這い寄り式コミュニケーション
遭難生活一日目(追記)。森人族が俺を見る目がヤバい、完全にモンスターを見る目だよアレ。
「んっふふー、流石はサンラクサンですわ! 翼がなくたってお空でも負けないですわーっ!」
「まぁ、仕様上可能だったとはいえジェット戦闘機を素手で撃墜とか出来ればこのくらいはね」
「おまえはなにをいっているんだ」
ゲームの話だよ、徹頭徹尾な。
撃墜したドラクルス・ディノコアトルの素材テキストを眺めつつ、明らかに引いているトットリ及びさらにドン引きしている森人達、そして不覚にもさらに好感度を上げてしまったらしい国王父娘を連れた一団が森の中を進む。
「……なぁ、やっぱりアレくらいできないとユニークモンスターって倒せねぇのか?」
「んー? どうだろう、クターニッドとかレイ氏……あぁ、サイガ-0のことな? アレくらいとは言わないけど黒狼とかなら頑張れば倒せそうだし……てかもう倒しただろうし」
「なんて?」
「いやなんでもない、忘却しろ」
しれっとクターニッドが再戦可能な事を漏らしかけてしまった、危ない危ない。
「まぁそれはそれとして、だ。おおよその方向を把握して向かってるわけだが……トットリの方はログイン継続できるのか?」
「あー……そうか、そろそろ一度落ちた方がいいか……」
俺も割と長くインしてるから一度ログアウトしたいところだ。普段であればラビッツに戻ってログアウトするところだが……ふふふ、今回は違うのだよ。
「エリナ、一旦ここで休憩にしよう。アレを頼めるか?」
「はい! みんなー! ここで休憩ですー!!」
平均的なステータスはプレイヤーとほぼ変わりなく、取り柄があるのか疑わしくなる森人族が持つスキル……いや、この場合はアビリティとかなのかな?
そこらの木の枝や葉っぱを集め、森人族達がテキパキと動き出す。ともすれば早送り映像のようにすら見える手際の良さで次々と天然有機物によるテントが木の上に次々と作られていくのだ。
「多分、運営側は森人族と一緒にこの森を攻略する前提なんだと思うんだよな」
「確かにアイテム消費なしでセーブポイント作れるのは便利だな……にしたってヘタレ過ぎる気もするけど」
森人族の特殊技能、それこそはエリア中であろうとセーブポイントを創り出すことができる「即興拠点」だ。
これがあるからこそ、トットリはログアウトという根本問題を解決して森人族と同行する事が出来る。
とは言え移動中まで展開し続けることはできないのでノーデスは不可避らしいが。まぁこのヘタレどもを放置したらどこに逃げるか分からないしな……
さてここで問題が一つ。
「時に陛下、無礼を承知で尋ねますが木登りのご経験などは……」
「サンラクよ、王というものは得てして斯様な場とは最も縁遠い者なのだ」
やんちゃな幼童の時は木登りもしていたらしいが、流石に腹の突き出たおっさんに木登りスキルは期待できない。
結局、森人族達に協力してもらって枝と蔦を使った即席のエレベーターのようなものを作って引っ張り上げることに。
こいつら、王様達が非力な非戦闘員だと知って割増で優しくなってやがる。なんつー嫌な共感だ……まぁ自身らの人権的な意味でも重要人物ではあるけどさ。
ログアウトした俺は、再ログインの為にリアルでの諸々を済ませつつ片手に持った携帯端末で急ぎ調べ物を済ませる。
「由布院 亮治……相沢 陽子……四十万源九郎 ……いや、この人らは言っちゃ悪いが下っ端だな。となると……」
天地 律、こいつだな……? なんか妙に権限持ってそうなポジションだし、調べてみたらフェアクソのオンライン版に関わってる。つーか、え? この人スペクリにも関わってんの? シャンフロ正気かよ完全にクソゲー畑の人じゃん。
「……いや、実際シャンフロは成功してるわけだし」
スペクリに関しては悪いのは全面的にプレイヤー側だからマトモな人……なのか? まぁいいや、それはそれとして……っと。
