おっとすまんな、向こうが襲いかかって来たからものっそい顔芸をされても対応できねーや。
よっしゃ行くぞ! アッセンブル!!
え? 何? 無双の双剣の名前を冠するキャラが二人いるって? まさか最初に名前決めたこと完全に忘れて新しく名前を設定したせいで二人に増えたんじゃないかって?
馬鹿言っちゃいけない、そんなアホなミスするわけないだろう!
無双の双剣は本来「激情剣モラルタ」と「情熱剣ベガルタ」の二振りを一組とする対刃剣であるが、現所有者「ディルナディア」に妹が生まれた際、何故かベガルタの所有権だけが姉から妹フィオネに移ってしまった。
これが人間であれば殺すなり疎ましく思ったりとドロドロギスギス展開になるのだが、巨人族にとって「武器に選ばれた者」というのは非常に栄誉のあるものであるため「とりあえず実際に戦わせてその結果で処遇を決めよう」ということになった。
結果、なんと十二歳にして小竜を斬り伏せてみせた事でベガルタの所有者として氏族から認められ、現在は弱冠三十歳でありながら氏族の英傑として最前線で戦っている。
ということにすっか!!(割とシャレにならないガバだったがガバ転び八起きを体現するかのような見事なリカバリ)
何も問題はありません、背景ストーリーごと設定を生やしたのでふぃおねさんじゅっさい(巨人族の年齢は3で割ると人間相当)は正式に拙作世界観に組み込まれました。本来は一つの武器が分かたれているというシチュを逃す手はねぇ……!
あ、ちなみにフィオネさんじゅっさいはベガルタパワーで同年代と比べても明らかに育っています。バッキバキに腹筋割れてるしタッパも姉に迫ってるので傍目から見ると双子にしか見えない。実際は姉が六十歳なんですよ、二倍!




