この一撃に全てを賭ける……っ!
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正直言って、幕末に色気を出したのは失敗だったかもしれない。
今や大陸の覇を競う一つとして周辺国家にその威を示すまでに成長したバンメシ合衆国、プレジデントハウスの書斎で椅子に深く背を預けながら俺はそう思わずにはいられなかった。
「大統領、遊牧民族シャナラスタの使者が面会を求めています」
「だろうな、大草原と隣接したウチを無視するわけもなし……」
・友好的な態度をとる
・敵対的な態度をとる
・追い返す
「心を込めてもてなしてやれ、ユナイテッドは友好的な者を歓迎するのだからな」
「かしこまりました」
出会った頃と比べると随分と身なりの良い服を着たライスちゃんが退室したのを微笑ましく見送りつつ、ふぅ……と吐息を一つ。
「宗教って偉大ね……」
なんとなくこのゲームのクソゲニウムが判明してきたな……要するにこのゲーム、難易度設定が割とゆるい。というかただでさえ戦闘がぬるい上に内政面でも特定選択肢を選ぶと難易度がガタ落ちする。
事の次第はこんな感じだ。ある程度国力を高めるとアーフレント聖国から使者が来る。パルフィオン教だかなんだか知らないが、一見すれば宗教的隷属要請とでも言うべき誘いを受けるのだが……この時、選択肢次第では大統領が直接聖国に乗り込むことが出来る。
そこで聖女フィオナーレ相手に説得に成功すると、アーフレント聖国と同盟関係が結べる。その場合、難易度が……めっちゃぬるくなる。
破竹の勢いで国力を増す合衆国が宗教的後ろ盾を得た時点で小国群が一斉に所属を求めてやってくるし、パルフィオン教を国教と定める国も友好度が上昇、適当に間者を放って敵国を同盟国に嗾けて弱ったところを合併……うーんこのマッチポンプ。
強いて言うなら自陣営のステータス確認やら指示出しやらが面倒臭くなる上に各地のトップやらの面会やらなんやら……あれこれ内政プレイの悪い面ばっかり目立ってないか。
とはいえ我らバンメシ合衆国はみんな仲良くが国是、例えクソの役にも立たない小国のおっさん相手でも全力でハグするのが大統領なのだ。
「大統領! 新生ガルカート帝国の連中が! 率いているのは煉獄将軍だ!!」
「またあいつか……」
もうかれこれ五回くらいボコってんのに飽きないな……くそう、幕末イベ後レイドボスさん討滅戦を経験した後だからプレジ伝の戦闘要素全てが苦痛でしかない。
・私が出撃する!
・部下に任せる
・友好の使者を送ろう
もう騙されんぞ、ガルカートにどれだけ友好の使者を送っても首になって帰ってくるだけじゃねーか。
「俺が出る!」
はいスラッシュはいビームはいプレジデーン!!
