人の口に戸は立てられず
「あ、あの、貴女は……」
「あぁ、この姿ではお初にお目にかかる。私です殿下、サンラクです」
「まぁ!」
速攻で淑女の化けの皮を被ってロールプレイ。ええいニヤニヤしながら動画を撮るな! お前は後で天誅だ!!
「ええと……その、実は女性だったのでしょうか?」
「いえ、大元は男です。まぁ……縁あって性別を変える術を手に入れたのですよ」
「ねぇサンラクくん私それすっっごく気になるから是非とも教えて欲しいんだけどぉ……」
「しゃらっぷ!(全力猫なで声)」
「ゔっ、うへへガチ恋不可避じゃあないかぁ……」
クターニッド関連は秘匿が面倒になったのでペンシルゴンにだいたい委託している、性転換したいなら外道と変態で共食いしてやがれ。
「ご無事で何よりです陛下、こちらも少々手間取りましたが……えぇ、なんとか」
「うむ、そうか……先程まで男であった者が女として話す様は中々どうして奇妙な体験ではあるが……よくぞ無事であったな」
まぁ一回死んでるんだが、そこは言わないでおこう。
とはいえ言ってしまえば壮絶な寄り道であったレイド戦にかまけて本命をドベってしまっては元も子もない。正直一回ログアウトして眠りたいところなんだが……っていうか丁度いいや、一旦休憩にしようそうしよう。
「というわけで休憩な」
「……? ………???」
「おいおい、これくらいの意図は読み取ってくれよ」
「たしかに結構な時間ログインしっぱなしだったものねぇ」
「え、俺の心読むなよプライバシーの侵害だぞ……」
「模範解答が知りたいところだねぇ……」
人間が絡む問題の解答は大抵が時間経過で変化するものさ、現実って残酷ね。
そんなわけで一時間程休憩と相成ったので、急遽作成された森人族達のインスタントセーブポイントでログアウトするのだった…………
【旅狼】
鉛筆騎士王:あー、これが最後の通告である。大人しくつい先程自分が何をやらかしたのか白状しなさーい
オイカッツォ:しなさーい
鉛筆騎士王:さもなくばこちらも直接的制裁の行使を選ばざるを得なくなるぞー
秋津茜:なるぞー!!
ルスト:具体的には?
鉛筆騎士王:幕末に汚染されたゾンビをけしかける
京極:ウェェルカァァム……
サンラク:ログイン天誅すら対処できない侍もどきがほざきおる
京極:は?
サンラク:ていうかもしかしてプレイヤー全員にアナウンス流れてた?
鉛筆騎士王:おーし自分からゲロったなぁー???
オイカッツォ:口が軽すぎる……ヘリウム常飲してんの?
サンラク:ユニーク自発してから意見してもらえますぅー?(高音)
オイカッツォ:悔しいけどちょっとふふってなった
ルスト:モルドが起きていたら確実に半日は使い物にならないところだった、危ない
鉛筆騎士王:ていうかマジで君かー、お前かー、貴様かー……はぁ、ライブラリがうるさくなりそう
サンラク:いや待て、今回に関しては俺悪くない
サンラク:完全に巻き込まれの被害者と断言させてもらう
オイカッツォ:毎回何かしらのイベントを引きずりこむブラックホールみたいな生態してるくせによく言うよ
サンラク:毎回他の奴が発生させたユニークに便乗する衛星ライフ悲しくない……?
オイカッツォ:よしちょっと便秘来いよぶっ飛ばしてやる
サンラク:上等じゃねーかバーグトゥードだろ?
鉛筆騎士王:はいそこ自然な流れで喧嘩のスケジュール調整しない
鉛筆騎士王:で、どうだったの?
サンラク:どう、とは?
鉛筆騎士王:レイドモンスターって事は行動パターンはリサイクルできる
鉛筆騎士王:ライブラリ辺りにチクれば大きな金の流れを作れるねぇ……
サンラク:あれはどうなんだろう、多分大まかな流れは一緒だとしても本体のモーションは違ってきそうだし……
ルスト:便秘……?
サンラク:どっちにせよ三十人くらいは必須だぞこれ
オイカッツォ:三人でクリアした奴がよくもまぁ白々しく……
サンラク:いや、今回は大量のNPCとモンスターも使ってたからな?
サンラク:表記上は三人ってだけだ
秋津茜:それでもすごいと思います!
鉛筆騎士王:ていうか今度は誰の組んだの? また引き込み工作しないといけないわけー?
サンラク:………
サンラク:……いや、引き込みはしなくていいよ
サンラク:うん
サンラク:精神衛生的に
オイカッツォ:もしかして知り合いとか?
サンラク:知り合いっつーか、もっと拗れてる感じというか
サンラク:「スペクリ事件」の首謀者っつーか……
オイカッツォ:厄ネタかな? 特大の厄ネタだったわ
ルスト:今調べた、これの首謀者?
