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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

此岸より愛を込めて花束を

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筆記用具の騎士王

 さて、我がクソゲーフレンドにして笑顔で中指を突き立て合う仲である親愛なる鉛筆戦士氏の事を紹介するのならば絶対に外せないゲームを先に紹介しよう。

 そのゲームの名は「ユナイト・ラウンズ」、滅びに瀕した王国を救うためにプレイヤー達は騎士となって襲い来るモンスターと戦う……「剣を重ね、結束せよ」がキャッチコピーの協力型(・・・)MMOVRである。だがこのゲーム、俺の家の棚に鎮座しているという事は、即ちクソゲーである。

 まず前提として、あり得ないレベルのドロップ率の悪さ。
 例えば初心者騎士(プレイヤー)が「薬草調達任務」を受けたとしよう、NPCの上官は拠点すぐ近くの森で採取してこいと命じる。さて新米騎士が取るべき最もスマートかつ楽な方法は何か?チュートリアルなんだから素直に森で集めてこい? おめでとう、そんな君はおおよそ12時間ほどひたすら草むらで四つん這いになる作業をする事になる。
 なにせこのゲーム、目を瞑ってプログラム組んだのかとキレそうなくらい設定に忠実なのだ。即ち、何もかもが滅びかけ(・・・・)。最も……そうゲーム内の全アイテムで最もドロップ率が高い「石ころ」ですら驚異のドロップ率40%という狂気の沙汰、プレイヤー達は運が悪いとひたすら

「この石は投げるのに適さないようだ……」

 というウィンドウを振り払いながら石を拾わなければならない。何故って?初期装備の剣が三回フルスイングすると破損するからだよ!!
 ちなみに薬草のドロップ率は2%である、雑草の繁殖力逞しすぎて文字通り根絶やしにしたくなる。

 ならば何が正解なんだよ? 簡単な話だ、他から奪えば良い(・・・・・・・・)
 これこそがユナイト・ラウンズ最大のクソ要素である「世紀末略奪ゲー」だ。オープンワールドで無法者になるカテゴリは有名無名含めて多く存在するが、まさかの協力型MMOで略奪こそが最適解になるとは誰も思わないであろう。
 だが事実、攻略サイトですら最初の薬草集めは「NPCの売店を襲撃するか、襲撃したプレイヤーを襲撃して奪うのが一番楽である」と明記する程だ。さらに運営が意地になったのか「ドロップ率は絶対に変更しません」と明言してしまった為に王国という名のアポカリプスは過疎って滅び……る事はなかった。
 なにせ前提としてPvPが必須項目と化したゲームであり、ゲーム評価サイトが星1の評価とその理由を過分に表現して記述する程に、誘蛾灯に惹かれた虫の如く対人勢が寄って来る。さらにギスギスを通り越して挨拶がわりに略奪、ログアウト寸前に奇襲、一緒にクエスト中に謀殺という前提条件全員敵、という救われなさっぷりはコアなユーザーもやって来る。
 結果としてユナイト・ラウンズ……通称「世紀末円卓」はMMOとしてはそれなりの成功を収め、本来の用途とは全くの真逆の楽しまれ方で今も続いている。




 話を鉛筆戦士に戻そう。奴は新たに呼び込まれた新規のうち、その世紀末な環境に惹かれた所謂「無法者勢(アウトレイジ)」だった。
 過程は省くが、実質全員敵とも言える世紀末円卓で暴れに暴れ、あらゆる手練手管を駆使した鉛筆戦士は何をトチ狂ったのか王国の掌握を達成、「富もドロップアイテムもみんなで分けようね(笑顔)」を掲げる血よりも真っ赤な鉛筆王国の爆誕である。

 あの頃は凄かった、この俺をして「クソゲーが極まり過ぎて神ゲー」と認めざるを得ないディストピアであった。
 意図的に配下にしなかったプレイヤー達から徹底搾取は序の口、内通者にわざとレジスタンスを作らせる事で被害者達に反抗の意志を持たせる、即ちゲームから離れないよう対策。
 まさしく奴こそが魔王、黒幕、ストーリー上のラスボスたる魔王「ロマニス十八世」とかいう影の薄いMobなど比べ物にならない。「真の魔王(トゥルー・イーヴィル)」、「反理想郷の女帝ディストピア・エンプレス」のアダ名は決して誇張ではない。あの瞬間確かにユナイト・ラウンズは一人のプレイヤーの掌の上だった。

 俺と……あの時はカッツォタタキって名前だったかな、ともかく俺とモドルカッツォは反乱軍にも王国軍にも属さない傭兵(騎士なのに?)として反乱軍を囮に鉛筆戦士城へと侵入、悪辣な罠をくぐり抜け、反乱軍に鉛筆騎士配下のプレイヤーを押し付け、最終的に2対1でありながら引き分けという結果ではあるものの鉛筆戦士の暗殺に成功、ユナイト・ラウンズ通称「鉛筆朝時代」に幕を下ろしたのだった……そういえばアーサー王伝説になぞらえてアーサー・ペンシルゴンなんて呼ばれていたな。








「嫌な記憶を思い出す名前な事で……」

「ふふふ、態々フィフティシアから出向いた上にペナを承知で大人気なくキルしに来たんだ、感謝に咽び泣いてリスキルされるがよいぞぉ?」

 ニマニマと笑いながら明らかに強力な力を備えているのだろう片手剣を構える鉛筆戦士……もといアーサー・ペンシルゴン。確かに嫌がらせ目的でエムルが人参食ってるSSを送りつけてやったが、態々俺をPKしに来るほどのことか?
 あとエムル、耳を隠すのはグッドだが尻尾丸出しだ、気付かれないよう隅っこに立ってろ。

「一応言っておくと別に個人的な理由だけで来たんじゃないんだなこれが」

「はっ」

「カッツォ君もそうだけどさ、ごく自然に人を馬鹿にする鼻笑いほんと腹立つね君達」

 自分勝手を人の形にして才能と高いAPPをインストールしたような奴が自分以外の誰かの理由で動く? 冗談なら72点と言ったところか。

「私さぁ、阿修羅会のナンバー2やってるんだよねぇ」

「阿修羅会のナンバー2……まさか廃人狩り(ジャイアントキリング)ペンシルゴン!?」

 アニマリアの驚愕と畏怖が混じった声に、数秒の沈黙。

「ジャイアントキリング?」

「いやぁ、格上プレイヤーばっか狙ってたらそう呼ばれるようになってさぁ。最近はPKナーフのせいでそれもやりづらくなったんだけど……あれだよ、ムカシトッタキネヅカー的な」

「むしろキリングされるジャイアントの方だろ反理想郷の女帝ディストピア・エンプレス

「それな」

「「あっはっはっはっ!」」

 ゲラゲラと笑う俺とペンシルゴンを信じられないと言わんばかりに見つめるアニマリアとエムルだが、それなりに親しい友人だからこれくらいは当然だろう。

「というわけで隙あり!」

「来ると思ったわバーカ!」

 そして俺とペンシルゴンは大抵敵対関係でゲームプレイするのでこの程度は日常茶飯事だ。使い捨ての投擲武器と思しきナイフを避け、周囲を見回す。
 さぁ、この状況をどう切り抜けたものか。
変更点
ペンシルゴンによるPKが不利になった言及
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