冷蔵庫からカニの隣に置かれたカニカマを取り出して齧りつつ、今度はシャンフロの公式ページに。
以前、「バグを運営に報告してそれがどのタイミングで修正されるのか」を見るのが一番楽しい、なんて言う奇特な人物と会った事があるがその気持ち今ならちょっとわかる。
「インベントリア便利すぎだからなぁ……」
恩恵に預かりまくってる俺が言うのも何だが、 流石に無制限空中ジャンプはまずいだろう。思えば既に五通くらいメール送ってるのか……流石に迷惑だろうか? はい送信。
「曰く「自分の一手がプレイヤー全体に影響を及ぼしていると実感するのが楽しい」だったか……うーん、分かる」
本物の蟹の隣に当てつけのように冷蔵されていたカニカマは、それでもカニカマの味がした……カニカマだからな、俺は嫌いじゃないよカニカマ。一々殻を折ったりほじくり返す必要がないからな……
「……さ、て、と」
トットリは……まだログインしてないか。あんまり期待はできそうにないが、ちょっと森人族と話をしてみようか。
五分後。
「あれぇ? みんなどこに……」
「───動くな」
「ひぇっ」
もうね、どいつもこいつも俺を見かけた瞬間顔を引きつらせて逃げるんですよ。だったらもう…………気配を殺して後ろから近づくしかないじゃない。なんとなく頭を鮭に変えて歩いていた森人族の背後に木の上から降り立つ。
「……振り返るな、質問にだけ答えろ」
「ひ、ひゃひ……」
「名前は?」
「あ、アリュール……れしゅ」
「成る程……いい名前だ」
おっかしいなぁ……これ完全にステルスミッション系のゲームで敵兵士脅す時に使うやつだよね? 一応形式上は味方のはずなんだが……
「た、たしゅけ、て……」
「まだ質問は終わっていない、いいね?」
「ひぃぃぃ!?」
もういいや、このまま続行しよう。
とりあえず聞きたいことは……
「お前達が持つ弓……自家製なのか?」
「ひゃ、はひゃいっ! 」
「種類は短弓だけか? トットリの奴は短弓以外にも何か装備してるようだったが……」
「あ、あれは……その、」
「三、二……」
「森人族秘伝のスリングショットですぅぅ!!」
あれスリングショットなのか、防具と一体化したデザインだったから何なのか気になっていたのだが合点がいった。
そうか……スリングショットかぁ……ちょっと使った経験ないから別に欲しくはないかな。
「話を戻そう。要求ステータス……じゃないや、どれくらいの技量でお前達の作る弓は扱える?」
「え、技量……ええと、ええと……」
ちょっと悪戯心が湧いたので爪の先でちょん、と首筋をつついてみる。
「たしゅけてくだしゃいこりょさないでくだしゃい!」
あぁ……これまずいぞトットリ……下手に森人族のヘタレリアクションと新王の差別主義が漏れたら絶対向こう側に付く奴出てくるぞ……
「質問に答えれば無傷で解放する、オーケー?」
「……なぁサンラク」
「なんだいトットリ君」
「さっきアリュールって森人族が「頭が見たことない生き物の怪人に脅された」って泣きついてきたんだが」
「なんてこった、もう第三騎士団から刺客が来ていたのか。だが生きていたなら幸いだったな」
「……で、そいつは森人族が作る弓について熱心に聞いて来たらしくてな?」
「戦力の把握だな、FPSと一緒だ。射程と威力、連射性が割れれば大きなディスアドバンテージになる……まさかログアウト中を狙うとは卑怯な」
「なぁサンラク、弓の使い心地はどうだ?」
「森人族すげーな、有機物だけで折りたたみ式の仕掛け弓作るとか天才じゃん」
「……何か言う事があるんじゃないか?」
「………」
「………」
「……だってあいつら正面から話しかけると逃げるんだもん」
使わない可能性の方が高いけどローコストの遠距離攻撃手段はやっぱ欲しいよねぇ。わーい弓だ弓だー