鉛筆騎士王:ちなみにその事件のレジスタンス側にいたのがそこで被害者面してるサンラク君です
サンラク:いえーい当事者でーす
サンラク:あともう一人はトットリ・ザ・シマーネってやつ
オイカッツォ:スペクリ事件はね……あれ以来規制強化されたゲーム増えたよね
鉛筆騎士王:今はシャンフロの話をしよっか
鉛筆騎士王:こっちもそろそろ合流できそうだから一旦シャンフロ側で集まれるかな?
サイガ-0:具体的に、いつですか?
サンラク:寝たいし明日の夜とかなら……
サンラク:あ、レイ氏どうも
サイガ-0:こんばんは
秋津茜:明日の夜なら大丈夫です!
京極:そろそろイベの季節だよ……幕末に戻ってきなよ……あ、夜なら僕も大丈夫かな
ルスト:夜……まぁ、なんとか
鉛筆騎士王:はいじゃあそういう事で!
鉛筆騎士王:尋問は不可避なので覚悟しておくように
サンラク:えー
オイカッツォ:えーじゃない
「えー……」
ダルい……いや、尋問確定とかそれ以前に普通に身体が怠い。とはいえこの程度の気だるさで屈しているようではゲームなんぞ出来ない、やはりここは一度シャッキリするべきか。
「ふふふふふ……適度にキメるならやはり日本製よな」
効き目が薄いから適度に目が醒める、あとあとぐっすり眠ることができるという寸法よ……あー、エナドリが身体に染み渡るぅー……
「よし、目ぇ覚めた」
とはいえ小腹も減ったし何か胃に入れてからログインするか。
この後、冷蔵庫で冷やされていたレバニラを少々拝借して腹を満たし、改めてログインするのだった……自分で思っていたよりも気が逸っていたのか、メールボックスに届いた一通の新着メールには気付かぬままに。
「んー……一回死んでリフレッシュも有りかな……?」
そういうものであると動けば戦闘中は気にならないが、やはり平常時ともなるとこの胴体で遠心力にモロ影響される胸が気になるわけで。
「アバターの形状に過ぎないとはいえ邪魔だな……」
「邪魔ならせめて一揉み!」
「悪鬼退散!」
「レ、レバー……!」
エナドリをキメたからな、さっきとはキレが違うぜキレが。
「同性でもハラスメント判定は出る、むしろこれは慈悲の拳だぞ?」
「ここはこう、やっぱり脇腹よりもへそ辺りへダイレクトにストレート入れた方がインモラル的な快感がありそうじゃない? あーっ! あ゛ーっ゛! こめかみぐりぐりはらめぇっ!!」
ろくに筋肉もねぇくせに一丁前に神経だけは通ってるからな、やはり頭部は大概弱点ですよ。ヘッショでワンパンなのも納得の効果だ。
「まぁ、それはそれとして森人族達はここに再び戻るつもりっぽいねぇ……」
「そりゃ故郷だって話だし不自然ってわけでもねーが……実際どんな感じなんだよ」
「トップクラスの建設職がいれば、ってところかなぁ」
森人族の建築技術は凄まじいと断言してもいい、木の枝数本と葉っぱなどのいくつかのアイテムだけでセーブポイントを作ることができるのだから当然とも言える。
だが逆に言えば早い、安いと続けば最後に来るのは脆いなのだ。
なにせ明らかに一番身分が高いであろうツンデレ……あー、えーと、ウメシュみたいな名前の……まぁいいや、梅酒さんですらサバイバルに熟練しているのだ、奴らは大前提からして住処を捨てることに慣れきっている。
つまり何が言いたいかと言えば、我々災害に慣れ過ぎて下手な地震や台風では動じなくなった日本人的観点から見ると、お前ら建築舐めてんのかとしか言いようのない復興ごっこにしか見えないわけで。
「壁の穴を葉っぱで塞いではい復興、ってそもそも応急処置にすら満たないだろこれ……」
「逆に無傷な壁にも葉っぱを貼ってどこから矢が飛んで来るか分からなくするとかぁ?」
「乱数はダメだぞ、10%の確率でも一発当確するならクソだよクソ」
特に受動的な乱数はマジでやめた方がいい、自分以外の何かに勝敗の判定を託すのは思ってる以上に頭に血が上りやすい。
「戻っ……なにそのアブノーマルなコミュニケーション」
「分かっちゃいますぅ!? ほらボク達アブノーマルな関係なのでぇ!!」
「出力上げてこうか」
「でンまぁぁぁぁあ!!?」
割れろ……割れろ……頭蓋よ割れろ……そーれぐりぐり。
ずっと頭をぐりぐりしながら(されながら)会話を続ける様はどう見てもアブノーマル&インモラル
なお本当は別にそこまで痛くもないけどわざと迫真のオーバーリアクションするのがディプスロクオリティ