「それなりに経験値とかが美味しいのがまたなんとも……」
煉獄将軍の鎧、これで六着目だぞ……確定ドロップだからあんまり強くないし、しゃーないから例外的に兵士一人一人をビルドできる大統領親衛隊に着せていくか。
「あと四着か」
目指せ大統領親衛隊「煉獄軍団」ってか? 実現可能っぽいからまたなんとも。
時間は進んで翌日。
「行けい! 我が親衛隊「煉獄大隊」! 敵を蹴散らせ! 突撃! 突撃! 突撃!!」
煉獄将軍の鎧を作ってる工房占拠したら大隊規模で鎧手に入るとかギャグだろ、笑うわ。
数百もの煉獄シリーズがのっしのっしと戦列を組んで本家煉獄将軍を追い詰めていく様はなんというか、クローン反逆とかそんな感じのSF的ホラーを感じさせる。
腐っても将軍装備、ぶっちゃけ強装備で固めた親衛隊投入すると兵士の損耗率めっちゃ下がるからますますヌルゲーが加速してしまった。
とりあえず大国の仲間入りを果たした今のバンメシ合衆国の敵は実質的にただ一国と言っていいだろう。
新生ガルカート帝国、このゲームのプロローグ以前に栄えた大帝国の正統な後継を名乗る大国だ。
他の小国の将軍が多かれ少なかれ使い回しのグラ(ヒゲで差別化)であるにも関わらず、あの帝国だけは上位クラスの兵士に貫禄の個別グラが与えられている。
特に四将軍とかいう四天王ポジの奴らがまぁまぁ厄介で、プレイヤー抜きで戦うとどれだけ鍛え上げても二割ほど敗北の可能性を拭いきれないくらいには強い。
「とりあえず煉獄将軍はハメルート確立できたっぽいが……暗黒将軍がウザい」
ATK高そうな名前してるくせにやることなすこと謀略系だ、ウチの穀倉地帯に奇襲しかけてきた時は流石に冷や汗が流れた。
まぁそのあと追撃しかけて敵軍半壊まで叩きのめしてやったが……このゲーム、イベントチャプターが来るまで敵将無敵なんだよなぁ、兵士も割と畑から生えてくるのか消耗の度合いが薄いし。
「とりあえず煉獄将軍のヘイトを稼ぎつつ他将軍が攻める国に救援送って……あーでも程よく遅れさせて削られてもらわないと……」
はいプレジデントビーム。
作業は作業、効率的な稼ぎを見つけ出したとしても面倒なものは面倒だ。
パターンを変えて逆立ちしながらの足狙いプレジデントビームが炸裂したのを眺めつつ、いつも通りにリザルト処理。
「やれやれ……」
「お疲れ様です大統領、お怪我はありませんか?」
「ああライスちゃん、今日も今日とて快勝だ」
「……それはなによりです、今日は私が作ったパイで戦勝祝いとしましょう」
うーん、ライスちゃんの好感度を高めていてよかった。バリエーションが多めに用意されているのか、ほとんどセリフ被りがない出迎えの言葉になんとなく頬が緩む。
ぶっちゃけ味覚クオリティはシャンフロと比べるまでもないのだが、豪華なメニューだったりすると嬉しくなる。
「作業ゲー直後だからだろうか……妙に癒される」
ライスちゃん最高かー? さーて、次のチャプターも頑張……
「はっ!?」
まさか、これがこのゲームが妙に流通していない理由、なのか……? クソ要素を積み重ねた後に秘書キャラがデレることで実数値以上の効果を出す……まさか、これまでのクソ要素はこれを際立たせるための……!?
いや、そう考えると妙に納得できる部分が多いぞ。シミュゲーだし当たり前と流していたが、妙に秘書キャラだけ受け答えのパターンが多いし、キャラグラも(モブと比べるのもアレだが)妙に力が入ってるし……このキャラクターエンジン、風雲プレジ伝の発売時期的には最新のやつじゃないか?
「まさか……この一撃のために、全てを犠牲に……?」
いや、本末転倒じゃねーか。
なにその、最高のラーメンの具を集めるために麺とスープを犠牲にしましたみたいな。
じゃあもう具を単品で出してくれよ、付け合わせで手抜きの麺とスープを食いたくないよ。まぁ麺とスープと具の全てに毒が仕込まれるよりはマシだけどさぁ……なぁフェアクソ。
まぁでも秘書キャラという、いわば女房役のキャラクターに力を込めるのは悪くない。大抵の場合はそう言ったナビゲートキャラの顔ってのは見飽きて来るもんだからな。
ストーリーを進めるほどキャラの新しい一面が見れるとなれば、まぁ作業ゲーでもやってやろうという気にはなる。
というか他キャラのグラがなんとも言えない感じなので秘書キャラだけが心の拠り所というか……まぁいい、モチベーションの燃料になるならそれは良いことなんだろう。
「さて、チャプターを進めるか」
フラグは煉獄将軍の本拠地を陥落させる、だったか。とはいえこっちからケンカを売ると国の信頼度が下がるから……よし、このいい感じに我が合衆国に対する不満値を上げてる小国に間者を送り込んで……フハハハハ、貴様は大義の為の犠牲となれ……!!




